遠い日の約束3

「無理もないかな……。完全に……冷酷に動いている感じがするもの……。いつもならあんな戦い方しないし、得意のあの術も使わないし……。操られている感じはやっぱりするの。クーフさんが……私に攻撃してくるなんて……そんなこと……」

 言いながらまた表情が暗くなるリタに、ヨウサははっと気がついて質問を変える。

「そ、そういえば、クーフさんって、本当はどういう人なんですか? それに、どこで出会ったのかなって、そういう話、聞きたいです」

 ヨウサの気遣いに気がついたのか、リタは表情をまた柔らかくして微笑んだ。そして思い出すように、空を見上げて話しだした。

「クーフさんと出会ったのは二年前……私の家に代々伝わる大事な秘石が盗まれてしまって、それで困っている私を、助けてくれることになって、そこから一緒に旅をしだしたの。どんな時も優しくて、年下の私のことも、見下さずに親切にしてくれて、それでいて、敵が現れると迷いなく戦ってくれて……。私、何度助けてもらったかわからない。時々、自分のことを顧みないことが心配になるけど、それくらい、人のことを大切にしてくれる優しい人なの。初めは、かっこいいな、助けてくれて素敵な人だなって思ってたけど、一緒に旅をするうちにどんどん好きになっていって……。だから、また最近になって、こうして一緒に旅ができることを、私すごく喜んでたの。クーフさんも、それを喜んでくれて、それだけで、私、ちょっと満足しちゃってたな……」

 うつむくリタの顔を覗き込むように、ヨウサが小声で尋ねた。

「片思いって、言ってましたけど……こ、告白とかしないんですか?」

 すると、ちらとはにかむような表情を見せ、黒髪の少女は小さく頷いた。

「それこそ、二年前に、出会ってすぐに伝えてた。旅はいつ終わるかわからなかったから。だけど、まだ私が幼いからって、答えてくれなかった。でも、あの人は断ることもしなかった。まだ可能性を残してくれたの。私が大きくなって、大人に近づいたとき、それでもまだ好きでいてくれるなら、その時に返事をしてくれるって。だから、振られたような振られてないような、そんな関係が、二年前の話」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る