お城へ行きましょう3

「わかってるだべよ」

 後ろからもヨウサに釘を差され、シンは渋々フードを目深にかぶった。

 そんなやり取りをしている間に村を抜け、大きな街に出た。アーサガ王国のお城がある、城下町である。

 さすが町だけあって村よりも活気があり、人の行き来も多い。木で作られた建物が多いのは村と一緒だが雰囲気は一変、大きな建物がたくさん現れた。

 簡易な木の幹を組み合わせた建物が、商店街の大通りに面して出店として並ぶ。果物や食べ物屋さんが、次々シン達の目に飛び込んできた。時折紛れている服屋さんには、鮮やかな色が眩しい布の衣装が飾られて、観光客と思しき人達が楽しそうにそれを見ている。

 少し目線を上げれば、二階建て、三階建の大きな円柱の建物も見える。大きな大木をくり抜いたかのような建物は、大きな窓があり、中ではオシャレな服に身を包んだ人が食事をしている。

「そっか、アーサガ王国ってリゾート地なんだね。オシャレなお店がいっぱいあるわけだ」

 手押し車を引きながら、シンジが納得げに呟く。

「オラ達も買い物したかっただな〜」

「お金があればね〜」

 そうぼやくのは、シンとガイである。

 彼らはそんな人の多い大通りをひたすら真っすぐ進んでいった。町は大きいが大通りを真っ直ぐ進むだけならさして時間はかからない。程なくして、四人は城の城門付近にやってきた。

 四人は顔を上げ城壁を見上げた。さすが、お城となると建物の作りが違う。今までは木造の建物ばかりだったが、お城は石造りだ。頑丈そうな、厚みのある白い石の城壁、その奥には、やはり白い石造りのお城が見える。白いお城の壁には、鮮やかな緑色のツタが映える。ツタはまるで城壁の模様のように、美しく渦を巻いていた。

 シンは視線を上から戻して、周りを見回した。城壁に近づくに連れ、同じように大きな手押し車を押す人や、大きな荷物袋を持った人々が増えてきた。彼らも同じように献上品を持ってきたこの国の人々だ。

「それにしても、もう一月ひとつきになるな」

「ああ、ウコン様が病になってからだろ」

 シン達四人の前で、同じように献上品を持ってきた大人達が会話をしていた。思わず四人は聞き耳を立てる。

「これだけ献上品を持ってきているのに、治療は進んでいないのか?」

「それだけ病が重いってことじゃないか?」

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