第5話 冒険者ギルド
僕はとりあえず宿屋を探す。
目についた宿屋に入って一泊の金額を確認することにする。
「すみません、これだけしかないんですが何泊出来ますか?」
僕は銀色のコインを2枚見せて聞く。
1枚は食費としてとっておく。
「1泊大銅貨5枚だから、銀貨2枚なら1食付きで4泊だ」
宿屋の人が助かる説明の仕方をしてくれた。
この銀色のコインは銀貨というものらしく、大銅貨10枚で銀貨1枚分の価値があるらしい。
「それじゃあとりあえず2泊お願いします」
僕は銀貨1枚分泊まることにする。
「……すまないが、ウチはテイマーはお断りしている。テイマーだと偽って魔物を連れ込んで、実はテイムされてなくて、魔物が暴れて部屋を使えない状態にされることがあるからな。泊まるならその魔物と動物はどこか別のところに置いてきてくれ」
クロ達と一緒には泊まれないらしい。
「……わかりました。お手数お掛けしました」
僕はこの宿を諦めることにする。
他の宿をまわったけど、泊まれる所は見つからなかった。
魔物と一緒でも泊まれる宿もあったけど、高すぎて無理だった。
部屋代が高くて、しかも前金で部屋の修理代を預ける必要があった。
仕方ない、路地裏とかで野宿しよう。
樹海の中で野宿していたんだから、街の中で野宿するなんてそれに比べればツラくなんてないはずだ。
泊まる所が決まった?僕は冒険者ギルドを探して入る。
僕は空いている受付へと行く。
他の受付は列が出来ているのに、そこだけ空いている。
内容によってどこに並ぶのか決まっているのだろうけど、登録するのにどこに並べばいいのかわからないので、とりあえず空いている所で聞くことにする。
「おう、坊主。何用だ?」
受付のおじさんに聞かれる。
だいぶフランクだなと思ったけど、こういうものかな。
ペチン!
そう思っていたらおじさんが隣の受付のお姉さんに叩かれた。
「ギルマス!ちゃんとやらないならそこをどいてください。ただでさえギルマスの顔が怖くて誰も並ばないのに、せっかく並んでくれた人まで帰らせる気ですか?」
このおじさんはギルマスだったようだ。
となりのお姉さんが言う通り、確かに顔は怖い部類かもしれない。
ただ、ギルドのトップらしい人が受付の女の人に叩かれた事の方が衝撃だ。
「あ、ああ。すまない。冒険者ギルドへようこそ。ご用件は何ですか?」
ギルマスに不気味な笑顔で言われる。
「無理しなくて大丈夫です。最初の口調でお願いします。……今の方が怖いです」
最初に言っておかないとずっとあの笑顔で対応されそうだ。
「……そうか。それで用件はなんだ?」
ギルマスは少し凹んだ様子で元の口調に戻した。
「冒険者の登録にきました」
「登録だな。説明は必要か?」
「お願いします。ただ、セブンソードの人達がこの街まで乗せてくれて、冒険者の話を教えてくれたので、大体は知ってます」
「そうか。それじゃあ大事な所だけ説明するから、わからないところがあったら言ってくれ。―――――――――。こんな感じだ。わかったか?」
ギルマスから冒険者について、守らないといけない規約などを中心に教えてもらう。
「わかりました。登録をお願いします」
「まずはこの魔道具に手を置け」
僕は言われた通り水晶のような魔道具に手を置く。
「なるほど、名前はマオで嘘は言ってないな。天職は盗賊と。レベルは1か……。これからがんばれ」
僕は天職が盗賊だとバレてビクッとしたけど、ギルマスの対応は特に変わらない。
「盗賊が天職でも何も思わないんですか?」
僕は恐る恐る聞く。
「坊主はもしかして王国出身か?」
「あ、はい」
この世界で初めは王国にいたので、間違ってはいない。
「帝国ではあんなクソみたいな国のように天職で人を判断しないから安心しろ。本当に盗賊なら話は別だが、天職が盗賊だろうと、悪さをしたわけじゃねえ。そもそも捕まえた盗賊の天職が盗賊ばかりというわけでもないからな!」
ギルマスの言葉に僕は安心するけど、あの王国にいるはずのクラスのみんなのことが心配になる。
「わかりました」
「その魔物と動物はやけに坊主に懐いているが、坊主はテイマーなのか?」
「そうです。この子達は僕がテイムしました」
「それならそいつらも登録する為に調べる必要があるな。順番にさっきの魔道具に触れさせてくれ」
「はい」
「みんな、順番に触るんだよ」
僕はみんなに言う。
クロとシロにもジェスチャーで意味は伝わったようだ。
みんなが魔道具の前に一列に並ぶ。
「驚くほどにちゃんと言うことを聞くようだな」
ギルマスが感心したように言う。
ユメが魔道具に触った所、ギルマスの顔が豹変する。
「……おい、坊主。奥の部屋に行くぞ」
僕は半ば強制的に奥にあった部屋に連れて行かれる。
もしかしてユメも魔物だったのだろうか?
僕としては魔物だろうと動物だろうとどっちでもいいのだけれど、ギルマスとしては問題なのかな?
「どうかしたんですか?」
僕はギルマスに聞く。
「どうかしたじゃない!」
ギルマスが大声を出す。
「もしかしてユメは魔物だったりするんですか?」
「ユメは魔物にゃ。知らなかったかにゃ?」
ギルマスに聞いたつもりだったけど、ユメが答えた。
「魔物かどうかが問題じゃない」
ギルマスが言うけど、それじゃあ何が問題なんだろうか?
可愛すぎるのが問題かな……なんて。
「何が問題なんですか?」
「本気で言っているのか?その魔物の種族を知らないのか?」
ギルマスは僕の発言が信じられないらしい。
「ドリーム・キャットですよね?珍しい種族だったりするんですか?」
あの樹海の中で、ユメと同じような猫は何匹か見かけたけどなぁ。
「A級指定魔物だということはわかっているのか?」
「A級ってなんですか?」
「魔物のランクだ。1番下のスライムがEランク、そこからDCBと上がっていってAランクは上から2番目だ。その上に一応Sランクがあるが、そんなのが現れたら街なんて一瞬で簡単に滅びる」
「ユメはそんなに凄かったんだね。こんなに可愛いのに」
「ユメはスゴイにゃよ。もっと頼っていいにゃ」
「頼りにしてるよ」
「坊主、もしかして会話してるのか?」
ギルマスに聞かれる。
「魔物と話なんて出来ませんよ。こんなこと考えているのかなぁとか思っているだけです」
流石に猫と話せますというのは痛い人だ。
「そうか。坊主は本当にレベル1なのか?」
「本当ですよ」
「……スキルはなんだ?」
「盗むってスキルが使えます。レベルは3です」
「……意味がわからんな。まあ、暴れる様子もないし、ドリーム・キャットはおとなしい部類の魔物だから登録はしておいてやる。次の登録をするから魔道具のある受付に戻るぞ」
「あ、はい」
僕達は受付へと戻る。
ユメには驚いたけど、登録してくれたからいっか。
A級とか言われてもユメはユメだよね。
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