第108話動物編・裏その9
結論から話そう。俺は動物霊龍を除霊することに成功した。その後、風香から動物霊を除霊したという連絡を受けた。
動物霊に関わる問題は終わった。ように見えた。しかし、もう1匹いると思われる動物霊の姿が無かった。そして占い師の言葉を思い出す。
『犬』
残りの1匹は犬だったのかもしれない。しかしそれは一切現れなかった。それが1番の疑問なのだ。
「ししょー。何そんなに難しい顔してるんですか?」
目の前には風香がいつもの格好で座っている。そして『メガパフェ』というモノを食べていた。もちろん奢りで。
「いやなに。動物霊の言葉が気になっていたんだよ。もう一度聞くけど、風香。お前が確認した動物霊は2匹だったんだな?」
「そーですよー。あの日に確認したのは2匹です。蛇と龍だったとは。しっかもまさか龍の方に関してはあの龍牙さんだったなんて……」
風香が遠い目をしている。どうやらあの少女は風香の同級生だったらしい。
「あの人はおっかないですよー。私は絶対に近づきたくないタイプです!」
「そうか? 普通に可愛らしい子じゃないか」
「それは師匠からすれば私たちぐらいの子はみんな可愛く見えるんですよ」
そういうものなのかね。そんなことを考えながら俺はコーヒーを飲んだ。
「おっかないのは取り憑かれていたからじゃないのか? ほら、動物霊に取り憑かれると性格とか変わるだろ?」
「そうですけどー……龍はなんでしたっけ……?」
「龍はあれだ。人間関係に変化がある。とか、お金にがめつくなる。とか、最初はうまくいくけど最後は失敗するとかな」
「それ性格関係ないじゃないですかー!」
「むう。じゃあ蛇だ。蛇に取り憑かれた人はだらしなくなる。三角関係などの問題に巻き込まれる。近づいてくる人もいれば、離れる人もいるとか」
そして、俺はもう1匹の動物霊に関することを思い浮かべた。
犬に取り憑かれた人は利口になる。頭の回転が良くなる。すぐ喧嘩腰になり怒鳴ることが増えるという。
もしも今後動物霊犬が現れるのだとしたら、この辺りから探ってみるのが1番だ。
「それより怨霊のことですよ。初代怨霊から分離した存在は3匹って言ってたらしいですね」
風香は動物霊の話を終わらせて次の話題へと変えた。分離した怨霊は3匹と龍は言っていた。あの龍がとっさに嘘をついたとは考えにくい。
「そのうち2匹ならもう目撃してる。俺に宣戦布告した怨霊。それから音夜斎賀に取り憑いた怨霊。あと1匹がわからないけどな」
しかしその怨霊については、すでに調査を依頼している。実は取り憑かれた人間の名前だけならすでにわかっていた。
「どう思います? 今回の動物霊が怨霊に対して動いていたのだとすれば」
「ああ、そろそろだ。間違いなく怨霊は動き出す」
怨霊が動き出すということは富士見姫蓮が狙われるということ。そうすれば、魁斗も狙われる。
「風香。魁斗には次の対策は取っているのか?」
「ええもちろん! ポルターガイストなんてどうです? 定番でしょー」
ポルターガイストか。騒霊が引き起こす霊障のことだ。確かにそれなら大した被害は出ないはずだ。
「それがすんだら魁斗には次の課題を与えてくれ。それから富士見姫蓮とも接触するんだ」
「ほう姫蓮ちゃんですか?」
怨霊の狙いは富士見姫蓮だ。彼女とはいずれ接触しなければならない。だから早めに手を打つべきだ。
「詳しい詳細は後日に話す。とにかく気を引き締めるぞ。最終決戦は近い」
「なーにカッコつけちゃってんですかー。まーいいですけどねー」
風香は『メガパフェ』を食べ終えて満足そうだ。
「それにしても師匠。なんだか少し変わりました?」
風香が突然変なことを言う。
「ん? 何がだ? 俺はいつもの通り! 怪奇谷東吾だぞ!」
「いやぁなんというか……気合の入れ方が違うというか……前よりも除霊師の仕事が嫌そうじゃないなーって」
俺はその言葉を聞いてつい笑ってしまった。そうか、俺は除霊師の仕事が嫌じゃなくなったのかもしれないな。
「そりゃあ当たり前だろ? この仕事は俺にしか出来ないことだからな!」
俺は胸を張った。まだ自信を持って言えることではないが、それでも俺はやり続ける。
これは俺の、怪奇谷東吾の本当の姿なのだから。
動物編・裏 完
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