29:New Semester

夏休みという期間で人生で初めての恋人を作った。充実した夏休みだったと言っていいだろう。そして、今日から新学期。また学校が始まる。


「海斗くん、起きて」

そんな声で目を覚ます。

「ん……」

「起きてー、朝だよー。今日から、学校だよ」

「ふぁ〜、おはよ……」

「うん、おはよう」

「朝ごはん出来てるよ」

「え?作ってくれたのか?」

「うん」

そういえば、ランニングをすっぽかしてしまった。まあ、明日からでもいいだろう。

「ほら、早くリビング来てね」


相変わらず朝からしっかりとした物を作ってもらった。更には、弁当まで作ってくれた。俺の彼女はなんて完璧なんだろうか。


朝食を終え、一緒に登校する。

「二人で登校するの、なんか新鮮だね」

「そうだな、そもそも誰かと一緒に学校に行くってことは初めてかもしれない」

「そうなの?」

「ああ」

「別に友達がいなかったって訳ではないが、いつもは一人で学校に行ってたな」

「わたしも、誰かと一緒に登校するのは久しぶりかも」

「友達いなかったのか?」

「友達ならいたよ。でも中学校は風紀委員やってたりしたから、登校する時間がみんなより早かったから、それで必然的に一人で登校してたかな」

「ああ、なるほどな」

そんな他愛のない話をしていると、マンションを出たところに、優依がいた。

「二人とも。おはよ〜」

「ああ、おはよう」

「おはよう、優依ちゃん」

「そういえば、二人同じ所に住んでるんだっけ」

「うん」

同じ部屋に住んでるってことは知らない様だな。特に理由はないが、黙っておこう。

「夏休みどうだった?」

「まあまあかな」

「碧ちゃんは?」

「わたしは、楽しかったかな」

ニコリと微笑みながら俺の顔をみる。

優依は不思議そうな顔をしていた。それはそうだろう。と言うか、付き合ってることって言うべきなのか?別に言わなくてもいいか。


学校に着いた。生徒会委員同士と言うこともあって、一緒に登校してきても、あまり気にされない。が、会話してる時のお互いの名前の呼び方とかは、さすがに気にされているようだった。


そして、昼になり一緒に弁当を食べる。今まで購買だった奴が急に弁当持ってきて、女子と一緒に食べてたら、なんか周りがソワソワしていた。

すると、優依がやってきた。

「あれ、海斗お弁当なの?」

「ああ」

「どうして?」

「私が作ってあげたの」

ええ……言っちゃうの……

「そうなの?」

「うん、実は一緒に住んでて」

ええ……それも言っちゃうの……

「一緒に住んでるの!?」

「ああ、ちょっと色々あってな」

「あの、なんか恥ずかしいんで、これ以上言わないでもらえると助かるんですけど……」

と、小声で碧に伝える。

「あ、うん。わかった」

話のわかる彼女でよかった。


別に隠す必要も無いだろうが、なんとなく隠しておきたい。

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