あやし者の介護をします! ~アカシアホーム群馬ケア記録~

作者 紺藤 香純

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★★★ Excellent!!!

霊感があり、人の「思い」を見ることができるミチカ。しかし、その力は就活で役立ったためしがありません。社内に漂う負の感情に飲まれつつ、苦しい面接の日々を送っていました。

ある日、ミチカは「思い」に導かれて群馬へ転移してしまいます。状況を理解する間もなく、空から不思議な声が降ってきました。それは、介護施設・アカシアホーム群馬と縁が繋がった瞬間だったのです。

新卒・資格なし・未経験で飛び込んだ介護の世界。頑張って仕事を覚えるミチカに、エールを送りたくなりました。
人生の先輩である利用者さんとの交流、美味しそうな料理の数々。本作の優しい世界観に、介護のイメージが変わるかもしれません。

★★★ Excellent!!!

 全体を通して出る作品の雰囲気は、五章のエピソードタイトルにもある。

『皆何かを抱えて生きている』

 この言葉に集約されているように思う。

 姉の喪失から尾を引く邪な存在に脅かされる主人公の視点を主軸とし、各登場キャラクターの背景や過去には、あやかし――怪異に繋がるモノであり、誰もが引き摺り、苦しみ、生きている。

 退魔モノのような激しいバトルの末の、解決みたいなカタルシスはない。

 何しろ舞台は、介護施設だ。
 このへんは、お仕事小説でありながら、意外な和風ファンタジーの裏設定を資料から読み解く感覚に近いだろう。

 不可思議な力や、この世の縁によって集った場所でも、決して全てが救われて解決しているわけでも、やはりない。
 それでも、この場所に暖かい光が差すのは、人々の思いやり、寄り添う姿があるから。
 欠けたモノを埋めるヒトがいる。誰かが誰かをお世話するの理由はそれでいいのだろうし、そこにいていいのだろうし。
 作品の読みやすさの正体は、終始、読後を不安にさせない優しさに寄る。

 ラストエピソードは、訴えかけてくるものがあり、考えさせられ、そして主人公のキャラクター性を愛らしく思わせる仕掛けだ。
 ぜひ、最後まで読了してもらいたい。