第111話―みえざる追跡それからは質問―

同じ制服をした人達が最も往来していく時間帯の校門。わたしは発見しにくい遮蔽物しゃへいぶつに身を潜めていた。


「ハッ!目標が現れたようだよ」


『フッフフ。ようやく現れたようねターゲットは。ではヒヨちゃん手筈てはず通りにお願いするわ。

察知されないよう用心して追尾をしてほしい』


ここにはいない声は耳に取り付けたインカムから。遠くから指示を送るのはエイちゃん。


「ええ、与えられた任務を遂行してみせる」


『頼もしいわ。健闘を祈る』


(これ…いけるのかな?)


通話を切って、わたしはため息をこぼしながら実行に移すことにした。隠れるのには打ってつけな木の影から出て標的は敷地に入ったタイミングで近づく。

標的というのは後輩の葉黄、まだスパイごっこみたいな作戦は継続中であった。

衝撃的なものを目撃してから翌日、わたしとエイちゃんは帰路に着いてから連絡をとって計画を講じた。たった一日、しかも数分にも満たないだろう計画性には不安しかないが効果性は実りはあって失敗しても損は無いと判断してノルことにした。

その計画を和気あいあいと話をしたこと、わたしは振り返る――。


『――今日はなかなか刺激的な一日だったねヒヨちゃん。そこで立案!』


「…………えっ、急にどうしたんです」


つい敬語となったセリフが出てきた。神妙そうな態度で挨拶を短えめに告げてのあとの弾むようなトーン。

エイちゃんからは目を点にしている美少女がビデオ通話から見えているだろうなと漠然的にそう考えていた。


『このままに放置するのは好ましくない。

けど速度ばかり重視して問い詰めても迷惑行為になる。なので、ここは計画を立てようよ。

それぞれ案を出しては採用するかを』


「計画ですか?つまり作戦を立てることだよね。それはいいアイデアかも」


無策か思いついての行動ばかりを取るよりも建設的であるから二人でじっくり思案していくのが理想的かもしれない。


『もし不備があると指摘しようね。それじゃあ早速だけど提案しようと思うけど――』


この様子から事前になにを言うのか連絡をするよりも決めており矢継ぎ早となって言う。

そのほとんどが無鉄砲ともとれるような作戦アイデアばかりだった。


「――なるほど。でも上手くいくかな」


『あはは、こういうの専門外だからね。ヒヨちゃんはアイデアなにかあるかな』


「問いかけても案なんて、すぐには出てこないものだよ。うーん乗り気じゃないけど今の案なら大きな失敗ないだろうから実行してみる?」


『わあぁ、嫌々そうにしても姉貴気質だね。やってくれるんだねヒヨちゃん』


――と、そんな会話をしていた。明日にもなれば挙げられたものよりも良き案は浮かべると思ったけど、そうもならず。

そして今に全集中を向けないとならない。嘘をつくのが得意なのは味方が少ない頃、今は表情に表にあらわれやすいから余計なことを考えないようにしないと。


「おや、そこで通学するのは葉黄じゃないですか?おはよう今日も元気そうで。

こうして会うのも何かの縁、せっかくだから教室まで話をしようよ」


「あっ、比翼さん。

今日もいい天気で、おはようございます。

そんな恐れ多いこと、でもご厚意には無下出来ませんよね。それではお願い致します」

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