第181話―下っ端から王に成り上がる世界最強の王を象徴するオオサカ・キャッスル漆―

天守閣は一階から八階までの内部となっている。

会話をして進んでいた一階のミュージアムショップ、そして二階から七階までは歴女資料館のようやフロアとなっており最上階である天守は展望台である。

そして現在は二階へ来ていた。いや一度は上ったけど回ることなく通過したから戻ってきたというべきか。二階はパネル展示が中心的になってきるフロアとなっている。

なりよりも楽しめるのは――。


「まさか太閤殿下たいこうでんかになりきれるなんて……わぁー、わあー感無量だよ」


華やかなドレスを纏ってもここまでの喜びを見せなかった比翼は、太陽のような日差しをモチーフしたような兜をかぶっていた。そして鎧の上にかけるロングコートめいた格好の陣羽織じんばおりも身に纏っていた。


「とりあえず猛将らしい鬼の角をしたの選んでみたけど、写真を撮ったあとが超たのしみなんだけど!

とりまカッコイイの選んでみました的なぁ」


ここにも心を昂るのを収まらない子がまた一人、さきほどまで深刻な話をしていたはずの不死川も甲冑を纏っていたのだ。

その兜の左右からは生えたみたいな湾曲わんきょくした角が異様なほど伸びている。おそらく歴史に疎くとも見た事のある武将の兜といえば無骨で派手なデザイン。

最高クラスの豊臣秀吉の軍師である黒田官兵衛こと黒田孝高くろだよしたか、その嫡男である黒田長政くろだながまさが所有されていた大水牛の兜だ。そしてその他の衣装は黒で統一している。

ちなみに黒田長政は謀略に秀でていた父親とは違い得意分野は槍働き、ようするに武器を振るうことの武力が優れた武士だ。どうしてこんなにタイプが違うかは兵に慕われるようにと武力の人として教育していた。

策謀をめぐらせたことで好感を抱けないことに悩んだ黒田孝高がそうしたともされるかもしれない。


「燃えるような闘志、この忠義を最後まで貫いてみせん。……あっはは真田幸村のレプリカ衣装を身につけると魂まで熱くなりますね」


それは個人によると思いますと心中でつぶやく程度に留まる。頬を掻きながら少し恥ずかしいそうにみせるのは猫塚さんだ。

その身に纏うのは真田幸村の赤で統一した甲冑、そう赤備えである。しかしながら真田幸村こと本名である真田信繁(のぶしげ)は赤い甲冑ではなく黒い甲冑となっているが細かいことは指摘しないことにした。

三人は武将の格好をしていた。

そう、二階のここは試着コーナーもある。およそ五百円ほどの支払う。

そんか展示としても置かれている鎧や兜を着ることが出来るだけではなく。

なんと撮影して撮ることもオーケーなのだ。とはいえその上階に上がると撮影は禁止の場所があるので気をつけてしっかりと確認しないといけない。


「よし。それじゃあ横へ並んでくれ三人とも」


「「「はーい」」」


スマホで三人のイクサ姫の写真を収める。

我ながら上手く撮れたと満足して近寄って撮った姿をみせる。それぞれカッコイイと可愛いとかしましくと満足そうだった。


「それじゃあ次に――」


「次は、おにいちゃんの番だね」


右の手首を両手で包むように掴む比翼。いや逃れないよう捕獲されたと表現が適切に思う。


「そう、そう。せっかく来たんですから撮らないと損ですよ兄ちゃん。とろう!

……あとあとフユミンから写真を売れるし」


そこに邪な理由で撮ろうとしている人がいるぞ。


「こうなったら諦めてください兄。

フフっ、なにを着させようかな」


鼻歌の交じり猫塚さん。

ふぅー、やれやれ参ったよ。

これだから女子高校生たちと行きたくなかったのだ。唯一の常識に近い位置にある比翼までも暴走すれば止める者はいなくなる。

俺は彼女たちにされるがまま甲冑を身に纏ってナゾのセリフまでも言わせることになるのだった。

……山脇東洋は、また新たなる黒歴史の一ページが刻まれることになるのだった。

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