時間制限付きの魔法2

 その頃、ヨウサ達は薬屋に案内された一室でのんびりお茶を飲んでいた。日中まで降っていた雨は見事に上がり、今は夕方の生ぬるい風がそよそよと部屋に入ってくるばかり。簡素な部屋ではあったが、木製の机には色とりどりの花が描かれたテーブルクロスがかけられ、一輪の花がガラスの花瓶に生けられている。遠くで虫の鳴く声を聞きながら、お茶の香りを吸い込むヨウサとリタにとっては、優雅なティータイム、といったところである。

「薬屋さんだけあって、お茶も素敵ね。こんないい香りのお茶初めて!」

そう言って冷たいお茶をすするのはヨウサだ。その言葉に、向かいに座るリタも思わず微笑む。

「素敵な香りですね。これ、なんていうお茶なんですか?」

黒髪を揺らしながらリタが振り向くと、その視線の先には扉があり、その半開きの扉から半身だけ覗かせているそばかすのお姉さんが見えた。ガサガサと何やら衣類を畳んでいる薬屋のお姉さんは、視線だけ彼女に向けて答えた。

「ちょいと遠くから仕入れている果物の香りがつけてあるのさ。ベルガモットって言ってね。ここいらじゃ珍しい古代種の果実さ」

「美味しいです! 薬屋さんありがとう!」

ヨウサも身を乗り出すようにして声をかけると、うっすらと微笑んでお姉さんは答えた。

「気に入ってもらえたなら何よりさ。気分が晴れる効果もある。これから大事な一仕事だろ。リタさんも、元気出して欲しいしね」

その言葉に、思わず黒髪の少女は口元を綻ばせた。

「ところで、お姉さん何してるの〜?」

そう問いかけるのは、窓際で外を眺めていたガイだ。彼はといえばそのお茶は苦手なのか、話題のお茶には見向きもせず、一緒に出されていた果物片手に首を傾げていた。

「いや、あの双子さんの変装用の衣装をだな……」

しかしお姉さんの説明は続かなかった。直後バタバタと廊下を駆けてくる足音が近づいてきたと思ったら、突然その扉を押し開けた人物がいたのだ。

「大変だべさー!」

「一体どーなってるの⁉︎」

との言葉の直後、今度は女性陣(と少年一人)の悲鳴が響いた。

「きゃー!」

と、顔を覆うのはリタ。

「だ、誰よ、このお兄さんは〜⁉︎」

と、椅子を倒して立ち上がるのはヨウサ。

「わー、わー!」

と、ただただ叫び慌てふためいているのはガイだ。

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