第22話満天の星空




俺はラジオのボリュームを上げて、家の全体のリフォームに取り掛かった。

本当は1から作り上げた方が楽なのだが、余り知らないじいちゃんが残した家だが今は俺の家なんだ。

だから残して頑丈な家にして、住み続けると心に決めていた。


まずここの土台の石から、しっかりした土台に変えなくてはいけない。

土台を変えるだけで、本当のしっかりした土台になるのか。

急にそんな疑問が浮かび上がった。魔物の戦いを見れば納得してしまう疑問だった。

戦い終わった跡は、でかい穴があっちこっちに開いている。

だから土台は魔法攻撃に耐える物にしないといけない。


そして両手を地面に付けて、想像するまま【創作】を発動してしまった。

ごっそりとMPを消費してしまった。数値は120も減っている。

そしてやってしまったと「チェッ」舌打ちをしてしまう。

我が家の下に巨大な石の台を想像のまま創作してしまった。

バカをやってしまったのであえて言わない事にする。

景観は変わっていないのでよしとするしかない。


ゴーレムに命令して障子やふすまを外へ運ばせる。

それが終わると天井を、俺の監視下で壊させる。


「そこはもっと丁寧に壊す。お前、サボるな」


配線類は年月が経っているのでチューゴによって回収済み。

思ったとおりホコリが大量に舞い上がり、辺りが見えないほどになっている。

少しおさまったので畳を外に運ばせ、今度は床はがしをさせてる。


ホコリだらけのゴーレムに池で体を洗えと命令。


土壁に触れ土魔法【創作】で元の土にもどしてゆく。

すっかり骨組みだけになった我が家を見渡してしまう。

風魔法【大風】でホコリだらけの室内を吹き飛ばしやる。

ようやくキレイになった頃に、びしょ濡れのゴーレムが帰ってきた。

仕方ないので風魔法の【大風】で乾かす。


今度は20体のゴーレムに主要な柱などを下部からゆっくりと持ち上げさせた。

俺の指示の元、バランスを見ながら土台の石から持ち上がってゆく。

そして俺が既に作り上げた土台へ移動、持ち方を上から掴むよう順番に持ち替える。

ゆっくり下ろす様に指示。全員が下ろし終わってやっと一息ついた。

ゴーレムをジャッキ代わりに使ったが本当に頼もしい奴らだ。


事前に作っておいた木材を柱に挟みこんでゆく。

この木材は植物魔法の掛かった物で、強度や魔法耐性と断熱効果も優れている。

形状は断面がコの状態で、既存の柱を両側から挟み太い柱とする物であった。

鑑定で柱の寸法は既に分かっているので挟み込むだけで頑丈になる。

そしてその柱の合わせ目に沿って、植物魔法を流し込むと一体化してしまう。

何故、既存の柱を使う事にしたか、じいちゃんの時代から頑張ってくれた柱だからだ。

魔法が使えて選択の1つの中でこれだと思った。

この木材のもう1つの利点はシロアリが食べれない木材である事。


そして俺が作った土台は、床下暖房が出来る状態に作り上げている。

普通は床下専用放熱器を使うのだが、チューゴにやらせる選択もあるので悩んでいる。


取り敢えず床を張らないといけない、一部は畳にして残りはフローリングにしてゆく予定。

3ラインレーザー墨出し器(床や壁にレーザーで照らし赤い線で水平ラインや垂直ラインを出して水平と垂直見る)で基準を決め、床組を組んで床束(ゆかづかは床を支える柱)を入れてゆく。

俺が寝る部屋は、早急に作らないといけない。

土壁も作りどうにか寝床を確保する事ができた。

そしてそんな俺の作業を、ランは飽きもせず熱心に見続けている。



ラジオから聞き知った情報だと、神戸方面の防衛ラインが20キロにわたり前進したらしい。

前線で魔物の数が急に減りだした事が主な原因であった。

それでも喜ばしい報道に、アナウンサーのしゃべりにも熱がこもっていた。


そして国連は、日本の自警団の活躍を高く評価して同じような組織【ギルド】の設立を発表。

日本の自警団の数名が召集される事となった。


そしてアメリカの人工衛星の画像から、ゲートが高さ6メートル横5メートルに成長している事が分かった。



もう既に日が沈みかけている。紅く染まった空にカースらが戻ってきた。

大木に次々ととまり、「カーァカーァ」と我が家にもどった喜びを鳴いて俺に知らせる。

ここしばらくは魔物の襲撃はない。

ただカースとチューゴが偵察の目的と、狩れると判断をした時のみ襲撃を認めている。

実際は狩り目的で遠出しているのが実情。


カースは約30キロ内を回りながら狩っているらしい。

チューゴは約20キロ内を駆け巡って狩っている。

チューゴは腹が膨らむまで帰ってこない。真夜中に騒ぎながら集団で帰ってくるのは止めて欲しい。



そろそろ岩風呂の温度が上がったみたいなので温度を確認。

適温になったいるので、俺があの漢方薬をヒントに作り上げた秘薬を投入。

色が一瞬に薄緑に変わり、言い表せない香りがただよってきた。

この秘薬は、グーボンの葉を天日干しを2日を費やして細かくして石うすで|挽(ひ)いた物。

湯に浸かると肌がつるつるになり、顔を洗うとシミが消え肌に張りがよみがえる優れ物であった。

もちろん疲労回復・筋肉痛・神経痛・きりきず・やけど・冷え性・皮膚病などの効用がある。


今浸かっているが、しみる様に効用が体を駆け巡る。


「なんだライか・・・・入りたいのか。体を洗うなら入ってもいいぞ」


シャワーで体を洗って入って来ようとした。


「ダメだダメだ、そこのボディーシャンプーを使って洗う。いつも見ていただろ」


ゴシゴシを洗い始めるライであった。

なんとか洗い終わるとどうですか・・・?と念話で聞いてきた。


「まあ入っていいぞ」


俺と対面するように入ってきた。

一気に湯が溢れ出している。そしてでかい岩風呂が狭くなってしまう。

しかし従魔にも風呂に入りたい変わり者も居るのだと感心してしまう。

我が家で作った米を使用して、どぶろくなる物を作ってみた。


作り方はいたって簡単だ。米を充分水を吸い込ませて固めに蒸す。

そして水と蒸し終った米をかき混ぜる、温度は29度ぐらいで米麹とドライイーストを入れてかき混ぜる。

8時間以上置くと出来上がりで、好みでもっと置いても良い。


それをちびちびと飲んでいると、ライの視線が気になった。


「飲みたそうな目で見るな。少しだけだぞー」


杯を渡すと一気に飲んでしまう。そして湯に沈むライをどうにか湯の外に放り投げる。

なんだか全身が赤っぽく光っているのに驚く。酔うと赤く光るのか?不思議な従魔だ。

湯が少なくなってしまったが、火照った体に涼しい風が心地よい。



ちびちびと飲みなおしながら夜空を見上げる。

満月も出ていて雲もない、満天の星空に囲まれ素晴らしい眺めだ・・・



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