いる
今日の深夜から家にいる少女に、まだ名前を聞いていない。
家に二人だけだから、名前を知らなくても不便ではない。
呼ぶと彼女をここに縛り付けてしまうのではないか?という考えが頭を離れない。よく分からない男に名前知られてるとか気持ち悪いだろう。
朝飯少なかったし、食べ物とか、彼女の服とか歯磨きなどを買いに行った。婦人服売り場がかなり恥ずかしかった。
マンションのこの802号室が俺の家だ。
家を出るとき鍵は掛けなかった。彼女がこの家を出ていっていたら、さっき買ったものは妹にあげよう。
そう思いながらドアを開ける。
「あ、お、おかえり、なさい」
彼女がリビングから顔を出した。息を飲んだ。
なにもかも飛ばして結婚したくなった。
「……これ、買ったから、使え」
「でも……」
「使え」
「……は、はい。ありがとう、ございます」
前の言葉が効いたのか、素直だった。
受け取った彼女は恐る恐る袋の中身を見る。
「服、こんなにいっぱい、申し訳ないです……や、やっぱり……」
「じゃあ服やるから、また飯作ってくれ、二人分な」
俺は安心させるように彼女の頭を撫でた。髪の毛が柔らかかった。
「はい」
そう返事をした彼女の顔がほんのり赤く染まっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます