第52話―スイートハートの策定3―
我ながら、とんでもない人生だ。
平凡な人生を歩むはずの子供が
どれだけ傷をついても頓着しない生活を脱され、おかげで思春期として当たり前の生活を暮らしている。
(この平等に受ける生活は選別されている。当たり前を暮らしが出来ない人たちはいる。子供の力で変えれない、ううん多分これは大人の世界でも同じかもしれない)
歩むべきではない人生を歩んだ。
消せない歪んでしまった過去は、予告もなく思い出してわたしの当たり前の生活を影を差すこともある。
けれど、そんな苦痛を伴うばかりだけじゃないと前向きに捉えるようにした。
(いつまでも浮かんでくるばかりじゃない。焼きついた最悪の光景は、同じ境遇を助けようとする闘志として変わる)
具体的なことは考えていないけど、いつか成そうとして日々わたしは研鑽を重ねている。着いた…深海の思考に浸かっていると光のように一瞬だ。わたしが足を向けたのは、閑散な住宅街のどこでもある一軒家。
インターホンを押すとスマホを取り出して到着したことをメッセージで送る。
三分ほど立って待っているとドアが開く。
「うわぁーヒヨヒヨじゃん。ボンジョルノ」
エセギャル語を口にして挨拶するのはメガネと頭ボサボサの女の子。オシャレというものを捨てた女子高生の不死川紬。
「ボンジョルノ。どうしてイタリア?」
「イタリア要素あった?」
「あったよ。思い切り、あったから先までした挨拶のボンジョルノがイタリア語」
「そうなのッ!?いやぁーマジで博識きょうき」
「で、どうしてイタリア語」
「おぉー、そんな気になるか…みんなの兄ちゃんとフユユンが挨拶していたから真似してみた」
「そ、そう」
あまり深い意味はないと予測していましたが実際に答えた内容にどうしても拍子抜けをしてしまう。
「さぁ、さぁ上がって行ってよ。
出すものはないけど」
「そのへんは期待してないから平気」
「さすが富裕層」
「そこは、あまり関係ないと思うけど」
快活な笑みを浮かべてみせる紬。わたしよりも奔放とした言動をする彼女と話をしていると気づけば中身がなく間の抜けた会話になる。
しかし中身のない会話とはいえ打ち解けることもあって、本当の意味で中身のない会話は意外とないものかもしれない。
明るくわたしを案内されたのは紙袋いっぱいに散らかった部屋だった。
「紬まずは掃除しようか?」
久しぶりに訪れた友人の部屋は、ゴミであふれており床に足をつける場所さえも無いほどに。
「えぇー、清掃しないとならないの?」
両手を頭の後ろに組み、まったく乗り切りではないと声音。
「ハァー…いい紬、この汚部屋を目にしても掃除をしない選択は存在しません。
ですので掃除します。もちろん手伝いますから一緒にやります」
ストレスを感じながらも優しく、やんわりと促してみせる。
「やりたくなーーい」
「ツ…ム…ギ…」
「あいたたっ!!ぎゃあああーーーッ。
ギブ、ギブ頭が砕かれるよおぉぉぉーー!
アイアンクローはやめてえぇぇぇーーーッ!!」
握りしようとした手を離すと紬は非難の恨めまがしい視線を突きつけてくる。
わざわざ遊びに来てやったのに掃除の手伝いすることに感謝の一言が欲しいぐらいだ。
散らかしていたのはポテチなどの菓子類などの紙袋ばかりでゴミ袋の中に入れて掃除機をかけるだけで終わる。
「――や、やっと終わった」
「そのセリフを言うのは、わたしの方だよ。
まったく…いいですか紬。
せめて週に一回だけでもしてください」
「うん、わかった」
あっ、これテキトーにあしらっているなあ。
これ以上は指摘しても聞いてくれそうになさそうなので説教はこのへんにして話題を変える。
「有言実行してくださいよ。
生活も一新する時期ですよね。それで…もう学校は行けるようになりましたか?」
「………」
陽気な笑顔を作って、わたしを無用な心配させまいと何かを言おうとしてか口を開けては閉じると繰り返している。
それと笑顔も強ばっていて無理して作っているのが痛々しい。
「………コホン、コホン。花粉がキツい時期でもあるから困ってしまうよ。
それでは動画を撮りましょうか?どうせ今日も撮るのでしょう?」
「だね」
話題を返った配慮を感じてか紬は力なく笑顔で小さな声で答えるのだった。
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