第179話―下っ端から王に成り上がる世界最強の王を象徴するオオサカ・キャッスル伍―
天下の大阪城が築城される年は1583年。
地元ではよく豊臣秀吉が作ったと今でも信じ
てはいるが厳密的には違う。たしかに豊臣秀吉の下知によって
ただその現在としての城郭は豊臣秀吉の時代によるものではない。
昭和三十四年(1959)の学術調査において現存する石垣や櫓などによる歴史の形は徳川幕府による物と判明されたのだ。
そう大阪城天守閣だけではなく石垣なども豊臣の時代のものではなく政権が徳川による支配になってから作られたもの。
その事実性の高い情報は、地元の人だけではなく訪れる人や紹介する人も豊臣秀吉の城と誤認されている。
それなら歴史としての価値がないかと問われれば否、徳川政権の威光を権力を誇示するため前の大阪城である豊臣よりも高く石垣や建物が設定されている。その上また豊臣恩顧の武将たちといつ戦うか分からないため軍地拠点としての役割も備わっている。
そんな徳川大阪城への入場料はどれほどかというと大人が六百円そして中学生以下は無料で入城となっている。
すぐ階段があり進みながは隣を一瞥。
サングラスで綺麗な瞳を隠す有名人である猫塚さんは仰いだまま階段を器用にも上がっていた。
「うわぁ」
階段を踏みはずした猫塚さん。
「っと、危ないよ猫塚さん」
階段で転倒しそうになる猫塚さんの肩を両手で添えるようにして受け止めた。
さすがにラッキーなんとやらをおかすほどミスはあの頃と違いもうしない。
「あ、どうもありがとう兄。少し眺めていて転びそうになってしまったね」
ややドジな姿を晒したと思ってか猫塚さんは頭をなでるように掻きながら笑顔で言った。
「気をつけないと」
照れながらも猫塚さんは頷く。
ふむ、この奇妙な空気はなんでしょうね。ええ。
そして他の二人が声を掛けてこないなあと思いチラと見れば面白そうだと頬を弛めて傍観。
申し訳ないがラブコメ起きないよ。
「ここへ来たかった気持ちはありましたけど。それほどの高揚感がなくて移動していたほどのワクワクが起きないものですね」
隣からの位置から横切って前方へと上がりながら傍観に徹する不死川紬にと声をかける猫塚さん。
ふむ、もう友達未満だからとか気後れを著しく顕すことも少なくなっていた。
「おぉーっ、それなね。レガシーというかアーティファクト感というなか無いよね。思ったよりもコンクリート感がある」
話しかけられたことに
「うーん、それなんとなく分かるかも。
あの比翼はどう思うかな?」
「そんな緊張しなくても友達なんだから。
そうだね他の城を巡っていると、こうした造りというか醸し出される雰囲気はあるから驚きはないかな」
おとしやかに笑みを湛えて眉を困ったように下がって感じたことをそのまま言ってこたえる。
おっと、どうやら比翼ではない。子供のような笑みを絶えずに表す比翼がそんな淑女然とした振る舞いがするわけがない。
……そんな自分の脳内だけで決めつけた妄想は置いておくとして比翼も成長している。
落ち着いた作法や所作はサファイア家から身につけたものとしても元々その気質はあった。
彼女はそもそも思慮のある女の子だから、お淑やかなことをするの俺は予想していたから驚きはあっても微々たるものだった。
そして門をくぐり城内に入る。
「へぇー玄人らしいコメントだね」
「わたしは玄人じゃないよ。
おにいちゃんは知っていると思うけど大阪城に入ろうとする下に豊臣秀吉の時代である大阪城が埋没しているよ」
設定モードに入った比翼。ああ確かにそのことは知っていたと俺は返事の代わりに頷いて答える。
「「えっ?」」
猫塚さんと不死川さんの驚嘆の声が重なる。
空いた口が塞がらない友達を顔を愉快そうに笑いながら比翼は明るい声で疑問を答えんとする。
「大坂の陣で燃えてしまったのドラマやゲームとかで見たことあるよね。その残骸を埋めて新しく造ったんだよ。
好きなことを語れる比翼は実に楽しそうであった。なるほど相槌を打ちながら聞いていた二人。
それはそうと一階の中で回るだけというのも案外それだけで楽しくなる。階段の幅はやや狭めの造りとなっているみたいだ。
「ヒヨリンはいわゆる歴女だね」
穏やかな喜色な明るい声で不死川さんは言う。
「歴女とか言うなぁァァ!」
「えぇぇぇーーッ!?どうして怒るのォォ」
褒めたつもりが怒られたことに納得いかないといった感じの不死川さん。ただこれには比翼に同意だった。
成功と失敗が記憶として残されたものの歴女の重たさを知る人からこそ歴女とか歴女オタクと呼ばれると苛立ってしまうものだからだ。
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