不思議な薬屋さんの秘策4
翌朝――。まだ日が昇り始めたばかり、あたりには薄っすらと霧も出ているような涼しい時間だ。昼間の炎天下とは打って変わって、清々しいほどさらりとした朝の空気。まだ早朝にもかかわらず、四人の子どもたちは宿屋を跳び出していた。まだ朝も早いからか、街の通りには人通りも少なく、市場に向かう商人や、海に向かう漁師のような出立ちの人ばかりとすれ違った。
「なんだってこんなに朝早いのぉ〜?」
生あくびを噛み殺しながらぼやくのはガイだ。いつもの細目がすでに寝ているような表情で、めんどくさそうに歩いている。
「仕方ないじゃない? 薬屋のお姉さんが、朝イチで来いって言うんだもの」
そんなガイの前では、昨日と同じ花びらキャミソールをひらひらさせて、ヨウサが歩いている。その隣では、同じように大あくびしながら背伸びするシンがぼやいている。
「もー少し寝ていたかっただべな〜」
「まあまあ、朝食のサンドイッチ、宿屋の人からもらってきたから、薬屋さんに早く行って食べようよ」
双子はそんなやり取りをして、手に下げたバスケットを嬉しそうに覗き込んでいた。
「おはよーだべ〜!」
「薬屋のお姉さーん、来たよ〜!」
薬屋さんに到着するなり、双子が大声を上げて扉を開ける。すると、カウンター越しにお姉さんの姿は見えず、彼らに背を向けるように、黒髪の少女、リタが座っていた。
「おはよう、早く起きられたのね」
そう言って、リタが振り向いて微笑んだ。どうやら朝食後のようで、彼女の目の前のカウンター席には、グラスが一つ置かれていた。おそらく食後のお茶でも飲んでいたのだろう。昨日よりはだいぶ明るい表情に気がついて、ヨウサが微笑み返した。
「おはようございます! リタさんも昨日より元気そう。ちょっと安心したわ」
「ふふ、おかげさまで。クーフさんを助けるんだもの。私がメソメソしている暇はないと思って」
そう言って両手を握りしめる少女は、確かに昨日よりも元気そうだ。思わず双子も微笑んだ。
「おはよう、揃ったな」
声の方を見れば予想通り、あのオレンジの髪を右上に結い上げた、そばかすのお姉さんがカウンターの奥から現れた。それを見るなり、双子が口を開いた。
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