ニャルさま、アメリカ人らしいアメリカ人と邂逅するの巻

 その昔、私がオンラインゲームで遊んでいた時のことです。

 私の所属する組織の縄張りシマに侵入者があり、うちの組織の若いの(レベルの低いプレイヤー)を襲っていました。そこへ私は颯爽と現れ、その侵入者プレイヤーをやっつけます。一見、ヒーローのような行動です。

 しかし、その後、当然とばかりに、さらなる行動に出ます。私は完膚なきまでに相手をぶちのめしました。逃げ出したそのプレイヤーを追いかけ、身ぐるみ全て奪う勢いで執拗に幾度となく追撃を繰り返します。ボッコボコにしました。


 やがて、そのプレイヤーから連絡がありました。英語です。

「私があなたの母親と昨晩ベッドで過ごしたことを恨んでいるのですか?」

 というような内容でした。


 はて、これはどうしたことか。

 次の瞬間には笑いが込み上げてきました。このプレイヤーはアメリカ人だったのです。

 アメリカ人といえばマザーファッカー。やたら母親を犯すことをネタや煽りに使う種族なのです。そんな偏見がありましたが、その通りの行動を取られました。こんな愉快なことがあるでしょうか。


 彼にどんな返事をしたのかは覚えていませんが、そんな愉快な気持ちを前面に出し、ウキウキな気持ちを伝えたと思います。

 それは彼にとって不本意なものだったのでしょう。


 サーバー全体のチャットに、彼が書き込んでいました。そして、私を名指しします。


「ニャルさまは彼の母親を私が昨晩喜ばしたことが気に入らないのです」


 それを読んで、私はニコニコします。


「私の母はおばあさんですよ」


 そう書きました。すると、すぐに返事が書き込まれます。


「私のテクニックが彼女を若返らせました。そして、一晩のうちに何度も昇天したのです」


 そんな感じのことを書いていました。

 果たして、アメリカ人はこの文面を読んで煽られた、悔しい、と感じるのでしょうか。母を侮辱されたと怒りが燃え上がるのものなのでしょうか。

 私はというと、その文面を読んで爆笑していました。ワハハ、ワハハハです。


 あまりに楽しかったので、自組織内のチャットにて、めちゃくちゃアメリカ人っぽいプレイヤーに絡まれてると書いたところ、仕切り屋の女子に「そんなことをここに書き込むな」と注意を促されました。

 いやいや、全体チャットで私はそれを言われてるんだぜ。そう思ったものの、その場では自重することにします。


 その後、私はそのアメリカ人を好きになったので、定期的に個人メールを送るようになりました。

「元気ですか」「調子はどうですか」「そちらはいかがですか」

 そんな内容です。返事は来ませんでした。

 そして、いつしか、ブロックされていました。とさ。

 煽られたのはこちらなのになあ。

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