第10話 遠距離
二人が付き合うようになって
二年が過ぎようとしていた頃
「話をしたい」と
彼からのメールが届く
いつもなら
「会える?」と問うのに
「話をしたい」と言ってきたから
何だか胸がざわざわして
会える嬉しさよりも
不安でいっぱいになったのだろうな
いつもの喫茶店で
会えた時の彼の一声が
「どうした?恐い顔をしてるよ」
だったのだもの
私の顔を見て笑った彼に
緊張の糸が解れて
私もやっと笑うことが出来たのだけど
彼が話をしてくれたのは
「仕事で東京に移動になった
これからは離れ離れになるけれど
帰れる時は帰って会いに行くから」
ゴールデンウィーク
お盆休み
年末年始
絶対帰って来るから
君が東京に遊びに来るなら
僕が東京の案内をしてあげるよ
電話もする
メールも送る
遠距離恋愛になるけど
寂しい思いはさせないよ
彼は一生懸命話してくれた
私は一緒に東京に行きたいと
言いたかった
けれど言えなかった
言えなかったのは
きっと足手纏いになるのもわかっていたし
何より
その時私はまだ学生だったのだから
これは別れじゃないのに
離れ離れになるだけなのに
寂しさみたいな
悲しみみたいな
泣きそうで泣けない
どうにもならない感情が
私の中で渦巻いていたのは
まだ愛に
未熟だったのだろう
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