囚われの埃かぶり姫4
すると、そんなシンの声を聞いて、一気にフェイカーの顔色が曇った。
「あん……? なんだか聞き覚えのある声……いや、喋り方……」
シンの訛りに気がついて、慌ててヨウサがシンの口をふさぐ。
「(ダメよ、シンくんは黙ってて!)」
ヨウサはフェイカーに見えないよう、コソコソと慌てて耳打ちするが、当の本人は理由がわからず、まだ喋ろうとする。
「なんでだべ? オラなにもバレるようなことは……」
「いいから黙る!」
直後、ヨウサの平手打ちが容赦なくシンの顔面に激突、見事シンはノックアウトである。そんな二人のやり取りを隠すように、シンジは前に出て、フェイカーの興味の矛先を変えていた。
「それより、貴方はお城の人ですか? なんだかこの辺りでは見慣れない……そう、高貴なお方だなぁと思って!」
「コウキ……あ、身分が高そうって意味か! へへへっ、なんだ、アンタ、子どもにしちゃあ、いい目をしてるじゃねーか」
シンジのとっさの機転に、フェイカーは気を良くして嬉しそうに鼻をかく。しかし、ここでいつも余計なことを言うのがコイツである。
「そーかなぁ〜、どっちかって言うと、言葉遣い乱暴で、どこぞの不良かと……」
などとガイが思わず口走るが、
「ふんっ!」
全てを言う暇も与えず、ヨウサの平手打ちが再び炸裂するのだった。
そんなガイとヨウサのやり取りに気づかなかったフェイカーは、シンジの問いかけに得意げに答えていた。
「まあな。俺様、実はこの城の客なんだ。大臣のイオクロマに歓迎されているんだからな」
「イオクロマ……へぇ〜、大臣のお客様でしたか! どおりで!」
床に沈んでいるシンとガイは、そのままの状態でフェイカーの言葉を聞いていた。ここで下手に起き上がっては、ヨウサが怖い。二人はそのままの体制で目線を合わせていた。
「イオクロマって……たしか、女魔術師と一緒にいたヤツだべな?」
「大臣だったんだねぇ〜。これはやっぱり怪しいぞ〜」
床の二人がコソコソしている間にも、ヨウサがこの場をうまく誤魔化していた。
「大臣のお客様だなんて、お会いできて幸運でした! すいません、ただ献上品を持ってきただけなのに、こんな所でお時間取ってしまって。じゃ、じゃあ、私達はこれで……」
と、ヨウサは回れ後ろすると、床に倒れていたシンとガイの腕を掴んでそそくさとその場を立ち去っていくのだった……。
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