第50話最後の襲撃




フロルから、明日のパーティが開催される日に襲撃があると念話で知らせが来た。

もう襲撃はないだろうと油断してしまう時間帯のようだ。

朝日が昇る1時間前に300人程の賊で決行されるらしい。


なのでそれ迄は襲われないので、俺は商業ギルドに取引きする為、隊長に断って出掛けることにした。

やはり帝都の商業ギルドだ。

4階建てで人の往来が多い、一等地にでかく建てられていた。

入る時に門番にギルド証を見せるよう言われ、共和国のギルド証を見せた。

それで納得したのかすんなりと通された。

中も広く右端の受付に相談窓口と書かれ、誰も居なかったので椅子に座り話掛けた。




「あの、ダークレイからきたハジメ・クレナイと言います」


「どうもわたしは、ミライと言います。よろしくお願いします」


「早速ですが、アパ山から出るクズ金属のオリハルコンを全部買取りたいと思ってます」


「クズ金属ですか、少ししか利益がでませんね・・・」


「そうですよね、言い値での取引きだとどうでしょう」


「少しお待ちをお願いします」


そう言ってうしろのデスクに座っている男に話し掛けている。

もどって来て、紙に書かれた金額を表示された。

ぼったくり価格でもOKする積もりだったので、案外安い価格だったので即OKをだした。


「前金が50000ドルカ、取引き時の量で計算して残りの金額になります」


俺は金貨5枚をテーブルに置き。


「よろしくお願いします」


「こちらこそ、お願いします」


そして契約書が交わされ、俺の手には契約書が握られた。

10日後に現物がここに用意される予定。


商業ギルドを出て、図書館に寄ったが帝国の人間でないと入ることもできず諦めるしかなかった。

冒険者ギルドに寄ると、早速依頼板を見たがこれはという依頼もなくギルドを後にした。

店舗をぶらぶらと見て歩き、武器屋にも入ったが前のような掘り出し物はなかった。


15時頃の酒場は、客の入りも半分程でカウンターに座りビールを頼んだ。

出てきたビールはぬるく、一口飲んだが変な味がして飲めた物ではなかった。

俺はフロルに念話で、話し込んでいる客の影に入り噂を流すよう指示。

フロルは影に入ると、その人物を好きなように操れる。

影から抜けるとその人物は操られた間のことは覚えていない。

流す噂は、俺の居る屋敷が賊によって襲われる計画があるという噂。

6人程に渡り噂を流した。

これで向こうが計画を止めるなら、それでも良かった。


屋敷に戻り、隊長に酒場の噂を知らせると5分間部屋の中を歩き回っていた。

そして部屋を出て行き、戻っては来なかった。

10分程、部屋で待ち続けたが諦め俺の部屋に入ると、明日の為に寝る事にした。



ガバッと起き上がると真夜中の1時過ぎであった。

あのビールが原因だ。変な物でも混じっていたのか不覚をとった。

隊長の所に向かったが、俺を見るなり言い放つ。


「今、呼ぼうと考えていた。よく来たな」


「準備はしたのですか」


「ああしたよ。冒険者を60人雇った。そしてここの伝手にも連絡済みだ」


「どうなるか不安ではないですか? 」


「そりゃー不安だが、やるだけのことはやった。結果次第だがな」


既にバレッタ様の影にフロルは潜んで守っている。


そして屋敷の外が騒がしくなった。

既に気配探知で状況は知っていた。

第1皇子の指示の元、軍の兵500人が出張っていて賊と戦っていた。

何人かが猿轡さるぐつわで口を塞がれ、拘束されている。

そして血の臭いがここまで漂ってきた。


隊長は、部屋を飛び出し急いで兵や冒険者の所へ向かい陣頭指揮を振るった。

1時間程で戦いは終わりを告げた。

屋敷に侵入されることもなく、冒険者はいいアルバイトができたと思う。


屋敷中の人が目を覚まして、外をうかがいながら身を寄せ合っていた。

ただバレッタ様だけがスヤスヤと寝ている。



俺は部屋に戻り、ゲートを開き我が家に戻ってきた。

早速スマホで確認すると、日本政府のホームページにメッセージがあった。

このスマホで見ると、ここの位置が特定される恐れがある。


ここから近い20キロ先のネットカフェを探知して、誰も居ないカメラの死角の個室にゲートを開いた。

個室に進入してパソコンを操作して、メッセージに暗証番号を打って開いた。

内容を見てまたがっかりしてしまう。

取り敢えず用意していたUSBメモリデーターを送って終了。

我が家に戻る。


そして24時間営業のスーパーへゲートで行き。

あわただしくカート2台の買い物をして例の屋敷に戻った。



何やら庭で隊長と偉い軍人らしい人が揉めているようだった。

どうやら第1皇子が面会を求めているようで、隊長も折れて1時間程で準備が出来るまで皇子が待つことになる。

広間で護衛の見守る中、2人は出会い簡単な挨拶が成された。

バレッタ様は機嫌がいいようで、2人して庭先へと歩き出し会話もはずんでいるようであった。

うしろの離れた位置には、常に護衛が見守っている。

俺が見下ろす窓から見えない位置で、楽しそうな笑い声が聞こえている。

暗かった空が、急に明るくなり朝日が見えてきた時には、終わったんだと感じた。

そしてあわただしく隊長は5人の兵を連れて、バレッタ様と同行して皇子が率いる兵と一緒に城へ向けて出発してしまった。

これは皇子の申し入れで、隊長も断れなかった。


・  ・  ・  ・  ・  ・


「して自衛隊の教育者は、合格ラインを突破したのか」


「どうにか全員合格です。これで自警団の手を借りなくても覚醒者の教育プログラムを実行できます」


「ご苦労、これで日本政府公認の覚醒者育成学校が開校できるな。絶対に魔王を倒してみせるぞ」


「先程連絡があったのですが、建屋の完成が1週間遅れるそうです。どうしましょう」


「何を考えているんだ仕方ない、1週間後に開校すると各方面と生徒達に連絡するように、それと建設の遅れはもう認めないと通達しておけ」


「はい、分かりました」



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