第99話
「であります故、この小高い丘に陣を…」
「つまらん」
昭良を遮って雅童が吐き捨てた。二の句が継げぬ様子の昭良を尻目に雅童は気だるげに動くと敵陣を見回せる位置に立った。隆正の懇願と兵の補填を諾して(また使い走りか、と嘲笑する事は忘れなかったが)葦名方と会敵するところまで至った雅童らであった。そして昭良は至極真っ当な献策をしようとしたのであった。
「昭良、この場合一番まずい手は何だ?」
扇で敵の布陣を示しながら雅童が問う。
「そ、それはやはり、敵の正面に姿を曝す事では…」
「それだ」
「は?」
「昭良、軍師など要らぬ。腕と脚があれば充分だ」
昭良は最早問い返す事もなくただ目を数度瞬いた。蟀谷を汗が流れる。
「策を与えよう」
口の端で笑いながら言う雅童の姿に昭良は身を固くして命を受ける姿勢を取る。
「皆殺しだ」
雅童が鎧を鳴らしながら悠然とした所作で歩みを進めた。昭良は大きく息を吸い込むと目を固く閉じながら呼ばわった。
「出撃だ!」
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