第19話少女と男の子




あれから何度ゲートを開いたことか、そして鑑定するたびに悪寒が走るこの感覚はなんだろう。

俺は実物のゲートを鑑定する事で、1つのヒントが手に入るのではと考えている。

その為にも岡山駅の中間点を探索をしようと思っている。

もし気配探知で危ないと感じたら直にゲートで逃げればいいと考えた。

カース5羽を選抜。残った従魔でこの家を守ってもらう。


俺が歩きながら防衛ラインを出ても、ランだけがついて来ようとする。


「ラン!残れ命令だ」


少し後ろ髪を引かれる思いで、自転車にまたがると一気に下り坂を走り出した。

上空では5羽が編隊を組んで飛んでいる。


しばらく経つとキラーズの集団がやって来た。

カースによって数を減らしたが、残った12匹が襲ってきた。

しかしアイテムボックスから石を取り出し、【操作】で高速回転した石弾がアッと言う間に殲滅。

そのまま走り続ける。気配探知では魔物の気配はなさそうだ。


しばらく走っていて、スマホで確認すると30キロを超えた地点で電波の繋がりが悪くなった。

もうスマホは使えないと思った方がいいだろう。

もうしばらく走っていると薬のスーパーを発見。

病気になったら困るので、薬類を物色する為に入った。

店内は暗く、電気が通っていない。

暗視があるのでお目当ての薬を収納してゆく。

お風呂に入れる漢方薬を見つけ、値段も3割引の9900円でこれも収納する。


しかし急に俺の気配探知に1人の人間の気配がした。

その気配をたどり行ってみると、バックヤード内の分かり難い所のダンボールから気配が感じる。

フタを開けると1人の少女が、今にも泣きそうな顔で必死に両手で口を塞いでいた。

少女のかたわらでは、男の子がスヤスヤと寝ている。


「大丈夫だ助けに来たよ」


その瞬間から少女は泣き出した。目覚めた男の子も一緒に泣き出した。

泣いている2人の手を握り、外まで連れ出した。

事情を聞いても分からなかった。

どうも記憶の一部がすっぽり消えているようだった。

恐い思いをしただろうと、分かっているがどうしたものかと考えた。


俺は諦めてゲートを開いた。2人を連れてゲートを通る。

そこは、神戸の長田区のとあるビルの屋上。

このビル内にも外にも人の気配が沢山感じる。

俺の心臓が激しく鼓動する。どうにか気を静めてこの子達の為に頑張る。

紙に簡単な説明を書いて、最後には14名を救出した者よりと書いてしっかり握らせた。


「あの階段を下りて、最初の人にその手紙を渡すんだ。もうここには魔物は居ないから心配ないからね、分かったね」


少女は「うん」と言って男の子の手をギュッと握り、階段を下りていった。

少女と大人が出会う気配を確認してようやく安堵した。

俺は急いでゲートを通った。5秒後にはゲートは消えてなくなった。

間一髪だった。ホッとしながら気配探知で気配を探すがもう誰も居なかった。


自転車のペダルをこぎながら、あの2人の事を心配してしまう。

べダルを必死でこぎながら車と車の隙間を抜けて疾走する。

何度も魔物を倒し続けて、回避しようとして新たに魔物と出会うなど色々な経験をした。

そして赤穂までようやくたどり着いた。

赤穂は兵庫県だがもう少し行けば県境で岡山県に入れる。

ここが目的地の中継ポイントになる。



急に不穏ふおんな気配が漂いだした。

ここから20キロ先に凄い数の気配を感じる。

そしてその気配は動いていた。俺が狙いだと直に分かっている。

スマホで周りの写真を撮りながら、しっかりと記憶に残す。

紫魔石で回復するとゲートを開き、自転車を押しながら急いで家へ戻った。

振向いて消えろと念じる、するとスッとゲートは消えてしまった。


あの数は10万は超えていただろう。

さすがの俺も驚いた。俺達人間は勝てるのだろうか?


すると目の前にランがやってきた。


「なんだ、何かあったのか?」


・・・・


「そうか、心配してくれたのか。ありがとう」


2時間後にはカースの5羽が戻ってきた。

2羽で掴んで運んできたのが、鹿で角が複雑な形をしていた。

体は象ぐらい大きく重かっただろうと思う。

どうやら俺のお土産らしく、カースを撫でながら受取った。

鑑定をする。


ビービン


それがこの魔物の名であった。

魔石か従魔かどちらにするか凄く迷った。

500円硬貨を弾き上空をくるくると回っている。

500円表示で魔石と決めて掴んで開いた。500円だと直に分かった。

ナイフで引き裂き探し出したのが紫魔石。

俺は急いで鑑定する。

紫魔石(魔力が溜まった石。魔力を吸収するとMPが回復する。初級の回復魔法が使えるようになる)


俺は慌てながら紫魔石を死体に戻し、土魔法の【拘束】で地面に取り込んだ。

反応がしない・・・どうしよう。直に土魔法を流してこれでもかと流し込んだ。

ムクムクと土がせり出し、腹の膨らんだ2足で立っている狸がいた。

身長が1メートルそして目がクルリとしている。

急いで鑑定をしてみる。


ゴーレム・タンタ


Lv1


HP10

MP50


STR2+5 VIT2+5

DEF2+5 INT12+5

DEX3+5 AGI1+5


回復魔法(傷や欠損を治す。5分以内だと死体を復活させられる1日1回)


運命に逆らうのも人生だ・・・

タンタが居れば、従魔もおおいに助かるハズ。


それにしてもビービンは凄い魔物である事は間違いない。

死んだのに生き返るなんて、世のことわりに反するものなのにどうしてもわくわくしてしまう。

それは俺が死の目前まで行った人間だからかも知れない。


ゲート近くではとんでもない魔物が居そうで、改めてゲートの恐さを知った。



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