第175話―下っ端から王に成り上がる世界最強の王を象徴オオサカ・キャッスル―

着信が響いて眠りに沈んでいた意識が浮上する。


「うーん……」


上半身だけ上げて掛け布団をどけて床に降りる。どこからか寒い時期の風で凍るような寒さに戻りたいと誘惑に襲われるが、通話せんと粘っているスマホからの着信音から無視できなかった。


「こんな時間にかけるなんて高校の相談かな?

はい、もしもし」


「あっ、ご無沙汰おにいちゃん。いきなり本題に入るけど土曜日だけど空いてある」


顔は見えないが弾けんばかりの無邪気さある声は箙瀬比翼えびらそひよだった。

抜けるような青色、ゆっくり雲は流れる。

小夜時雨さよしぐれが叩く夜明けさの窓をぼんやり眺めて床に立ち上がって深呼吸。

やや唐突さに驚きながらもダブルブッキングならないかと日程を組みながら言葉を発する。


「ああ、空いている。

駆け込むような電話だけど比翼なにか合ったのかい。

こんな時間になら比翼なら掛けてこない、いつもなら配慮を持っている。

どんな思い悩んでいるか聞かせてほしい」


「ま、待ってまって!

わたしが思慮深いとかさりげなく褒めるのやめてッ!?嬉しいけど恥ずかしいよ。

……それと買いかぶり、思い悩んでいないから」


慌てて否定をする比翼。たぶん手を振りながら困惑しているのが浮かんだ。それはさておき心配かけまいと装うことをするのが彼女。

その見えにくいのはウサギみたいな特徴の苦心を表にしない。

寂しさでウサギは亡くなるのではなく、体調や調子を悪くとも健康状態と変わらない態度から気づかず亡くなる。

とはいえ死亡するほどケースではないが抱えている悩みを心配させまいと表面化しない態度する。

さてそんなウサギのような比翼をどうしたら……本音を語ってくれるか。


「そこまで心配しなくても問題は抱えていませんよ。生徒会の業務たいへんぐらいですよ」


「比翼それだけじゃないはずだよ。

打ち解けてほしい」


「あーっ!もう。どうして信じてくれないのかな。よろしいですかッ!こんな朝早くから電話をかけたのはひとえに疲労していたのですよ。

義理の妹となかなか寝かせてくれなくて正当な判断力が下がっているの」


「そうなのか。なら良かった」


取り越し苦労で良かったと安堵、我ながら心はし過ぎた。これは責任転嫁みたいになるが別にしたい責任とかではなく比翼の抱える悩み事を表に表さないことから見守っている側

からすれぱ小さな違和感には過敏に反応してしまう。

そういうことか過敏な心配してしまう。


「やっと納得した。そんなことよりも閑話休題にして土曜日つき合ってくれません?」


――そして当日を迎える。

スケジュールの日程調整していたのか待ち合わせへと先に着く。しばらく本を読みながら待っていると名前を呼んで駆けつけて向かって来る美少女たち。

どうやら報せていなかったが比翼の以外にも誘っていたようだ。告げずに誘っていた他の二人と一緒に駅に乗る。

目的地へと駅に降り、徒歩で目的地に向かう。

たどり着くと城郭に足を踏み入れたことに感極まった比翼は両手をあげる。


「大阪城よ。わたしは帰ってきたぞぉぉ!」


なかなか渋いセリフをと俺は思った。

エースパイロットであるソロモンの悪夢セリフを万感の思いではなく歓喜の叫び上がる比翼。

癖のある長い黒髪が風に揺れている姿は芸術的。


「ふーん、ここが大阪城か」


その真逆と熱がまったく感じなくボソッと呟いていたのは不死川しなずがわつむぎさん。

スマートなメガネをかけていてコーデは二人が選んだのか垢抜けていた。


「くうぅ。友達と遊びにいけるなんて……

もう最高ゥゥゥゥッ!!」


そして妙に熱意の方向が違う叫びを上げるのは一人いる現役アイドル猫塚ねこづかりずむさん。その艶やかな髪を隠すようにバケットハットを目深にかぶっている。

それだけではなく暗いマスクにサングラスの顔を極力と覆われたフル装備。

やはりと言うべきかソロモンの悪夢さんセリフは若い彼女たちには知らないからか反応はない。


「ボクこの日のために調べたんですよ。

ここは石山本願寺という拠点があったんですよね。そこを目を光らせた織田信長が十年以上の戦いで支配された」


下から大阪城が見える方向へ指を向けて不死川さんはそう述べた。調べたことに賞賛に与える、けれど。


「石山と呼ばれるのは後に軍記ものでそう表記されているんです。でも実際は大阪と呼ばれているの紬」


「えっ!?そうなのヒヨリン」


「びっくりだよね本当。

厳密的には大阪本願寺になる。

ちなみに大阪の旧国名がナニワ。ここにいるのが大阪と説明したけど都道府県の一エリアを指すんだ。

市とか区みたいに呼ばれていた」


「さ、さすがヒヨリン博識」


不死川さんは頬の端を痙攣けいれんしながら比翼の知識量に戦慄へとさせた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る