第121話 初めての遊園地デートへ
あれから二週間後――約束をした日曜日になった。
事前に来ていた連絡によると、西園寺先輩がわざわざ俺の家まで迎えに来てくれるという事なので、俺は家の前でソワソワしながら待っている。
「髪とか服、変じゃないよな……」
ソフィアのアドバイス曰く、清潔感があれば大丈夫だよ! との事だったので、なるべくスッキリした服を選んできたんだけど……なんか不安になってきた。
そんな事を思っていると、俺の前には、最近ちょっと見慣れてきた高級車が止まった。
「おはよう、磯山君」
「おはようございます、西園寺先輩」
車から降りてきた西園寺先輩は、当然のように私服だ。秋らしい落ち着いた色合いのワンピースは、西園寺先輩の美しさを最大限まで引き出している。
やっぱり西園寺先輩は綺麗な人だ……それに、カッコいい一面も可愛い一面もあるんだから、まさに無敵すぎる。これ、もし共学だったら、モテモテになっていただろうな。
「さあ乗ってくれ」
「はい、失礼します」
車の中だというのに、フカフカのソファがあることに、まだ若干の違和感を感じながら腰を下ろすと、すぐ隣に西園寺先輩も腰を下ろした。
「出発してくれ」
「かしこまりました」
「それで、今日はどこの遊園地にいくんですか?」
「着いてからのお楽しみだ。期待は裏切るつもりはないから安心してくれ」
そんな自信たっぷりだと、俺もちょっと期待しちゃうじゃないか……って、普通こういうのって男が先導するべきなんじゃ……?
そ、そうだよ! いくら俺が年下だからって、西園寺先輩ばかりに負担をかけるわけには行かない! 今日は二人で楽しみつつ、西園寺先輩に負担をかけないようにしよう!
「ふふっ、最近ずっと忙しくて、こうして会える時間が取れなかったからな。会えて嬉しいよ」
「俺も嬉しいです」
「っ……!?」
俺はそっと西園寺先輩の手に自分の手を重ねると、西園寺先輩は顔を赤くして照れながらも、俺の手を握ってくれた。
おかしいな、こんな子供でもやりそうな事をしてるだけなのに……心が暖かくなるし、西園寺先輩の事がもっと好きになっていく気がする。
「到着までもう少しかかるから、少し寝ておくといい」
「そんな、寝るなんてもったいないです!」
「君、昨日あまり寝てないだろ? クマがうっすら出来てるし、さっき欠伸を噛み殺してただろう?」
なんだこの人、観察眼の鬼か!? 凄すぎてぐうの音も出ねえ!
「そ、その通りです……」
「なら休んでおけ。折角遊ぶ時間になっても、体調不良では満足に遊べないからな」
「そうします」
俺は座ったまま寝ようとしたら、何故か横に引っ張られて……そのままコテンと倒れてしまった。
「寝るのはここ、だろ?」
「さ、西園寺先輩!?」
これって膝枕じゃないか! 程よい柔らかさと高さ……め、めっちゃドキドキする……しかも、西園寺先輩のおっぱいが目の前に……じゃなくて! 幸せだけど、こんな事をしていいのか!?
「嫌だったか?」
「嫌なわけないです! ちょっと驚いたっていうか……西園寺先輩は、こういうのは嫌いかなって」
「ま、まあ確かにそうだが……きょ、興味がないというわけではない……」
おっぱいの山の向こうに見える西園寺先輩の顔は、ほんのりと赤くなっていた。
いつもソフィアがくっついたりした時に怒ってたから、そう思ってたんだけど……ちょっと意外だな。
もしかして、興味があったけど表に出すのは恥ずかしいから、変に目について過剰に反応してたとか? ははっ、さすがにそんな事はないか。
「それとだが、あんまり上を見ないでくれ」
「え?」
「わ、私の胸を凝視してる状態になるからだ! 察しろ!」
「す、すみません!」
あ、急に西園寺先輩らしくなった! ちょっと怖いけど、なんか安心してる自分がいる!
「まったく、いいから目を閉じろ」
「はい」
「~♪ ~~♪♪」
目を閉じたら、有名な子守唄が聞こえてきた。
西園寺先輩、凄く歌が上手いな……それに……頭まで撫でてきた……こんなの……緊張よりも安心感の方が勝ってしまう。
あ、あれ……すげえ……眠くなってきた……子守歌ってこんなに……ぐぅ……。
****
「磯山君、起きるんだ。着いたぞ」
「んん……」
まだ寝ぼけながら目を開けると、そこには巨大な二つの丘と、そこから覗く西園寺先輩の顔があった。その破壊力は想像を絶するもので……俺の頭は一瞬で覚醒した。
「お、おはようございます!」
「ああ、おはよう。そんな慌ててどうした?」
「いえ、なんでも!」
あ、危ない……まさか西園寺先輩のおっぱいで目が覚めたなんて、口が裂けても言えないって。
ていうか、本当に寝ちまったのか俺!? せっかく西園寺先輩の初めての膝枕体験だったのに……くっそぉ……勿体ない事をした。
また頼んだらやってくれないだろうか……さすがに望み薄か……。
「それじゃ降りようか」
「はい」
西園寺先輩に続いて車を降りると、そこは国内でも超有名な遊園地だった。マスコットのクマのキャラクターがとても可愛い事で有名だ。
「遊園地ってここだったんですね」
「ああ。磯山君は来た事はあるか?」
「確か……あったはずです」
確か、俺がまだ小さかった頃に、両親と一緒に来た事があるはずだ。前世を思い出す前の俺の話だから、自分の話だって自覚がしにくいけどな。
って……あれ? なんでこんなに人がいないんだ? 少ないとかそういう次元じゃない。客らしき人が全くいない。
「西園寺先輩、今日ってもしかして閉園日じゃ?」
「そんな事はないと思うんだが……それにしては人がいなさすぎるな。とりあえずゲートに人がいないか確認してみよう」
互いに怪訝な表情を浮かべながら入場ゲートへと向かうと、一人の係員がゲートに立っていた。
「西園寺 玲桜奈様ですね、お待ちしておりました」
「少しお尋ねしたいのですが……今日は閉園日でしょうか? 他の客がいませんが……」
「いえ、玲桜奈様のご尊父様からご連絡が入ってまして。今日は貸し切りにしたから、思う存分に楽しんでくれとの事です」
……貸し切り……?
「「…………………………えぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?」」
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