第120話―異世界マナさん4―

「香音のセンスは抜群だから自分で選ぶより良いものを買えたよ」


「ふふ、そうでしょう!私のセンスならこれぐらいは当たり前なんだから」


店を後にして駅前を並んで歩く。

胸を張って自慢げになる香音は、おそらく無意識なのであろうが胸部が目立っている。

凝視するのもよくないと目を逸らすが周囲の目が不安だと俺は見渡す。

でも杞憂であった。何でもかんでも通行人が美少女に反応を示すのは虚構の中だけ、あまりにも常識的なことを理解した。

それでも少数は、香音の胸部をまじまじ目を向ける輩はいる者らしい。

香音の格好は大人の女性をイメージしている。上はブラウス、透けて見えるという半袖のシースルーを着ておりカラーは白。

そしてボトムスは紺色のプリーツスカート。


「ああ、頼もしいよ香音。それに今――」


着ているのも素敵だねと述べようとしたが口にするのを飲み込む。少しでもテンションを下げようと試みようとしたが効果が薄いのは明白、もっとも効果的なことを考えるなら誰でも狼狽しそうなものにするべきだろう。


「頼もしいか。そうだよね。とーーーてもやぶさではあるけど変態のお願いなら突っぱねるのもよくないし……また別の日に付き合って上げてあげる」


「ああ。それで言い難いことを尋ねるんだけど香音は好きな人はいるのかい?」


「ふーん好きな人ですか。それならすぐ近くにいる……って!

な、なにをとち狂ったことを訊いてくるわけなのッ!?」


思いのほかに香音のリアクションは大きかった。口は陸に上がった魚が酸素を求めて喘ぐようにパクパクして目は回遊魚のごとく右往左往する。

予想よりも上回るほどの周章狼狽しゅうしょうろうばいさを目の前で起きていることに話を振った俺の方も驚愕をする。


「と、とち狂った発言なのか……」

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