第76話 土砂剛史はトカゲが苦手だ

 ティーデとヒセラを探さないと!!

 自慢の可愛い弟と妹だ。


 だが、ニールスにいが俺を止めてきたんだ。


「クーン、ティーデとヒセラは僕達が探そう。それよりワンチャンスのパーティーメンバーが、この場にクーンとヤーナだけなのが気になる。探しに行った方がいい。」


 成程そうだけど!

「クーン、ここは雲外蒼天のパーティーを信じましょう。フロリーナがここに来ていないのが気になるわ。それにマースまでいない。セバスチャンはフロリーナの所にいる可能性があるけれど、3人共ここに向かうはずなのに、居ないというのがどういう事か一寸は考えて?」


 ヤーナの言う事は分かっているが弟と妹が気になるじゃないか!


「じゃあなクーン、ティーデとヒセラは私達に任せて!」

 ノールチェさんがそんな事を言って去ってしまった。

 そうそう、王子と王女はこの間にニールスにい達に何か言って、すぐに離れたが何を言っていたのだろう。


 仕方がない、戻って確認をしよう。だがこのトカゲ・・・・ドラゴンだったか、俺はこの目がどうにも苦手なんだよな。

 それにどうしてか分からんがこいつ等と戦った時は、繊細な攻撃が出来ないんだよな!スキルでごり押し?みたいな。

 何故か考えての攻撃ができない。

 結果的にはこうして無力化させているからいいよな。


 クーン=土砂剛史。

 幼少よりどうしてもトカゲが苦手だった。

 何故か?


 それは剛史が幼稚園の頃まで話は遡るが、この頃はトカゲやカエル、昆虫等を見つけては捕まえて、虫かごに入れて家に持ち帰っていた。

 当然両親は嫌がり、大抵夕方には外に戻して逃がしていた。


 そんなある日、剛史に悲劇が訪れた。


 いつもの如く虫を捕まえては喜んでいた剛史。

 この時たまたま尾が虹色に輝く綺麗なトカゲを見つけ、捕まえた。

 此処までであればよくある事なのだが、この時たまたま尻尾を掴んでしまったのだ。

 そしてそのまま尻尾を摘まみ上げトカゲを確認する。


 この時トカゲは驚いたのか本能なのか、何とトカゲの身体が落下したのだ。そして何故か目が合った気がする。


 驚いた剛史だが、この時手にしていた何かが動いたので見ると、まだ剛史はトカゲのしっぽを摘まんでいた事に気が付いた。

 トカゲの自切なのだが、幼稚園児の剛史に理解できるはずもなく、手に残った尻尾を呆然と見つめていたが、下を見ると、尻尾のないトカゲが逃げていく所だった。

 もう一度手を見る。

 尻尾が動く・・・・

 この時剛史の中でどう感じたのか今となっては不明だが、この日以来剛史はトカゲやカエルを捕まえたり、昆虫採取を一切しなくなった。


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


 幼少時の出来事がトラウマとなり、今現在剛史=クーンもトカゲが苦手だった。


 そしてそのトカゲもといドラゴンが目の前に!


「クーンと言ったかな、そろそろいいだろうか。」

 王子様が俺の名を!

「えっとなんだった?」


 あかん、さっきまでため口だったから、咄嗟に敬語が出ない!だがそれがよかったようだ。


「ドラゴンは僕とサスキアが相手をしよう。クーンはヤーナとパーティーメンバーに合流しに向かった方がいい。」


「流石は兄さま。ではヤーナ、また後でね。」


「ではサスキア王女、これで失礼しますわ。」

 何故かヤーナは俺の手を取り天馬の所へ。

「さ、天馬に乗っていきましょ。ドラゴンが何か言っていたけれど、ディーデリック

 王子に任せておけば問題ないわ。」


 おい一寸待て!


 ヤーナが俺の意見を聞く前に、天馬で行ってしまった。


 くっ!追いかけるか!その前に一応声を掛けておくか!


「そのドラゴン、いまいち分からんが何やら探している人がいるって言うからさ、よかったら対応してやってくれ!」


「分かっている。これは王族の務めだからね、さあクーンも自身の務めを果たすがいい。」


「そういう事ですのでこちらの事は気にせずに。では兄さま、早速。」


 そのままドラゴンと何か話している。く!無視されたのか俺は?

 まあいい!「天ちゃん頼むぞ!」


【同族を探せば早かろう。早く背に乗れ。行くぞ!】


 何だか今日は忙しいぜ!何でこうもあっち行きこっち行き来しないと駄目なんだ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る