第65話 発覚

結局、モスタブさんがリストを持ってくることはなかった為、優しさとして商業ギルドで働いていた人を対象に面接会をおこなった。


商業ギルドで働いていた人全てが甘い汁を吸っていたわけではなく、良識を持った人も少なからずいるからだ。


そういった人には、国主導の商業ギルドで働いてもらうことにした。


商業ギルドがなくなれば、実際困ることはたくさんある。

しかし、商業ギルドはどの国にも属していないので、国王命令でこの支部の人事に口を出すことは難しい。

出来るのは支部を置かないようにすることくらいだけど、それをすると完全に商業ギルドと関係を断つことになる。


なので、今の商業ギルドは無いものとして、新しく商業ギルドを立ち上げた。

名前と運営内容が同じだけで、既存の商業ギルドとは何の繋がりもない、独立した商業ギルドだ。


業務に慣れている人が一定数欲しいので、潰れるだろうモスタブさんがトップの商業ギルドから人材を引き抜く。

強制はせず、あくまで募集していることを広めて、面接会をするから希望する人は集まるようにしただけだ。


結果として十分な人数は確保出来たので、城で働いていた人を何人かこっちに回せば問題なく機能し始めるだろう。


国として1番問題視していた商業ギルドとの問題が一区切りついてから数日後、僕は部屋にオボロを呼んで目の前に座らせていた。


「僕がなんでオボロを呼んだか心当たりはある?」


「……あるのじゃ」

僕のただならぬ空気を察したのか、オボロは項垂れたまま正直に答える。


「オボロの口から話してくれる?」


「主に嘘をついていたのじゃ。主の友に主のような並外れた力はないのじゃ」


「なんでそんな嘘を吐いたの?」


「主は友を助けたらここにいる必要がなくなるのじゃ。別れたくないのじゃ」


「そっか。おいで」

僕は膝を叩いてオボロにこっち来て乗るように言う。


「すまなかったのじゃ」


「これはオボロを悩ませてしまった僕のせいでもあるよ。元の世界に帰るかどうかは別として、みんなをあのままにはしておけないから、力を貸してくれるよね?」

膝の上でオボロを撫でながら、協力を頼む。


「もう主にそんな顔をさせないのじゃ」


「頼りにしているからね。フェレスさんに話をしに行く前にオボロの知ってることを教えてね」


オボロからフェレスさんと王都へ行っていた時のことを聞き、今後どうするつもりだったのかも聞く。


「つまり、隷属自体はフェレスさんが協力すればいつでも解呪出来るわけだね」


「そうなのじゃ」


「でも、流石にクラスメイトにそんなやり方をとりたくはないね。国王を隷属してるなら、呪法の核を壊させればいいんじゃない?」

クラスメイトの指を一人一人切り落としていくみたいなことはやりたくない。

最終手段だ。


「核は別の者が持っているようなのじゃ。怪しまれたら主人の友を人質に取られるかも知れないのじゃ」


「事を大きくしてこの国を危険にしたくもないし、どうやって助けるかは綿密に作戦を練ろうか」


オボロから話を聞いた僕はフェレスさんの研究室に向かう。


「オボロからフェレスさんが僕に隠れて画策していたことは聞きました。何か弁明することはありますか?」


「そうですか。バレてしまいましたか。私を処刑しますか?」

一応何かあっても対応出来るようにシトリーに付いてきてもらったけど、フェレスさんに逃げようとする素振りはない。


「そんなことはしません。オボロがフェレスさんを唆したということも聞いています。元々フェレスさんに忠誠心がないこともわかってます。オボロの方がフェレスさんにとって魅力的な提案をしたというだけです」


「寛大なお心に感謝します。やはりマオ様は私のことをよくわかっていらっしゃる」


「これまでのことは一旦水に流して、クラスメイトを助けるのに協力してもらいます」


「協力させていただきます」


「フェレスさんのことを僕はわかっているようでわかっていなかったと反省しました。もしまた僕を騙したら魔導書は燃やします。2度目はないです。他国にある魔導書も盗んで燃やし、フェレスさんの魔力も盗んで魔法を使えなくします」


「わかりました。裏切ることはありませんので、それで構いません」


「ありがとう。今まで通り頼みを聞いてくれたら魔導書以外の物であればあげるから、これからも頼りにしているね。魔導書もフェレスさんに渡しても問題ないと僕が判断出来ればちゃんと渡すから」


「かしこまりました。今まで以上に尽力致します」


「頼むね」


「失礼を承知でお聞きします。何故私がマオ様を騙していると気付いたのでしょうか?」


「ユメの願いを叶えるドリームってスキルでクラスのみんなの様子を壁に映してもらったんだ。苦しんでいる姿を見たくはなかったけど、助ける為に知らないといけないから。そしたら、確かに隷属されているのかみんな城の騎士みたいな人に逆らえない様子だったけど、おかしな力を持っているようには見えなかった。城まで行ったフェレスさんとオボロがそれに気付かないわけはないから、何か他の理由があるのだろうとオボロを呼んで本当のことを聞いたんだよ」


「そうでしたか。マオ様を王国に近付けないよう注意を払っていましたが、ユメ殿のことは失念しておりました」


「それじゃあ1秒でも早くみんなを助けたいから、どうやったら安全に助けることが出来るか作戦を立てようか」

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