第17話

 雅童様の元へは戻れまい。僧衣を脱ぎ捨て行商の者に姿を変えた死無常は、市に身を紛らせながら思案した。どうする?あの巫女は、いや、最早あれは巫女ではない、鬼女だ。恐るべき力であった。あれは仇であるわしを追ってくるであろう。

「ちょっと、あんた」

 ひとりの女が死無常に呼びかけた。

「あんた、商いは何なの?」

 そう問われて死無常は咄嗟に薬だと答えていた。

「生憎切らしてしまったが…」

 あ、そう、とさして興味もなさそうに女は立ち去った。その後ろ姿を眺めながら、一層ほんとに、と死無常は周囲の喧騒を見回して考えた。幸い多少の知識はある。紛れるのだ。この混沌の中に。

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