第21話 素顔を隠したパーティー
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「グガッッ……グル……」
奴は呻き声を上げながら、死んでいった。
口からは唾液でもない白い液体を噴出していたし、何より血が首から噴き出していた。返り血を浴びた俺は、一層強くなったように感じた。
「すまねぇ、フォルス。俺らが倒れている間に」
タイガたちは無事に起き上がっていた。
気絶でよかった。もしこれが致命傷を負っていて、二度と立ち上がれない……とかだったら俺も苦しかったと思う。
「マーナガルムを討伐したのはどこですか?」
見ず知らずの人たちは俺に話しかけてきた。
「俺たち、ノーマッドです」
こういうのは討伐した人間を聞いているんじゃない、討伐したパーティーを聞いているんだ。これはデリーシャ時代に何度も聞かれ、何度も「デリーシャ」と答えた。
デリーシャ時代には、手柄を横取りしようとする者が何組もいた。討伐してもいないのに「俺たちがやりました」と嘘をつく者が多かった。それがまかり通ってしまえば、本当にモンスターを討伐したパーティーは不憫。俺たちはそうならないように、複数のパーティーで討伐に行く時は公式の認定士を同行させた。
今回もそうなるかと恐れていたが、他のパーティーは既に逃げたかで、周りに残っていたのは恐れて腰が抜けた者のみだった。それでも結構な人数がいるのだが、流石に堂々と手柄を横取りする程肝が座っている人間はいなかった。
見ず知らずの人たちは、公式の認定士であった。俺が本当に討伐したかどうか調査されるだが、1人だけ返り血を浴びている上、討伐に使用した剣も持っていたため、事なく済んだ。
「認めます、上級モンスター・マーナガルムは……このノーマッドが討伐しました」
認定士が大声でそう発すると、周りにいた討伐者たちは一斉に拍手した。盛り上げるように声を上げる者もいた。さっきまで怖気付いていたのが嘘のように、皆俺たちの討伐を祝福してくれた。
「ありがとう……フォルス」
「お前のおかげだよ」
「それより靴は?」
メンバーも皆祝福してくれる。彼らは「役に立てなかった」と悔やんでいるが、俺からすると充分にサポートしてくれていた。上から目線になってしまうが、最高に楽しめた。
この中でホークだけが、靴の心配をしてくれた。ありがとう、興奮のし過ぎで脱ぎ捨ててしまったようだ。走っている時は気がつかなかったが、草を裸足で踏みつけたために、足の裏は傷だらけであった。逆に何だか情けない。
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『新生討伐パーティー・ノーマッド、大活躍』
『マーナガルムを倒したのは、謎多きパーティー』
『素顔を隠したパーティーに迫る』
マーナガルムを討伐した次の日の新聞の見出しをまとめた。ほぼ全て、ノーマッドに関することが記されていた。これにはメンバーも大満足、皆舞い上がっていた。
討伐支援金なるものはまだ都市から貰えていないが、新聞会からの取材費で結構な額を貰えた。まだ家も変えていないため空き家での生活だが、いつかは家も買えそうだ。
「家を買うか? それとも、パーティーでも開くか? パーティーだけにな」
「いいや無駄遣いはするな、でもたまには美味しい物をたらふく食いたい」
「だめだ、金は貯めておこう」
少し先の未来を想像するだけで、楽しくなれるな。ただ1人、ホークを除いては。彼だけは貯金の方向で進めようとしていた。差別される側の人間、いつこのことが世の中にバレるか分からないから、今の間は貯金しておこう……と考えているらしい。
差別……というワードが出た瞬間、皆口を閉じた。やはりそれには勝てないんだろう。結局は半分貯金して、半分各々自由に使っていいことになった。
「じゃあ、俺は帰る。また会ったらその時は、討伐を手伝う」
俺は早々に別れを告げ、外に出た。
彼らは一瞬何を言われたかピンと来てなかったが、脳内でゆっくり理解して……俺を追いかけるように外に出た。
「帰るってどこにだよ」
タイガが声を荒らげながらも質問をする。
「俺はある村を立て直さなきゃいけない。その一環でシャリア……ノーマッドを有名にした。俺はもう用はない。また会えるさ」とだけ伝えた。
「このままノーマッドに居たら、もっと金を稼げるぞ」
「辞める気なのか?」
他のメンバーも次々に意見を上げていくが、俺はもう決めたこと。辞める訳では無いが、一旦別れる必要がある。それも全ては村を立て直すため。何度も言うが、辞めるんじゃない。また会ったら、その時は討伐を手伝う。でも、俺が居なくても十分な気はする。
「それなら、また会えたらな。達者でな」
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俺は久々にウェール村に帰った。
村長もティナも、他の人たちも無事にしていた。俺がノーマッドに入ったことを知っている彼らは喜び、まるで英雄が帰ってきたかのような対応をした。
ティナとは久しぶりに会う。
彼女に話しかけようとしたところで、村長に話しかけられた。
「お前は何故ノコノコと帰ってきている?」
いや、俺はもう既にシャリア……ノーマッドを立て直した。討伐支援金ももう少しで入るだろうし、取材費で彼らにとっては十分な蓄えになった。力の話なら、俺は彼らに技を大量に教えた。下級モンスターなら簡単に、上級モンスターなら団結すれば倒せるように。
「いいや、お前は不合格だ」
村長は俺の持ってきた取材金の一部を受け取らずに、そう言い放った。
これはもしや、もう一度行ってこい……ということか? 行ってくるのは全然構わない。モンスターを討伐して金を稼げるし、何よりも討伐する度に自身の強さを感じられる。生きている……って実感も得られる。狂ったような思考だと思われるかもしれないが。
「不合格だからといって追い出したりはせん。しかし真実は教えん。真の合格はいつか理解することになる。その時に身をもって知るがいい」
村長の謎の言葉により、俺はこの村で生活することになった。
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