時間制限付きの魔法3

彼らの反応はそれもそのはず、彼女たちの目の前に現れたのは、成人の見知らぬ男性が二人、その上二人ともその姿がほぼ裸であれば、当然の反応である。

「よかった、全裸で突っ込んできたら一発ぶん殴ろうかと思ってたよ」

唯一悲鳴をあげなかった女性は、薬屋のお姉さんである。パンツ姿の青年を見上げ、口の端を歪めてみせた。

「なんだ、思ってた以上にオトコマエじゃないか、双子さん」

「え……えええええ⁉︎」

「ふ、双子さんて、もしかして、このお二人、あの双子さんなんですか?」

思わず目をまん丸くしているヨウサの隣で、ようやくリタがそう問いかければ、あのほぼ真っ裸の二人の男性と、薬屋のお姉さんが頷いた。

「そうなんだべ、オラなんだけど」

「なんか、急に大きくなって、こんなことに……」

その言葉に落ち着いて二人を見れば、確かに双子の特徴と一致する。一人は赤髪に赤みがかったオレンジの瞳、そして何よりその訛った喋り方、この特徴は間違えるはずがない。シンである。もう片方を見れば、こちらもサラサラの青髪に青い瞳、やはりシンジである。しかしヨウサやガイが見慣れている双子と比べると、明らかに体格がおかしい。身長は明らかに大人のそれだし、顔つきも幼さがなく、むしろ凛々しささえ感じさせる。しかし慌てふためいているその表情と、その態度は大人っぽさが全くない。その様子だけは、確かに見慣れた双子であった。

「え、え、え、ちょっと、一体二人ともどーしちゃったの?」

「もー、びっくりしすぎて、ボク腰が抜けちゃったよ〜」

言いながらヨウサもガイも、驚いてひっくり返った体制からようやく立ち上がる。しかし驚いているのは彼女たちだけではない。当の本人もだ。

「いや、寧ろ僕たちの方が聞きたいよそれ」

口調はシンジだが声は大人びていて、ため息がちにうつむくと、青い髪がサラリとこぼれる。その様子はシンジと思わなければ、多少はイケメンに見えたことだろう。しかし中身はいつものシンジである。

「ホントだべ、一体これどうなってるだ? あの薬飲んだら急にこうなっただよ」

隣で困り果てた様子で薬屋に向き直るのはシンだ。こちらも髪はいつものボサボサぶりであるが、凛々しさが増して、鼻も少し高くなった青年姿。中身がシンだと知らなければ、そしてその訛りがなければ、少しばかりはイケメンに映った……かもしれない。

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