第28話―ネオ・ニュー・バレンタインデー2022―
俺は渡された箱を開封。
真奈が言っていたとおりバレンタインチョコ。当たり前か。
俺は
「ほどよく甘さと硬さ……真奈とても美味しいよ。また料理スキル上がったみたいだね」
「フフッ、そう仰ってくれるとお褒めに預かり光栄。お兄さんが嬉しそうに食べているとワタシも天に昇る気持ちだよ」
「はは、天に昇る気持ちとまで言っていないつもりなんだけどね」
そこまで言っていないつもりなんだけど真奈にはそう聞こえたかもしれない。
けど
和んでいると熱心的な視線を感じる。
その正体は冬雅だった。
怒ってはいないが不満そうにしている。
それもそうか。まさか最初にバレンタインチョコを渡すはずが真奈に渡されたばかりか最初に食べていれば快く思うわけないか。
如何にも
食べ終えて熱いお茶を淹れた茶器を口に運んで飲む。これなら冬雅はバレンタインチョコを渡そうとするはず。
「それで今のは
これが本命のお兄さんに渡すバレンタインチョコだよ。フフッ受け取って欲しいかな?」
食べ終えて一息のタイミングで真奈は新たなるバレンタインチョコを出した。
ふむふむリボンを丁寧にラッピングされていますね。いや、そうじゃないコレは。
「前哨戦のバレンタインチョコだったの?
いや、そもそも謎すぎる単語。
どれも本命チョコだと思うんだけど、それにバレンタインチョコ二つもあるの!?
あと俺ツッコミしすぎ!!」
「はぁー、まだだよ東洋お兄ちゃん。
まだ叫ぶには早いからね。……このあと
まだカオスな展開はあるんだから」
明後日の方向にと見ている花恋の言葉。
まるで独り言のように言った内容に俺は、これと堂々かそれ以上があるのかと戦々恐々せざるにはいられなかった。
「そ、そうか。真奈バレンタインチョコ二つ目ありがとう。
凄く嬉しいよ。早速だけど今ここで食べていいかな?」
「フフッ、もちろん良いよ」
後で食べるという選択するには
なので次も食べると思うわけだし、そう考えてしまい自縄自縛となり他の選択するのが出来ない。仮にそうして後で食べると言ったときに困ったように悲痛そうな顔を見れる自信が無い。まだ俺の中では真奈が告白の場でなんとも表情を読めない作り笑いを見たことをまだ尾を引いている。
「お兄ちゃん!」
真奈と反対の隣に座っていた冬雅がそう言うとカバンからバレンタインチョコを出して炬燵の卓上に置く。
「こ、恋人となった初めてのバレンタインですので愛情を込めて作りました」
「冬雅……ああ。喜んでいただくよ」
彼女は引き締めたという表情を固さで恋慕を伝える手作りのチョコを渡そうとする。
いつもいつも告白をするのに、こういう至って普通な場面となれば勢いがない。
意外なのは人としてよくある。それが冬雅なのだとよく理解しながら俺は温かく想いを積もったチョコをいただく。
箱に飾るのはピンクのリボンで飾るラッピング。それを外して中を開けるとハート型の
焼きチョコ。それじゃあ一口と運んで咀嚼。
「ど、どうでしょうか?お兄ちゃん」
「んっ。すごく美味しいよ冬雅。口の中に甘さが広がって噛むととろけて」
「えへへ、頑張った甲斐がありました」
もう少し味の感想を装飾していきたかったが
表現する自信がなく少し拙い食レポもどきをしたのだった。
太陽のように眩しく冬雅は笑う。
お世辞抜きで本当に手作りされた一品は甘党の俺のお菓子の中では、ずば抜けるほど美味であった。
「えっへへ。お兄ちゃん甘いの好きなので沢山あるんです」
「た、たくさん?」
「はい。わたしがお兄ちゃんの想いは無限」
カバンの中から両手で抱えるようにして取り出すはチョコの数々。もしかしなくとも冬雅が作った物だろう。
これだけではなくポケットの中も。それだけでなく懐からも取り出していた。
な、なるほど花恋がいったことは、これのことなのか。
冬雅は満足感に満ちたように笑うと両手を左右に広げて言葉を紡ぐ。
「わたしの想いは無限!お兄ちゃん食べきれなかった分は明日やその次にでも食べてくださいねぇ。もし飽きたら捨てても………へ、平気です…………たぶん。
ですので、いっぱい食べてください!!」
「わ、わあぁーー。こんなに食べれるなんて俺は幸せだな」
ありとあらゆる種類。それを前にして3食ともいける豪語した俺でもゲンナリする量だ。
おそらく百に近い数のバレンタインチョコ。しかし、ここにあるチョコを冬雅は一人で作りきって渡そうと敢行した。
その場で思いつけて作れる量ではないと俺は一種の戦慄を覚えた。
そのあと俺はお腹を壊すのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます