第12話 整理整頓

コロネさんに倉庫に連れてこられた。


「しばらくの間この倉庫には人が入ってこないように言ってきたから、勝手に誰かが入ってくることはないわ」


「ありがとうございます。どこに出せばいいですか?結構量があります」


「そこの台の上にお願い。乗らないやつがあるなら、適当に床でいいわ」


「わかりました」

僕は言われた台にとりあえず武器関係から取り出す事にする。

ほとんどが棍棒とか価値のなさそうなものだけど、身に覚えのない高そうな剣や盾、鎧などもある。


「……ちょっと待って」


「はい、なんですか?」

10個程出したところで待ったを掛けられたので、収納から出すのを止める。

まだ樹海の魔物の素材と思われるモノは出してないんだけど……。


「その剣をよく見せてくれる?」

コロネさんが1つの剣を指差して言った。

あの高そうな装飾のされた剣は身に覚えのないやつだ。

樹海でも、森でもこんな剣を盗んだ記憶はない。


「どうぞ」

コロネさんは高そうな剣をじっくりと見る。


「実物を見たことがないから間違っているかもしれないけど、これって王国が持ってるはずの宝剣じゃない?」


「僕にはわかりません。それは身に覚えのないものです」


「……これは一旦分けておくわね。後でギルマスに確認してもらいましょう」


「お任せします」

僕には宝剣が何かさえわかっていない。

もちろん価値はわからない。

なので基本的に判断は任せるしかない。


僕は収納を使えるようにしたいので、価値がないなら処分して、価値のあるものはいくらでもいいから買い取って欲しい。


僕は引き続き物を出していく。


「とりあえず装備品と思われるものはこれだけです。家から溢れていた分ですけど……」

家の中に何があるかは今はわからないので、外にゴミのように溢れているやつだけだ。


「……とりあえず、この辺りのものにほとんど価値はないわ。薪にしかならないもの」

コロネさんは僕が出す物を死んだ魚のような目で分類した後、棍棒などの魔物が持っていただろう武器には価値がないと言った。


「それなら処分してもらいたいです。処分料が必要ならさっきの大金貨から引いておいて貰えると助かります」


「処分ね。他にも買い取る物を出してくれているから費用はいらないわ。それよりもこっちね……」

コロネさんの視線の先には、身の覚えのない装備品の数々が置かれている。

どれも実用品という感じではない。

宝石が嵌め込まれていたりしている。


「それらも身に覚えのないやつです」

僕は答える。


「これも一旦保留にしましょう」


「わかりました。次は魔物の物と思われる素材を出します」

僕は鱗や羽、ツノやキバなどを取り出していく。

一部の素材は腐って異臭を出している。


「……なんの魔物の素材なの?」

既に疲れきっているコロネさんに聞かれる。

コロネさんに見せるにしてもギルマスのいる時にすれば良かったと後悔している。


「魔物の名前はわかりません。そのツノは多分紫色をしたオーガのやつです。この羽はとても大きな鳥のやつだったと思います。その鱗は赤いドラゴンのやつかな……」

僕は覚えている限りで説明する。


「私から査定しましょうか?と言っておいて申し訳ないけど、私には価値がわからない物ばかりだわ。ごめんなさい」

コロネさんが落ち込み、謝る。


樹海の魔物の素材は手に入るような代物ではないのだろうと推測する。


「わからないものは仕方ないです。僕としては収納が使えるようになれば急いで査定してもらう必要はないので、わからない物はギルマスに任せましょう」


「そう言ってくれると助かるわ。悪いのだけれど、査定ではなくマオさんの収納の片付けを手伝うということにしてくれるかしら?わかる範囲での査定はさせてもらうわ」


「ありがとうございます。一応溢れていた物は次で最後なんですけど、困らせる事になると思うので先に謝っておきます。すみません」


僕はコロネさんに一方的に謝ってからたくさんの色のついた球を取り出していく。


「…………。」

コロネさんは何も言わない。言葉を失っているようだ。


「取り出しはしましたが、さすがにこれを買い取ってもらうのはいけない気がするので、収納が片付いたら持って帰ります」

僕はコロネさんの表情から、これはこのまま置いていったらマズいと判断して持って帰ることにした。

収納の中身が無くなれば、仕舞うことが出来るはずだ。


「そ、そうね。そうしてもらえると助かるわ。これで溢れていた物は全部なの?」


「はい。でも家の中の物を取り出せないんです」

収納を使おうとするとイメージされる家の周りはキレイになっている。

でも家の中には入らせないという感じに、家の周りには黒い霧が立ち込めている。


「おかしいわね。何かまだ溢れているんじゃないかしら?」

コロネさんに言われて、家の周りを探すイメージをする。


やっぱり何もないなぁ……。と思っていたけど、何を盗んだっけ?と考えていたら、家の周りの黒い霧があの黒いドラゴンが纏っていた邪気というやつに見えてきた。


僕は霧を取り出すイメージをしてから、しまったと思う。

あんなよくわからない邪気なんてものをこんなところで取り出してよかったのか……?と後悔したけど、既に邪気は外に出してしまった。


「きゃっ!」

「あわわわわわ……」

コロネさんが悲鳴を上げて、僕があわあわしている間に、黒いモヤが生きているかのように僕の周りをぐるぐると回った後、コートの形で僕に纏わりついた。


「ご主人様から離れるワン!」

「大丈夫かにゃ!?」

「助けるのじゃ!」


みんなが僕に纏わりついた邪気を剥がそうとするけど、邪気はみんなの手や口をすり抜ける。


「……みんな、大丈夫だよ。苦しくなったりしてないし、害はなさそうだよ。なんだか僕を守ろうとしているような気もするし……」

冷静になってから、みんなに話す。

纏わりついてはいるけど、苦しかったり、気持ち悪かったりしない。

動きが阻害されている感じもないし、むしろ安心感がある。

ドラゴンより僕の体が明らかに小さいからか、凝縮され、モヤではなく漆黒のコートにしか見えない。


「本当かにゃ?」

「無理してないワン?」

「不甲斐ないのじゃ」


「助けようとしてくれてありがとね」

僕はみんなを撫でて褒める。


「あの、マオさん本当に大丈夫なんですか?」

コロネさんが心配そうに聞いてくる。


「大丈夫みたいです。それから、収納が家の中の物まで確認出来るようになりました」

確認したら、収納でイメージされるのが、倉庫のような家から、倉庫の中のようになっていた。

中はパンパンに物が詰め込まれて僅かな隙間も無さそうだけど……


「……それはよかったです」

コロネさんは邪気のことは見なかった事にしたい様子だ。


「それじゃあ、残りも出してしまいます」

残っていたのは、男物の服と女物の服に女の子の服……どれも高そうだ。

装飾が凝っていたり、ドレスだったり色々ある。


それから絵画やツボなどの骨董品に宝石類が多数に高そうな調度品の数々。

さらに疑うほどの貨幣も出てきた。

貨幣は見たことのない絵が書かれている物がほとんどで、金貨と大金貨と白金貨?がたくさんある。


「……この貨幣は王国が発行したものですね。価値は帝国のものと同じです」

コロネさんが教えてくれる。


だいぶおかしな状況だけど、コロネさんはあまり驚いていないように見える。

さっきまでに比べれば理解出来るものが出てきたからか、ギルマスに任せるつもりだからのどちらかが要因だろう。


ただ、これが王国の貨幣だと分かったことで、1つ心当たりがあることを思い出した。


それが本当なら、先日ギルマスが言っていたように、僕達異世界人のスキルは異常な程にチート仕様のようだ。

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