水面の鏡よ 鏡よ 鏡さん3

「よっし! じゃあ霧の湖への誘導作戦、成功だべな! ……っとわわっ!」

 ガイの発言に喜んだのもつかの間、今度はシンとシンジまでもその足元を揺らめかせた。ギクリとして水面を見ると――

 そこにはやはり自分の姿ではないものが映っていた。だがしかし……

「ええっ、シンジ⁉」

「あ、こっちはシン⁉」

 双子は、水面に映った自分ではないものの姿を見て、思わず驚きが口をついた。そう、二人が見下ろした水面に映っていたのは、兄弟の姿だったのだ。それに気がついて、双子は顔を見合わせ思わずニヤリと笑っていた。

「もう一つの姿が、シンジ……だべか」

「僕のもう一つの姿が、シン、だって」

 身体は沈みかけているというのに、妙に面白くなって、双子は笑っていた。

「なるほどね、もう一つの姿って、こういうことかぁ」

「この姿を受け入れないと、地表に戻れないって言ってただべな」

 二人はそう言って、お互いに肩を震わせた。

「それなら、認める!」

「血を分けた兄弟だべからな!」

 双子がそう答えた途端だった。

 ドクン、と心臓が大きく脈打った感覚が走り抜け、思わずドキリとした。しかし次の瞬間、今度は急激に体が重くなった。それだけで済んだのなら、さして双子は慌てなかっただろう。しかし、体が重くなったと同時に、二人の体はずぶずぶと水の中に沈み始めたのだ。

「え、え、えええっ⁉」

「ど、どーなってるだ⁉ さっきまで足が付いていたはずおぶぶぶぶぶ」

 慌てふためく暇もなく、双子の体は霧の湖の中に沈み込み――終いにはその姿は跡形もなく消えてしまった。残るのは薄暗い森にゆらゆらと木々と瞬き出した一番星を映す水面だけとなった――。



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