第177話―下っ端から王に成り上がる世界最強の王を象徴するオオサカ・キャッスル参―

本丸広場。重要の区画まで俺たちはゆるゆると門や巨石などを回って歩いてきた。

もう天守閣までの距離は目と鼻の先だ。広場の道には通りやすいよう木のほぼ等間隔がある。


「おにいちゃん会話に混ざろうとしないよね。体調がどこか悪くない?」


おおきく空けた場所まで進むと左の隣で歩く比翼はうれえた表情を見上げて訊いてきた。


「はは、そんな事ない。

リアルの女子高生の会話だからね。逆に小説のネタになるから耳を傾けていたぐらいだよ比翼」


「また、つまらない言い逃れを。

ズバリ冬雅おねえちゃんや真奈おねえちゃんがこの場にいないことからテンション下がっているんですよね?やっぱり」


今にも『ニッヒヒ』と笑い声が上げるような顔で言いながらまたも訊いてきた。


「ちがうよッ!そこまで考えていない」


「ほうほう少なからず、そこまであるんですね。

語るに落ちるとはこのことだよッおにいちゃん」


「……それは」


迂闊だった。なんと応えるべきかと窮す。

そう比翼は発した内容をわずか短いなかで鋭く読み取っていたのだった。

でも、その場のいい訳ではなく本当にリアルな会話を参考にしようとも考えていた。ただ冬雅が返してきた言葉、フッと考えてしまう。

この場で冬雅や真奈ともしデートするならと。どこに寄って楽しむか、思い出になる風景とか。もし隣にいたらどうしていたか?それと今後のことも念頭に考えて妄想する自分がいる。


「あのよろしいですか兄、他の女の子を考えるよりも今は私と楽しむのが正しいのではないですか」


「ああ。いや、もちろん見ているよ……」


俯いて、おとなしくなっていた猫塚さんはニコッとした笑顔したまま近寄る。

なんだか近寄るというよりも圧力を感じさせる詰め方を感じるのは気のせいかな。

どこか危機感めいたものや闘争心のような感情がない交ぜられた笑顔の裏に戸惑っていると背後から声が聞こえる。

どうやら先に批難したのか比翼と不死川さん。


「やっぱりか。

これはライバルのことに嫉妬しているね。紬やっぱりおにいちゃん好きとみた」


「それね。

もう見ていて楽しい。ネコネコならアイドルプランドを駆使すれば兄ちゃんも落ちるだろうね」


「そうそう。いつ告白するか楽しみ」


……と、そんな好き勝手と話を広げていた。

その内容は俺の耳まで届いている。そして必然、俺が聞こえるように隣の猫塚さんもその内容が聞こえるわけで耳を真っ赤になってより沈黙の状態へと俯きになるのだった。

なにを言っても悪化しそうなので俺は、そのまま話をかけず歩くのだった。

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