第28話 神の試練
「人間、にゃかにゃかやるのです。マジ面白いのです」
――いつの間に現れた?
褐色の肌、頭には猫の耳を生やし、フリフリと猫の尻尾を揺らしている少女がそこにいた。
白いワンピースドレスを着ていて、胸元には様々な宝石を着飾っている。
可愛らしい外見をしているが、僕たちは警戒を解けずにいた。
魔力の波長が、明らかに人間のそれではない!
「人語を解するモンスター……」
プロフェッサーがポツリと呟いた。
「モンスターではにゃいのです! 神にゃのです!
――神? このネコ人間、神様を名乗ったのか?
神はダンジョンという試練を、そしてカードという祝福を人類に与えた。と言われている。
僕は今この瞬間まで、神というのは天から見守ってくれている、なにか絶対的な存在を想像していた。神の存在を真剣に考えたことはなく、まあもしかしたらいるのかもな、ぐらいには無頓着だった。
目の前にいる存在が神だと言うのなら、神は人格を持ち、個性を持ち、名前を持つ、人間に近い存在なのだろうか。
だとしたら、神とは、ダンジョンとは、カードとは一体何なのだろう。
神は、一体何の目的があって僕たちに試練と祝福を与えている?
情報が足りない。皆に「僕が会話を進める」とアイコンタクトを取ってから、バステトに話しかける。
「それじゃあ、畏敬を込めてバーちゃんと呼ばせてもらいます」
「婆ちゃん!? ふ、不敬にゃのです! せめてテトちゃんにするのです!」
テトちゃんなら良いんだ……。
それはともかく、この自称神様は日本語を理解しているし、きちんとしたコミュニケーションが取れることも今のやり取りから想像できた。そのうえ、敵意も感じない。
「人間、にゃんだか面白い気配をしているのです」
バステトは興味深そうに僕のほうをジーっと見つめてくる。
「人間、神に祈った結果、本来死ぬべき場面でご都合主義的に生き残った経験はにゃいですか?
「デートだと思って喫茶店に入ったら宗教勧誘された経験ならありますけど」
「それは可哀相にゃのです……」
神様に同情されてしまった。
「んー? ヒュ■■■や■■■ドあたりが介入してるのにゃら、もっと露骨に気配が残るはずにゃのです。気のせいかもしれにゃいのです」
まあいいのです、とバステトは興味を無くしたようだった。
「人間、もう行って良いのです。
やはりバステトはこちらと敵対する意思は無いみたいだった。
これはチャンスだ。もし本当に目の前にいるネコ人間が神であるならば、聞くべきことを聞いておかなくてはならない。
「テトちゃん、ちょっと聞きたいことがあるんですけど」
言葉を発した瞬間に後悔した。
「……人間? 神に問うたのですね?」
バステトの瞳がネコ科動物のように見開かれ、抑えられていた魔力が溢れ出す。
口は三日月のように裂け、邪悪な笑みを浮かべている。
「神から祝福を得ようとするのにゃら、試練を受けにゃければならないのです」
僕の頬を冷や汗が伝い、落ちていく。
瞬きした瞬間に自分は殺されてしまうのではないかと錯覚するほど、圧倒的な存在を前にした本能的恐怖。
同時に、プロフェッサーに異変が起こった。目から血涙を流し、ぶくぶくと泡を吹いて倒れたのだ。
「プロフェッサー! テトちゃん、プロフェッサーに何をした!」
「え?
「え?」
何もしてない?
バステトはプロフェッサーのほうをちらりと見ると、呆れた声で言った。
「にゃるほど、過去視ですか。
完全に自爆だった。プロフェッサー、命知らずにもほどがある男である。
「はー、人間、いつもにゃにかあると神のせいにしがちにゃのです。マジさげぽよにゃのです。しかし、
バステトはため息をつきながらそう言うと、指先に
【名前】バステトの子
【ランク】A
【カテゴリ】召喚
【効果】
バステトの子を召喚する。
ケンタウロスのような、人間の上半身に馬の下半身を併せ持った、双刀のモンスターが召喚される。
先ほど相手にしたヘビ人間たちとはまるで存在強度が違う、圧倒的な魔力を持つモンスター。
ランクAモンスター。否、召喚モンスターは、召喚者が込めた魔力によって強さが変動する!
「これも神の試練にゃのです。人間、頑張れにゃのです」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます