第54話 ライブへの道
夢のように日々が過ぎていった。
みらいは懸命に生きていた。
歌い、勉強し、笑った。
樹子、ヨイチ、良彦、すみれと過ごす日々は輝いていた。
樹子はどこまでも導いてくれるような気がした。最高の友だち。北極星のような人だ。
ヨイチは眩しいほどに明るかった。彼の冗談でお腹が痛くなるほど笑うこともある。太陽みたいな男の子。
良彦は神様みたいにやさしかった。そばにいると、心がぽかぽかとあたたかくなる。なんて素敵な人なんだろう。
すみれは魅力的だった。綺麗でスタイルもよくて、自分なんかとつきあってくれるなんて信じられない。
楽しかった。
ライブをするのは怖い。
でも、この人たちと一緒に音楽をやっていたい。捨てられたくない。ライブ、できるだろうか……?
自分が作詞した5曲がどんどん完成度を増し、人に聴かせても恥ずかしくないようになっていく。わたしの歌には自信がないけれど、樹子たちは、いい声だと言ってくれる。がんばろう……。
期末試験が近づいてくる。
お母さんは以前のように、東大へ行けとやかましくは言わなくなったけれど、やっぱりわたしの成績のことは気にしているはずだ。勉強もがんばらなければならない。できればガンマ1に昇級したい。
試験まであと1週間になったとき、勉強会が始まった。
良彦がまた先生になって、数学と物理、化学を教えてくれた。
すみれは英語を教えてくれた。
5人でやる勉強会も楽しかった。つまらないはずの勉強でさえ、友だちとやると楽しいのだ。
本当に夢のように日々が過ぎた。
7月6日に期末試験が始まった。
英語、国語、数学、理科、社会の主要5科目に美術、音楽、保健体育を加えた試験。
毎日3科目、5日間に渡って行われた。
みらいはテストに確かな手応えを感じた。昇級できるかどうかはわからないけれど、それなりによい点数が取れる気がした。
7月10日金曜日に期末試験が終わった。
「さあ、ついにやるわよ!」と樹子が言うのを、みらいは1年2組の教室で聞いていた。
「金、土、日と最後の練習をするわ。そして7月13日月曜日の放課後、あたしたちのファーストライブを南東京駅前で敢行するわ! 成功するかどうか、あたしにもわからない。とにかく、第1歩を踏み出すのよ! いいわね?」
「楽しもうぜ。無名のバンドのゲリラライブだ。失敗してあたりまえ。気楽にやろう」
「私は成功させたいわ。若草物語は凄いバンドだと信じているから!」
「たぶん成功すると思うよ。きっと誰かが聴いてくれる」
「がんばるよ……」とみらいは小さな声で言った。相変わらず自信がなかった。
みんなと一緒にいたい……。
みらいは置いていかれないように、仲間たちと樹子の家へ向かった。
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