第82話―ミナヅキ会議―

まぶしく照らしススキが伸びるのを時期をあじわう初夏は過ぎて六月。

その日は雨は降っておらず、いつか降るだろうなと曇り空を眺めて登校する。

どうして空ばかり眺めているか?誰もそんなこと問われていないが一人で通学路を進むと前触れもなく自問する。

疎外感にあるということで自問自答をひそかにしながら、世間では華の高校生とか称えてくれるけど実際その立場になるとそんな見栄えたり注目するような行き方していない。

だって今日は授業して生徒会で会議するだけなのだから―――。


「ではミナヅキ会議を始めたいと思う」


安物の長テーブル。その上座の位置には厳かな感じで纏っている生徒会長が周囲を見渡すと開口の一番にそう言うのだった。


「まだ一人いないんだけど愚管抄ぐかんしょういいの」


かまくら時代初期に関する重要な資料である題名と同じく敬って付けた愛称で投げかける。すると吉水生徒会長は鋭い眼光が飛んできた。


「そんな安い挑発には乗らないぞ比翼書記よ。それよりも紙とペンは、どうした?見たところでは手元には資料しか置いていないが?」


煽られると激昂しやすいことのマイナス部分を客観的な分析していた。

これまでもそうあって欲しいなあと願いながら、わたしは置いている資料を手にして持ち上げる。


「ええ、これでいいんですよ。

ここでの会話は頭にインプットしておきます。あとで、どういうやり取りしたか作業する予定ですので」


「ならいいのだが……」


どうにも不安だといった顔をしていた。

わたしが担う生徒会書記という業務に、この会議を文字にして記録しておくこと。

それだけではなく――


「そんなことよりも早く進行してください。

祝辞と謝辞するだけの愚管抄とは違って、わたしはスケジュールは忙殺されてひまじゃないんです。公式プログの更新とか新聞部と発行する記事の話とか詰まっているんです。だから、ほら進んで、進んで」


とてもではないが生徒会書記だけがこうも仕事量が多いことに不満と不自由を感じている。

だからこうして身内である生徒会の前では取り繕うようにした模範的にみせようと理想像を振る舞うことする余裕はない。

どうせ忙しくて膨大な数をさばかないといけないなら傍若無人の人となって好きにやらせてもらうと開き直りしたのだ。


「ぐぬぬ。き、貴様ぁぁぁぁーーーッ!

生徒会エースとかチヤホヤされているからと言って図に乗るなよ!

いいか聞けよ。学校生活における規律を整えて理想な校風を確立ために活動する。生徒らの悩みや問題などを無能で愚鈍な教室どもに代わって導くために選出された生徒の自治体的な組織が生徒会。

その中で降臨する生徒会長に……きさまは偉そうにいつも見下すようなことを言って」


また余計なことを言ってしまい吉水生徒会長は怒り出す。なにがキッカケになったか存ぜぬが自尊心を傷ついたのかな。


「まあまあ、生徒会長。

そこは熱くならずに大人にならないといけませんよ。クールダウンを。私情を出しすぎずに、少し頭を冷やしてくれ」


怒りに任せて、様々な言葉をぶつける生徒会長をどうにかなだめようとする副生徒会長。

九条の苗字そして下の名は玉葉ぎょくようが柔らかな笑みで止めとする。

もしなにかあれば、生徒会長として代理で務める。その他に、彼の能力はバランスがよく書記や会計などの代理を行ったりもする。

いわゆる遊撃、そんな貴族然とした彼は手元にあるマックカップの取っ手に伸ばして口に運ぶ。

その一つ一つの所作が華麗で気品さが窺える。


「その通りだな。熱くなりすぎた」


「ご理解してくれてなりより。

それで生徒会長コーヒーいかがですか」


「コ、コーヒーをか?何故そんなことを」


「会議の効率を上げるためですよ。

ご存知ですか?カフェインを摂取すると集中力の向上、自律神経の働きを増される。

そうなれば頭を冷やされは率も下がるものです」


「な、なるほど……」


(あの生徒会長を引かせるとは……おそるべき天然系の美少年!?)


サファイア家には義姉や義妹の金髪碧眼それも美貌がいるから、わたしは慣れている。

やっぱり外見がとても日本人離れとした美貌と優秀があわせ持つと場を支配するカリスマ性が放っている。だからなのか天然だからとはバカにしたりする人がいない。

とはいえ、わたしはこういった部類と身近にいるから平然と指摘できるし近づける。


「こほん、いいですか九条副生徒会長くん。

今はコーヒーを嗜むために集まったわけではないのです。とりあえず着席してください」


「そうだね。どうやら僕も頭を冷やさなければならないようだ」


(つ、つかれる……)


会議を始めるといいながら脱線して時間が過ぎていく。そろそろ閑話休題にして前に出ないと。


「エイちゃん先月の運動会データを」


「わかったよヒヨちゃん。この行事に総合的な費用は資料に書かれているとおりに――」


まだ個性の強すぎる自治的な組織の生徒会のメンバーでは比較的にはまだマシなほうの宝山ほうざん生徒会に所属する会計係。

エイちゃんのあだ名は下の名になる昌瑩しょうえいから取って親しく呼んでいる。

たぶんこんな複雑で難しい名前にしたのは、

昌瑩玲瓏しょうえいれいろうから来たのだろう。その意味は宝石のように美しい。


「以上になります。それで生徒会長どうしてハムちゃんいのいのですか?」


「ハム……ちゃん?それはだな。

ええい、比翼書記よハムなんとやらは、どういう人物なのだ!」


一応はここのメンバーではあるのに生徒会長は把握していないようだ。


葉室黄葉はむろこうようですよ。まだピカピカの一年生でリスのようにつぶらかな子。そんな可愛いらしい生徒会庶務を

お忘れなんて可哀想じゃないですか!」


「覚えているわボケェェッ!!

だったらハムとかヘンテコな名前にせんでハムラちゃんとかあるだろうがぁぁーーー!」


「へんてこ……」


肩を落として分かりやすく落ち込んでしまうエイちゃん。そういえばハムちゃんと命名したのは、この子だったけ。


「ち、違うのだ宝山会計よ。これは言葉のあやであって別にキミを責めていたわけでは」


「言葉のあやじゃないですよ愚管抄。

言葉のあやというのは話術が上手という意味で知らないのですか」


「きさまは黙れえぇぇーーー」


指摘されて怒り狂う生徒会長。


「はぁー、またお喧嘩を。宜しいですか?お二人とも少々お静かになさてください。それでは争いで議事録に記すことになりますよ。

頭を冷やされは?」


またまた一触即発な状態になると副生徒会長が見て耐えれないと調子で、わたしと愚管抄の不毛な戦いを止める。

ええ、たしかに頭を冷やしてやりますとも。

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