第194話 ただ今築城中 測量と楠木陰陽会 9月下旬

<<清洋建設 特別室>>


清洋建設の社長室に俺とツツと糸目で転移する。

転移した先には、小田原さんと昨日の3人組がいた。いや、後ろの方に作業着姿の人達がいる。おそらく彼らが測量部隊だろう。


「おはようございます。お約束どおり、機材とエンジニアを準備させていただきました」


早い。さすがはスーパーゼネコンだ。


「おはようございます。そのエンジニアの人達、一応、秘密保持は大丈夫ですか?」


「はい。彼らからは念書を取っています。全員独身で仕事に燃えています。いや、正直に申しますと、全員我々の親族などの関係者です。裏切りはないとお約束します」


ふむ。信じよう。今回は建設予定地の荒野を測量するだけだし、大した秘密事項はない。


「了解しました。後は、私も危険なことをさせるつもりはありませんけど。もし何かあっても、医者も連れていますし、帰ろうと思えばすぐなんで安心してください」


「ははは。ゼネコンなんて、海外に行かせたり絶海の孤島に行かせたりですから。貴方のお近くで仕事ができるんなら、異世界の方が日本に近いですよ。何かあっても私達の判断で人を出すのです。あなたにご迷惑はかけません。では、チームを紹介しましょう」


後ろにいた人に向き直る。5人いる。全員男性だ。まあ、今回は1泊2日の予定である。例の性欲アップの弊害みたいなものも大丈夫だろう。

今の測量技術は、現場作業がかなり短い。特に今回はほぼ自然地形を測るだけだし。


その5人の自己紹介が開始される。

その後、車も一緒に転移出来ないか、と相談される。

彼らの後ろにはハイエースが1台駐まっている。機材は車両に積まれているのだろう。


ここは巨大なガレージ付きのオフィスだ。車くらい楽々入る。


「車ですか。まあ、そうなりますよね。大丈夫ですよ。出口変えなきゃですけど。それから一応、ボディとタイヤを洗浄しましょう」


「やはり、車くらいはどうとでもなるのですね」


「ま、『パラレル・ゲート』にも色々あるんです。では、行きましょう」


「あの、我々3人もよろしいでしょうか。今日で帰りますので」


「いいですけど」


3人組も来るようだ。



・・・・

<<五稜郭建設予定地>>


ひとまず、全員を車ごと異世界転移させる。


一通り、うちのクルー達を紹介した後、軽空母隊は魔石ハントに送ることにする。


「じゃあ、軽空母はハントに行って来て。弁当も貰ったし、俺たちは測量やってるから」


「はい。分かりました」


オルティナがニコっと笑って敬礼する。


「おお、美人だ」「ビューティフル!」


そう言って興奮しているのは、今回連れてきたエンジニア達だ。アメリカ人も一人混じっている。

彼らは、ここに降り立った時からテンションが高い。


「さてと、まずは、お楽しみの魔力判定じゃないか? おい糸目」


「はいはい」


糸目はここに残ってもらった。


・・・・


異世界名物、土魔術テーブルと椅子を作って魔力判定タイムだ。


「社長の適性は火ですね。火炎攻撃の他、砲弾に爆発属性を付加させたりすることが得意な適性になります」


今回の装置は、色見の儀式だけだ。あの怪しげな数値は出てこない。


「火ですか。そうですか」社長さん、少し嬉しそう。


「魔術って、適性があると結構差が出ますからね。適性がない魔術も使えはしますのでご安心を」と、俺が偉そうに補足していおいた。


「あなたは反重力が少し入っています。おめでとうございます。レアですね」


「え? 私がですか? 嬉しいな」


そんなこんなで全員分を判定。続けて魔術障壁も訓練する。一応、これをやっておかないと安心できない。

堀があるとはいえ、ここには空飛ぶ恐竜もいるし。


糸目が長いお下げをふりふりさせながら、のりのりで殴りかかるふりをしていた。

こいつ、王城で俺にもやっていた。これが好きなんだろう。多分。


・・・


「さて、次は測量ですが、どうされます? ここにはGPSもありませんが」


「非GPS環境でも大丈夫ですよ。地上に標定点を置かないといけませんけど、大した手間ではありません」と測量部隊の人。


「そうなんですね。深浅測量の方はどうです?」


「あ、それは船が必要ですね。ここには空を飛ぶ機械があるって聞きました」


・・・


手分けして作業開始。


測量部隊を陸と海で2班に分ける。


陸上班2名は糸目に任せて俺は海。


びっくりされながらもマルチロールを1機出して測深機材を取り付ける。こちらはGPSがないと効率は相当悪いらしいが、陸上の測量機器と合わせると何とかなるらしい。


陸上班がドローンを飛ばし始めた。


早い。


こちらも苦労して機材を取り付けた後、マルチロールを水面すれすれに降ろして水深とその座標を抑えていく。


・・・・


ここ、五稜郭は、東と南が海。北が密林と荒野が広がりその先に山、西が地平線が見えるような荒野だ。


太陽が地平線の彼方に沈みそうという時間帯に、軽空母が帰ってくる。


こちらの測量作業はまだ終わっていない。でも、明日の午前中には終わりそうだ。なかなかいいペース。


ああ、何だか、こういう平和な肉体労働をするのも久しぶりだ。

国際情勢とか日本人帰還事業とか、面倒なこと諸々を忘れられる気がする。まさしく趣味。そう。これは趣味なのだ。かなり贅沢な趣味だけど。


今日は美味しいお酒が飲めそうだ。


今日の測量は切り上げて、異世界名物、BBQの準備を開始した。


・・・・


太陽は完全に落ちて、魔術の明かりで周囲を照らす。ただ、今日は月も大きいようで、そこそこ明るい。


「では、今日はラメヒー王国名物、バーベキューです。お酒も日本人がこっちらで蒸留して瓶詰めしたものです。楽しんでください」


「「「乾杯!!」」」


軽空母が魔石ハントから戻ってきたタイミングで、測量部隊5人と社長以下おじさん3人組を交えてBBQを開始する。


材料は海鮮系の他に、カエルやトカゲの肉も入っている。何の肉かは言うまい。


「いや、多比良さん。ここは驚きの連続です。この年になって、こんなにわくわくできるとは。今後ともよろしくお願いしますよ」と社長さんが言った。


「いえいえ。こちらも、大手ゼネコンさんを利用する形になるんですから。今回、本当にお金はいらないんですね?」


「お金はこちらが出したいくらいですよ。こういったお料理も、今度はこちらからご馳走させてください。良い酒もお届けしますよ」


おじさん達で会話する。


「お酒なら、ウィスキーが好きな人達がいます。そういえば、牛肉が好きなやつもいましたね」


若手エンジニア達は、輜重隊やノルン、それから元近衛とそのお付き達との会話を楽しんでいる。ちなみに大将とオキタは調理場でフル稼働中。


フェイさんとヒューイは軽空母の屋上で監視業務。ラムさんは、軽空母内の食堂にいる。


「そういうことは遠慮なく言ってください。沢山持ってきますよ」


「まあ、そんなに沢山じゃなくても。逆にここのワインも持ってきますよ。アルコールは薄いんですが、おいしいと思います」


「ほほう。人材派遣だけではなく、お肉にお酒にお世話になりっぱなしですなぁ。本当に何でもおっしゃってくださいよ」と言って、会話に入って来たのは技術部長さん。親しみを込めてベクトルさんと呼んでいる。


「じゃあ、ベクトルさん。例えばなんですが、花火職人とか? 今度日本人で秋祭りやるんですよ。サプライズにしたくって」


「はい? 花火ですか?」


「あはは。ここにいたら花火も見ることは出来ないんでしょう。よろしいですよ。ゼネコンは、地方に行けば夏祭りの寄付金とか結構払うんです。伝手はいくらでもあります」


ベクトルさんではなく、社長さんの方が快諾してくれた。


魔術花火も悪くはないんだけど、やっぱり火薬の花火の方が迫力があっていい。


親睦も深まったところで、BBQは終了。


おじさん3人組は今日中に日本に送り届ける。

エンジニア5人は軽空母で一泊してもらう予定である。ノルンには絶対に襲わないよう念を押しておいた。


いや、多分だけど、今日の5人は嫌がらない気がするから大丈夫か。



◇◇◇

<<次の日の五稜郭建設予定地>>


次の日、朝から残りの作業を終わらせ、測量部隊5人と車両1台を日本に送り届ける。

車両は一応、水魔術で洗浄する。土の中にどんな細菌がいるか分らないからだ。


この5人はかなり名残惜しそうだった。気持ちは解る。だが、残念なことに、ここは俺個人の事業だから、その関係者をラメヒー王国に連れて行くのも憚られるのだ。


それから高度計と航空写真用のカメラを貰った。あのカメラは軽空母の下面に付けた。これで色々と撮影して回れる。


それに、お土産に早速大量のお酒と牛肉を貰った。何だが要求したみたいで悪いけど。

一応、毒に関してはオキタがエキスパートらしく、チェックしてくれた。多分、大丈夫だろうとのことだ。


また、今回使用した清洋建設のガレージ付きオフィスは、特別室として俺たちが自由に使ってよいそうだ。テレビやパソコンも運び込んでくれるとのこと。今後、測量結果を閲覧したり、社内コンペや設計などの打ち合わせもここで行われる。

機密度の低い仕事ならここでやってもいいだろう。


今日は、まだ昼前。ここの測量と写真撮影は済んだから、補給も兼ねてサイレンに帰ることにする。


「では、今日は魔石ハントしながらサイレンに帰る。オキタ達も今回はサイレンでいいんだよな」


日本から戻って来たところで、『パラレル・ゲート』の門を珍しそうに眺めていたオキタに話かける。


「うん。晶さん達に会いたいし。大将もノルンも行きたいんだって。バルバロには、どうせまたすぐ行くんでしょ?」


なら決まりだな。


「ここにはまた来る。築城も図面が出来る前までに大量の石を集めておきたいしな。さて、みんな乗り込め。サイレンに行こう!」


「「「了解!」」」



・・・・

<<サイレン ラボ>>


夕方のサイレン。魔石ハントはそこそこにサイレンまでほぼ直行で戻って来た。夕方だがまだ明るい。


「着陸完了しました。艦長。次の出発はいつ頃になりそうですか?」と副艦長のオルティナが言った。


「次は総裁戦の後かなぁ。10月に入ったら軍の結成式とか、秋祭りするとか言ってるし。遠征はしばらく後だな。場合によっては近場に出るかもしれないから、いつでも連絡付くようにはしておいて」


「分かりました。とりあえず、今日と明日はゆっくりさせていただきます。あさってにはこちらに戻ってきますね」


オルティナ達にはかなり働いてもらっている。鋭気を養っていただきたい。


「私はこの艦をメンテに出してから、バルバロ邸に顔を出すわ」


「分かった糸目。皆もお疲れ様」


「お疲れ様です。私達タマクロー家からの派遣組は、今からディー様に報告に上がります」


タマクロー家からの派遣組もここでリリースだ。艦載機は、加藤さんがマ国に赴任して量産に踏み切っている。タマクロー家用の艦載機は、完成次第納品される見込みだ。


「ああ、ディーにもよろしく。今日はバルバロ邸で御飯食べるから。ディーには明日にでも会いに行くって言っておいて」


「分かりました」


・・・・


軽空母居残り組や輜重隊とも別れ、『出張料理人』やフラン達と一緒にバルバロ邸に行く。


「あ!? お帰り~」


バルバロ邸に行くと綾子さんが出迎えてくれる。


「ただ今綾子さん、夕飯食べていい? それからお土産。はい」


焼酎一升瓶3本と牛肉の塊をあげる。


「え? お酒ね。それと牛肉? ありがとう。夕飯もちろんOKだけど。どうしよう。コレ食べる?」と綾子さんは言って、俺が手渡したお土産を見る。


「それ牛肉だから、子供達に出してあげてよ。お酒は自分の分はキープしているから。祥子さんらと楽しんで」


「了解っと。それと、冒険者ギルドから貴方が帰ってきたら連絡くれって言われてたから、連絡させるね」


「ほいほい。じゃあ、俺は宴会場で待っていればいいのかな?」


「うん、そうね。あ、オキタちゃん。晶たち呼ぼうか?」


「うん。お願い」


オキタは晶達と会うようだ。


廊下の先からウサギのオキが走ってきて俺の股間にダイブ。可愛いやつめ。何故かオキタからジト目で見られた。このウサギはお前のペットなんだがな。俺の股間にダイブしたウサギの顔なんて撫でたくないのだろうか。


フランはこちらに会釈するとどこかに行ってしまう。モルディのところに行ったのだろう。

出張料理人の大将は、綾子さんと一緒に厨房に入っていった。

ノルンはいつの間にかいなくなっている。


・・・


「ああ、いたいた。帰って来たのね」


宴会場でお茶を飲みながら待っていると、日本人会幹部3人組が登場。


「なあ、少し秘密の話が出来ないかな」


高遠さんがきょろきょろする。今は夕方、すでに夕飯を食べに来ている人らもいる。


「じゃあ、モルディの自室を借りようか」


・・・・

<<モルディの自室>>


「さて、話は色々あって、近況報告と人の紹介だ。まずは、紹介からかな。彼は600人失踪事件の後、残留家族らの支援に当たっていた団体の人なんだ。今も離散家族の再会や手紙のやり取りで手助けしてくれている。もちろん、多比良さんの奥さんの実家である道場も手伝ってくれているけど」


高遠さんの後ろには知らない人がいる。物静かそうなスーツを着た男性だ。

背筋がよく、若干糸目気味の人だ。


「はい。私は楠木陰陽会の楠木と申します。お会いできて光栄です。多比良様・・・」


陰陽会? 宗教団体か? 声が綺麗で流暢だ。そしてこちらを見る目が熱い。


「ええつと。この度は我々のためにご尽力なさったということで、ありがとうございます。ただ、その、どういった団体の方なので?」


ほぼ無宗教な日本人的感覚からすると、仏教ならまだしも、少し身構えてしまう。


「はい。我々は京都に本部を置く宗教法人です。元々高橋道場とは、法具の研究などで繋がりがあったのです。この度、我々の信者の中にも失踪者が出まして、他の団体とも連携して失踪者の情報を集めていたのです。あなた方が帰ってこられてからは、離散家族の支援に回っています。陰陽道や我々の宗派についての説明は、今は割愛させていただきますが、我々は貴方の味方です。それだけはお伝えしたい」


なるほど。信者のために動いていたらしい。だけど、少し気になる事がある。


「そうですか。一応、確認ですが、私の家の燃え跡を聖地にしようと活動なさっている団体とのご関係は?」


「彼らはうちの一部の過激派なんです。申し分けありません。我々の団体の一派です」


犯人みっけ!


「そ、そうですか。売りましょうか? あそこ。一応、あそこのお陰で2つの世界が繋がったのは事実ですからね」


「なんとぉ! い、いや、失礼。その話はまた今度にでも・・・」


「楠木・・・そういえば、楠木という人が異世界に渡った600人の中にいましたが・・・」


「はい。親戚筋にあたります。この度はほっとしているのですよ」


「まあ、はい。大体わかりましたが・・・」


「いえ、もう一つ重要なことがあるのです。あなたの実の兄と、遠いご親戚の方ですが、高橋道場と相談してうちで保護することにしています。今後あなたのことが公になると、悪いことをしようとする輩が出かねないとの判断です」


なんと。そこまでするやつらがいるのか・・・俺なんかよりよっぽどよく考えていてくれていたのか。


「なるほど。本来は私が気付かないといけない事だったのかもしれませんが、兄や親戚が良いのであれば私に否定はできません。むしろお願いします」


「多比良さん、今回の異世界交流では、少なからず謝金を支払いたいという話がある。これは相談なんだが、その資金をここと道場に流してはどうかと思うんだ」と高遠さんが言った。


「多比良さん、この話は受けるべきよ。お金が掛かることなんだもの。日本でのあなたの協力者は多い方がいいわ」


徳済さんはそう言うけど、確かに一理ある。それに・・・


「この話って、うちの嫁が計画していたりする?」


「高橋道場は多比良八重さんのお考えで動いているとのことです。あなたのご親族の保護を行う事は、楠木イネコ様と相談して決めています。多比良八重さんと楠木イネコ様はお知合いなので、相談なさったのかもしれません。資金提供のお話はこちらの異世界日本人会幹部のお考えです」


やはりそうか。


「解りました。ところで、異世界交流の謝金って、いち早くこちらに人を送る事の見返りってこと?」


「そうだ。三角系からは重工系のエンジニアを連れて来て、ラメヒー王国からの発注でロングバレル用の鋼材サンプルを運び込んでいる。今のところ謝金は受け取っていないが、圧力が凄い。どうせ待っていても人は入ってくる。高く売れるうちに売っておいた方がいい」


「病院からは医師を連れて来ているわ。こちらも今は父がオーナーの病院の医師だけだけど、圧力が凄いのはうちも一緒」


「そっか。あ、俺も古巣にお願いして測量お願いした。今後、異世界交流が始まったら築城もお願いするかも。こっちも謝金は断ったけど。今後はどうなるか分らない」


「なあ、多比良さん、今後はある程度円を稼いでおいた方がいいと思う。日本で動くこともあるだろうし。資金が無いと困る時もあると思うんだ。今、三角系の銀行で円と魔力の交換レートの研究も始めている。多比良さんが望むなら、うちで口座を作ることもできる」


円と交換するのはストーンではなく魔力なんだな。それは置いておいて・・・


「分った。ある程度お金は稼ごう。口座の件は三角さんにお願いしようかな。判子も何も無いけどね。ただ、円はラメヒー王国も欲しいはずだ。ここにも配慮した方がいいと思う」


その辺りの謝金って税金はどうなるのだろう。まさか、宗教法人を利用して・・・まあ、離散家族の救済は慈善事業なんだろうけど。深く考えるのはよそう。


「そうだな。人を数名入れる話は通しているとの認識だが、これ以上の人をラメヒー王国に入れる場合、当然あちらにも話を通す必要があるだろう・・・・それからな、多比良さん、圧力が大きいという話をしたんだけど、実は、軍需産業方面からの圧も大きい。今は全てシャットアウトしているけど、どうする?」と高遠さんが言った。


来たな軍需産業。異世界にモノが売れても儲かるし、売れなくても魔道技術を取り入れることができるから、彼らが異世界に入るメリットはとてつもなく大きい。


「軍需産業は、ひとまず俺たちで判断できることじゃない。国のトップで決めることじゃないかな。今は全部シャットアウトしておいた方が無難だと思う」


「そうだな。分った。軍需産業は何とか待って貰う。私もこの世界に異世界の兵器を入れて、めちゃめちゃにしたくないしね」


高遠さんの言うことはもっともだ。また、その逆も然り。魔道兵器を第2世界に入れるのも憚られる。


マイ軽空母を近代化改修しようと考えたことはあったけど。


だけど、少し、思い出すことがある。イセに艦載機を売ってしまった。アレは異世界の兵器とまでは言えないけど、概念的なものはそうだろう。


そして、おそらくあれは戦争に使われる。あの未亡人達の怨嗟の念と覚悟は忘れられない。

俺は、いくらコミュ症とはいえ、それくらいは感じ取っていた。それが解った上で、売ってしまった。


マ国には勝ってもらいたい。


心のどこかでそういう思いがあったのは否めない。

俺のあの行動くらいで戦局が変わるなんて、思い上がりかもしれないけど。


ちょっとだけしんみりしてしまった。


その後2,3点打ち合わせをして、今日は解散した。

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