第23話―究極アグリーメント5―

ゆるむことを知らない寒さとの生活2月9日。真っ白と染まられた空が流れていく。

時刻はAM7時5分、その日も朝食のリビングは冬雅と食卓に向かい合って食事を取る。

いつものように冬雅は美味しそうに食べてくれている。

並べられた料理はフライパンでボイル焼きしたウインナーとシャキシャキのレタスを添えて、目玉焼きのオーソドックス。

いつも通りな日常の光景、しかし俺は緊張していた。どうしても事前に言わないといけないことがあり、うまく言葉を言おうと動けない。また次の日にすればいいと頭に潜む悪魔がそうささやいて誘おうとする。

それを拒むと、緊張から全身に縛られるように次の行動を妨げようとする。

がそれらを後ろ向きな道を行くわけにはいかず、かけなしの勇気を振り絞って言う。


「冬雅…大学が終わったら俺の家に来てくれないか」


緊張したのが原因で伝えるべき用意してきた言葉が別の言葉を発した。

箸を止めた冬雅は、もちろん不思議そうに顔を傾いて可愛らしく反応する。


「えっ、俺の家に来てくれないかですか?

あぁーー!それって……わ、分かりました!

この冬雅、講義が終われば誘いを無視してダッシュで向かいます。

そろそろ、そういう段階なんですねぇ」


詳細なこと伝えていないのに、さすがは冬雅と言ったところか意図を読んだようだ。

決意したように顔を真剣な顔つきになっており、この先を想像してか頬を真っ赤になっている。


「はしょった説明を理解するなんて凄い。

でも、そこまで急がくてもいいんだよ。もし予定があったら別の日にしても」


「い、いえ…だ、大丈夫ですよ。

……そんな急にするなんて驚きましたが、わたしも大人ですしお兄ちゃんとそういった事をするのは自然の摂理というものです!」


目を回遊魚のように目まぐるしく動いて慌てている。どんな日であっても欠かさずに告白を告げてきた冬雅でも、こんなに照れるんだなと改めて中身は変態ではなく暴走気味な乙女であることに実感する。


「そうか、落ち着いて冬雅。

とりあえず後で俺が真奈を連絡して来てもらうようにお願いをする。

もちろん予定が会わないなら別の日になるけど、忙しくなるとは聞いてはいないから多分その辺はオーケーしてくれるはずだろう」


「ふえぇッーー!?全然オーケーじゃあ無いですよ。な、なにを考えているのですか、

お兄ちゃんは!!

だ…だ、駄目ですよ二人で……そういうことするのは」


「えっ?駄目なのか!?」


まさか絶叫して断らるとは思わず俺はつい目を見張るような反応をした。

どうして冬雅はこんなに真奈を来ることをよくないというのか……。


(いや、待って!そもそも何かがおかしい。

冬雅のセリフを気になった部分があった。それを振り返って並べてみよう。

そういう段階だと言っていた。

わたしも大人なですしと納得して言った。

…この2つが最も気になった)


その2つを熟考して至ったのは、そういうことだった。なにかは言えないがそういうことを冬雅は解釈したようだ。

そうか、だから話が噛み合わない訳だ。


「ぎゃ、逆にお訊きしますけど、どうしてお兄ちゃん真奈とわたしで―――」


「冬雅ストップゥゥゥッ!!

それは違う。告白の返事をしたいから予定をすり合わせたいだけなんだ」


なんとか遮ること出来た。危うく冬雅がとんでもない言葉を使うところであった。

…まさか、こんな滑稽こっけいな会話を繰り広げていたのか。いつもの俺だったら違和感を気づいていたが緊張でまともな思考が回れなかったのが大きかった。

そして俺が慌てて放った言葉を解ろうとして頭の中で繰り返して考える。

そして冬雅が早とちりしたことに気づき新雪ごとく真っ白な肌をみるみると顔を全体までを赤く染まっていく。


「うわぁー。わ、忘れてください!

告白の返事ですねぇ。はい分かりました。

……それでお兄ちゃん、誤解とはいえ…わたしが振られても後日どうですか?」


「……ああ。告白の返事なんだ。帰りを待っているよ」


俺は最後の言葉は聞かなかったことにした。

そのあとの食事と会話は、ぎこちないものであった。

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