第43話 銀色との邂逅
僕と
先ほどまで一緒にいたはずの星野
「よく旧新宿で1杯50円の何が入ってるか分からない酒を飲むんだけどさあ、それの2倍は美味しいよ、”天祭 純米大吟醸”」
「たったの2倍ですか……」
値段は全然違うんですけどね、と
惜しいのは毒耐性が効いてるみたいで全然酔えないことだった。どうにか毒耐性だけオフにしたいところだが、僕にはまだそこまでの魔力操作は出来ない。
おちょこの中の酒が尽きると、隣に座っている背の高い女性が注いでくれた。軽く見上げないと目線が合わないぐらいに大きい。身長2メートル以上はありそうだ。
「ありがとう、
「はい、
「なんで? おっきくて可愛いと思うよ、
「かわっ……!?」
照れて両手で顔を隠してしまった
ちょっと固いけどかなり美味いな。何の肉なんだろう?
酒のツマミにちょうど良い味付けだが、パクパクと食べているのが僕と黒い鎧をまとった騎士風の男の2人だけというのが気になった。
「
「おぉ、分かってるじゃないのぉ、上杉ぃ。ここのダンジョンのボスを拘束して生かしている話は知ってるかぁ?」
「ちょっと待ってくださいね。心の準備するので」
黒騎士、
世の中には知らなければ幸せということもあるのだ。
「ダンジョンボスの肉を切り取って調理したものよぉ。モンスター料理にハマってるんだがぁ、誰も食べてくれないんだよなぁ」
「それはそうだよ!」
まあしかし、知らずに食べたらまあまあイケるのは事実だった。
僕と
僕は目の前にいる紙袋を雑に被った女性に声をかけた。
「えーと、
「はい、
拒否されてしまった。
それにしても個性的な格好だった。黒騎士は一目見れば装備カードであることが分かるので気にならないが、ただの紙袋を被っている理由はなんだろう。聞いてしまおう。
「えーと、無理に話さなくても良いんですけど、なんで紙袋被ってるんですか?」
「うふふ、
面白い冗談だった。もちろん、本当にお尋ね者ならこんな雑な格好で誤魔化すはずもあるまい。
変わり者のハンターには慣れている。
その後も僕たちは試合を観戦しながら楽しく飲んで過ごした。
◇◇◇
宴もたけなわ。
「だから~、私は~、私たちの存在意義を~証明したいだけなんですよお」
「はいはい、存在意義をね、大事だからね」
酔っ払って既に何を言っているのか分からない
「おぉ、次の試合、俺だわぁ。ちょっくら行ってくるわぁ」
「
「
「構いませんよ、
試合を止める? 勧誘? 何のことだろう?
黒騎士がコロッセオの中央に降り立った。
対戦相手は頭部が禿げ上がった巨漢の男だ。
「ハガネ、対戦相手のあの男はね、この辺では有名なヤクザの戦闘員なんです。暴力で弱者を虐げながら、裏社会に紛れて隠れ、罪を償おうともしない。世の中には、死んでよい人間というのもいるのですよ」
僕はそれを聞くと同時に駆け出していた。
何をするつもりなのか分かったからだ。
試合開始のゴングが鳴る、次の瞬間には黒騎士のハルバードが巨漢の男に迫る、決して生存を許さぬ致死の刃が対戦相手を断ち切ろうとし、そして、
僕はハルバードを片腕で受け止めていた。
巨漢の男は腰が抜けたのか、無傷だが地面にへたり込んでいる。
ハルバードが腕の半ばまで埋まり、鮮血が吹き出るが、僕は気にしない。
「あんた何考えてんだ! 今殺す気だったろう!!」
「……残念だぜぇ、上杉ぃ。せめて俺の手で葬ってやる」
黒騎士の殺気が次は僕に向いたのが分かった。
【名前】精神切削
【ランク】A
【カテゴリ】アクティブスキル・切削
【効果】
対象のデッキのランダムな1枚を10分間効果無効にする。
発動と同時、デッキ内のたった1枚のカード「一瞬の保存」が使用不可能になる。
対手のビルドに制限をかけるデバフ・アクティブスキル!
「上杉ぃ、デッキ1枚らしいじゃねえかぁ。これで詰みだなぁ、ウゴッッッ!?」
僕は思いっきり
漆黒の鎧がボコリと凹み、黒騎士に多大なダメージを与える。
僕の戦闘力はあくまで大量の永続カードが支えており、ユニークカード「一瞬の保存」を封じたところで、戦闘には全く影響は無い。
さらに拳に魔力を込める。
追撃の右拳が黒騎士に迫り、しかし、それは横から出てきた、か細い女の手によって受け止められる。
「うふふ、そこまでです」
互いに高密度の魔力が込められた肉体同士の接触。
衝撃の烈風が渦巻き、女が被っていた紙袋が上空に舞った。
突風によって長い銀髪がぶわりとなびく。
僕はその女を知っていた。
全日本ハンター連盟から特徴は共有されている。
ランクSハンター。
災厄の銀色。
地獄を神に祈った女。
「
「はい、
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