第36話 魔力操作訓練
無事に姫香の親御さんと挨拶を済ませた僕は、次の課題に取り掛かっていた。
第2の課題は、シュクモの呪い解除の訓練である。
僕、姫香、シュクモの3人はランクCダンジョンに来ていた。
レゾンデートルのハンター殺しの話を聞いた後だとダンジョンに潜るのは若干躊躇われるが、どのみち誰かがダンジョンのモンスターを掃討しなければ、ダンジョン崩壊が起きてしまうのだ。ハンターとしての役目を全うするのなら、ダンジョンに潜らなくてはいけない。
それでもなるべく姫香とシュクモを危険にはさらしたくない。若手を大事にするのはハン連の方針とも合致する。
僕らはダンジョンゲートが街中にあって人目につきやすい場所を融通してもらっていた。人目が多ければ不審者がダンジョンゲートに紛れ込む可能性も低いはずだ。
逃走ルートも充分に確認した上で、僕らはダンジョン攻略に勤しんでいた。
アックスクラブが振り下ろしてきた斧を、僕は片手で軽く受け止める。
僕のステータスは既にランクBの最上位クラスにまで上昇している。今更ランクCモンスターからダメージを受けることはあり得ない。
僕が受け止めているうちに、シュクモがそっと呪いの両手でアックスクラブに触れた。
本来であればシュクモのユニークカード「七つの呪い」による極大の呪いは、ランクCモンスターを一撃で昏倒させる威力を持つスキルだ。しかし、シュクモに触れられたあともアックスクラブは暴れ続け、およそ9秒後に倒れ伏した。
――呪いの効果が抑えられている。
バステトが言うには、特定のパッシブスキルカードに魔力を流さないことでパッシブスキルの効果を完全に抑えることが出来るという。
僕に言わせれば魔力とは血流のように身体を循環しているもので、そもそも特定のカードに魔力を流さないという理屈がさっぱり理解できない。これに関してはプロフェッサーも「全く分からないのである」と匙を投げていた。
僕とプロフェッサーが苦戦する一方で、姫香とシュクモは魔力の断絶をコントロールしつつあった。ハンターとしての経験が浅いほうが、柔軟に吸収できるのかもしれない。
「シュクモちゃん、だんだん呪いが抑えられるようになってきたね」
「はい、ハガネ様。
「はいはい! 私の教えが良かったんだなって思います!」
「それはどうかな……?」
ちなみに姫香は魔力の断絶を数分で習得していた。本人曰く「えいってやると止まると思います」とのことだが、僕には全然分からない。パーティを組んだ初日から思っていたが、姫香にはハンターとしての天性の才能がある。
――流石はコウさんの娘だな。
僕は姫香と昔馴染だった件を、姫香には言い出せずにいる。さほど重要な情報では無い上に、姫香が覚えていても覚えていなくてもどんな行動を取るか予測がつかないので何だか言いにくい。「やっぱり運命の人だったんです!」なんて目を煌めかせて暴走しかねない。危険物カテゴリの少女の人となりをもう少し知るまでは、いたずらに刺激しないほうが良いだろう。
ともかく、シュクモが呪いから解放されつつあるのは実に喜ばしいことだった。
魔力操作の件は全日本ハンター連盟にも情報共有しているので、同じように苦しんでいるハンターがいればきっと救われるはずだ。
◇◇◇
最後のアックスクラブが、シュクモに触れられてからおよそ43秒ほどで息絶えた。
数時間も経たないうちに、シュクモの魔力操作がどんどん上手くなっている。
アックスクラブは光の粒子となって散っていくと、通常カード「アックスクラブの斧術」とテンポラリーカード「睡眠耐性」をドロップした。
【名前】アックスクラブの斧術
【ランク】C
【カテゴリ】パッシブスキル・ステータスアップ
【効果】
攻撃力が1000アップする。
【名前】睡眠耐性
【ランク】C
【カテゴリ】パッシブスキル・テンポラリー・耐性
【効果】
睡眠の効果時間を5%減少する。
※テンポラリーカードはデッキ枚数上限の影響を受けない。
※テンポラリーカードはダンジョン脱出時に消失する。
「ハイオークの○○」や「アックスクラブの○○」のようなモンスター固有カードは、1種類のモンスターにつき複数種類がドロップする。同ランク同名カードの効果は累積しないため、別種類のカードを揃えていく必要はあるが、それでも充分なデッキ枚数上限さえあればモンスターを討伐することで順当にステータスアップしていくことが可能だ。
それに対してテンポラリーカードは圧倒的に種類が少なく、僕のステータスは頭打ちしつつあった。
僕のステータスの根幹となっているのは、各種ステータスアップカードと「累積する百歩」「聖なる光の祝福」だ。
【名前】攻撃力アップ
【ランク】B
【カテゴリ】パッシブスキル・永続・ステータスアップ
【効果】
攻撃力が1000アップする。
【名前】累積する百歩
【ランク】C
【カテゴリ】パッシブスキル・永続・ステータスアップ
【効果】
ランクC以下の同ランク同名カードの効果は、1種類につき100枚まで累積する。
この効果はパッシブスキルにのみ適用される。
【名前】聖なる光の祝福
【ランク】B
【カテゴリ】パッシブスキル・永続
【効果】
ステータスアップカテゴリのパッシブスキルの効果が100%増加する。
「累積する百歩」はランクC以下のカードにしか適用されないため、ランクBステータスアップカードは1枚しかステータスに加算されていない。「聖なる光の祝福」が「累積する百歩」に適用されて200枚まで累積しているため、現状の各ステータスは60000を超えていた。
【名前】上杉ハガネ
【ランク】B
【攻撃力】66020
【防御力】66020
【速度】66020
【感覚】66020
【魔力】66005
【幸運】66000
【デッキ】1/1
ステータスカードの他に、手持ちの主要な永続カードを並べるとこんな感じになる。
・使用回数回復、討伐時使用回数回復、HP常時回復、MP常時回復などの回復カード
・麻痺耐性、呪い耐性、睡眠耐性、毒耐性、魅了耐性、石化耐性、攻撃力低下耐性などの耐性カード
・短剣、バステトの腰布などの装備カード
・ファイアボール、ウィンドカッターなどの下級攻撃アクティブスキルカード
回復や耐性が豊富なため
この辺りはバステトの試練やランクBダンジョンのドロップに期待するしかないだろう。
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