第73話 日本人総会後日談と新興貴族暗躍中 7月上旬

<<三角会>>


「何とか商売も軌道に乗りそうだ。やったな!」


「ああ、ケイヒン伯とのパイプがありがたい。あれで一気に進んだからな」


「酒造の方は王国からの催促が激しくて困る。ブランデーの試作品だけでも急いで出したい」


「それは仕方がない。相手はパトロンだからな。ケイヒンとの関係を強めつつ、今度はマ国との貿易を狙うぞ」


「それが、マ国との関係を持ってそうな人に心当たりが」


「何だと! でかした。それは別途協議だな。それから、まあ、野球の話なんだが・・・」


「まさかここに来て野球ができるなんて、練習試合、勝ちにいきましょう」


「いや、相手はバルバロ家チームとケイヒン家チームでな、それぞれ女子が混ざっている。少し手加減しましょうや」


「仕方がありませんな。それにしても、バルバロ家は米食で畳好きで風呂好きとか。あそこの屋敷もいい感じですなぁ」


「ええ。私も毎日通っていますよ。もうあそこに住みたいくらいです。日本を感じます」


「ああ、工務店の連中が『庭』と称して色々と好き勝手に改造しているらしいからな。これに乗じて色々と要望を出してみるか?」


「いや、ですが、競技場の他、宴会場や大浴場も造っています。宴会場は日本人のお抱え料理人が作る晩ご飯が人気で予約が一杯ですし、その宴会場もすでに拡張の工事に入っています。それから、極秘情報ですが、庭には隠しゴルフ場も建設されるとか」


「隠しゴルフ場? なんだそれは」


「はい。なんでも、普通は日本庭園や通路、公園、神社に見えて、実はゴルフ場としての利用が出来るとか。それから、弓道場もスイッチひとつでゴルフの打ちっぱなしになるギミックを考案中とのことです」


「何? いや、その前に、日本庭園と神社も出来るのか。それは、ほんとにバルバロ家の庭か?」


「安くする代わりに何をしてもいい契約らしくて、工務店の奴ら張り切っています」


「そうかぁ。こちらはこのまま暖かく見守っておこう」


<<工務店>>


「バルバロ家の工事は難航しているようだな」


「ええ、野球場の外野ヤードの大きさが決まりません。身体強化によりホームランの飛距離が延びまくりで。それから、神社の位置を何処にするか、宮司と協議中ですが、何分、初めてのことで。後は湧き水周りを日本庭園にする案ですが、ゴルフ場の併設が出来ないか難しい判断に迫られています。それからサーキット場のテストパイロット不足と反重力魔石不足が深刻です。後は、バルバロ邸の横にぼろアパートがあって邪魔です」


「それは大変だな。応援を向かわせよう」


<<冒険者ギルド>>

カラン!カララン!


「あ、あの~。ちょっといいでしょうか」


「何だ? テメェら。」


「あの、僕たち、その、この間の戦争で、お父さんとお母さんが帰ってこなくて。でも、ここに来れば、仕事が出来るって聞いたんです! お願いです。僕と、妹を雇ってください!!」


「おう、坊や達、あまり勘違いするなよ? まずはなぁ、あそこの受付に行きな。このテーブルはなぁ、ギルドじゃねぇ」


「あ、そうなんですね。済みません」


「分かりゃいい。パーティ組みたきゃ相談に来な。悪いようにはせんぜ?」


「あのねぇ。貴方たち? あんまり新人さんを怖がらせたら駄目ですよ? さあ、君たち? 冒険者ギルドのルールをレクチャーしてあげるから、こっちへいらっしゃい」


(あ~楽しいわぁ。わたし、凄く生き生きしてる。この子達、可愛いし。絶対死なせないから。私が最高のコーディネートをしてあげる! でも、そろそろ新人の数がベテランより多くなって、ちょっとバランスが悪いわね。まあ、多比良さんには相談したけど、私は私で本格的に動きますか。まずは、雑用のお仕事とか? 討伐系以外の仕事探しね)


<<針子連合>>


「切子は多比良さんが良きに計らってくれましたよ」


「ふがふが」


「はいはい。仰せのままでいきますよ」


「ふがふが」


「ええ? 悪い予感がする? はい。気を付けておきますよ。姉御」


<<診療所>>


「美容プロデュースの方、すさまじいほどの反響です。紹介状と施術の要請と思われる手紙が沢山です。我々ではどうしようもありません」


「別に順番なんて、あなた達は何も考えなくていいわよ。でも、個人的なお願いは全て断ること。いいわね?」


「でも、この方、ラメヒー王家の方ですよ? いいんですか?」


「え? ああ、軍務卿ね? 私の情報によると、『じらす』が正解。このままでいいわ」


「は、はあ」


「そえよりも、美容プロデュースに新しいラインナップが加わるかもしれないわ」


「徳済さん。それは一体」


「今はまだ秘密。でも、生物魔術の方ではないから安心して。これから、針子連合と工務店に相談しなきゃ。ああ、この辺を集中的に担当するセクターが必要かもね。まあ、今度相談してみようかしら」


<<商工会>>


「もう、あなた方は商工会でいいのでは? 入っても損は何もないですよ?」


「うう、でも、何か負けた気が」


「どうでもいいじゃない、綾子ぉ」


「多比良さんでさえ工務店に入ってますよ?」


「うぐぐ。分かったわよ。私達、これから商工会よ!」


「まいど!」


<<シングルマザーの会>>


「私は今月時計を3つもゲットしたのよ? ちょろいちょろい。でも、だんだん売値が下がってきたのよね」


「そろそろ売る物も無くなったわよね。補助をあげて貰おうよ。儲かってきたんでしょ。他の所がさぁ」


「まあ、私がね、もうすぐこの国の貴族を落とすわよ。そうしたら、あいつらに吠え面をかかせてあげるわ」


「ガンバ! で、今月の配分はどうする?」


「そうね。メリハリは必要よね」


「そういえば楠木さん? あんたは0ストーンでしょ。何もしていないじゃない。多比良さん落としに行ったのに、トイレに隠れていたんでしょ? 信じらんない。あの不細工は私達で落とすわよ」


「多比良さんの件はごめん。邪魔が入ったの。でも、補助無しでは生活できないわ」


「魔力があんでしょ魔力がぁ! 魔力を売りなさい!」


「でも、物価も高いし」


「お金が無いなら、仕事をすればいいじゃない!」


「それは嫌よ。何でよ! 何で私がなにかしなくちゃいけないの?」


「!!?!!?」


<<マンガ研究会>>


「あ、あれが本物。すごい、すごいわ! 凄い才能。うずく、うずくわぁ」


「ね、聞いた? あのおじさん、マ国の大使館と知り合いなんですって」


「なんですとー。私、見たことあんのよ。あそこの大使様。もの凄い美形とスタイル。何故か軍服。そして角!」


「ふふふふふ。湧いてきましたワ」


「次はそこですのね。角の人を途中で男体化しましょう。合体ですわ」


「そういえば、男性アイドルプロデュースの方はどうなったのよ」


「ああ、アレ? 超うまくいっているわよ。というかマンガは趣味だからね。本業はあっち。今、多比良さんとこの工務店が野球場造ってるからさぁ、そこでコンサート、開くわよ! それとさぁ~こういうのは飽きさせてはいけない。みんなぁ、好みの男性のナンパ、まかせたぁ~! ヤリに来てくれるツバメアイドルプロジェクト! がんがん行くよぉ~」


「「「「お~~~~~~~~!!」」」


◇◇◇

<<ラメヒー王国、とある新興貴族の暗躍>>


「キャタピラー子爵! 大変です!」


「どうした?」


「『神聖グィネヴィア帝国にある古代遺跡に眠る財宝を我がラメヒー王国に運ぶ事業』の件ですが、輸送中の船が、アルケロンの大群に襲われて沈没したそうです」


「なんだと!?」


「しかし、沈没した海域が運良く浅い箇所で、引き上げることが可能です。引き上げる費用は、3億ストーンです」


「ぐ、もうこの件で貴族通貨は発行出来んぞ。いったいどうすれば。そうだ! 極楽蛇の養殖事業はどうなっておる。今月から1億ストーン入るのだろう?」


「はっ。今月分の1億ストーンはすでに入金済です。神聖帝国のプビット男爵通貨ですが」


「そうか、それならば、極楽蛇の養殖事業を3倍にせよ。そうすれば3億ストーンなど1ヶ月の稼ぎに過ぎん」


「そうですね。流石です。では、そのように」


「待て、ワックスガー準男爵から新しい情報が入った。貴族にふさわしいシステムだ。今回、日本からもたらされた、超強力な集金システム、カピパラ講というらしい」


「それは、どういったシステムで?」


「ぐふふ。これは凄い情報だぞ? まずはな、子を・・・そして、親に・・ふふふふ。誰も損しない。みんな儲かる。そして、より高貴な身分の物が一番儲かる素晴らしいシステムなのだ。これならいける」


「すばらしい。早速指示しましょう」


新興貴族の暗躍は続く。

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