夢心地の混浴
お昼を食べ終えてピクニックシートを片付けた僕たちは、改めて空いてる温泉を探すことに。
「なかなか見つからないね……」
「はい。都合のいい温泉なんてそう簡単には見つからないですよね……」
はなちゃんの背中で揺られるうち、僕たちも少しずつ疲れてしまっている。
ふとはなちゃんが鼻をあげて何かに気づいたみたい。
「パオ!」
「何か見つけたの? はなちゃんっ」
僕の返事に応えるよう、はなちゃんは傾斜のある山道を登っていく。
そしてたどり着いたのは茨がカーテンのように繁茂した地点。
「見てください、湯気が立ってますよ!」
「しかもこの匂い、温泉じゃ!」
「ってことはこの向こうに温泉が!?」
心が踊る僕たちだけど、茨だらけで肝心の温泉が見当たらない。
するとはなちゃんが茨を鼻で巻き取り、なんと口に運び出した。
「ちょっとはなちゃん!? そんなの食べたら口が血だらけになっちゃうよ!」
慌てる僕に構わず、はなちゃんはモリモリと茨を食べ進めていく。
見てみるとはなちゃんは茨の棘が平気なのか、むしろ堪能しているみたい。
そういえば僕の知るゾウも野生ではアカシアみたいに棘だらけの木の枝とか葉っぱも食べてるんだ、それなら茨も平気なのかも。
そうこうしているうちに茨ははなちゃんに食べ尽くされて、小さな温泉が姿を現した。
「わー、温泉です~!」
「はなちゃん、僕たちを下ろして」
「パオ」
はなちゃんから下りるなりルナちゃんが温泉へ一目散に駆け寄る。
僕も後に続いて温泉に手を浸すと、ちょうどいい温かさが全身まで伝わるようだった。
「湯加減もちょうど良さそうだね」
「ふーむ、わらわにはちとぬるすぎるかのう……」
同じように手を浸して顔をしかめるフランちゃん。
あんなマグマみたいな温泉で気持ちいいって言うくらいだもん、フランちゃんには物足りないかもね。
「早速入りましょう! ……これから着替えるのであっち向いててください」
「あ、ごめん」
「それとユウキくんの湯浴み着はこれです」
「ありがとう、ルナちゃん」
ルナちゃんから白い短パンみたいな湯浴み着を受け取った僕は彼女に背を向けて、服を脱いで湯浴み着に着替えた。
「もういい~?」
「もうちょっと待ってください、あとちょっとですから~」
僕の背後ではルナちゃんがうんうん言いながら着替えに悪戦苦闘してるみたい。
「――お待たせしました、もうこっち向いていいですよ」
許可が下りたところでルナちゃんの方を向いてみると、薄いピンク色のローブみたいな布を身体に巻いたルナちゃんの姿があった。
「ん、そんなキョトンとしてどうしたんですか? ユウキくん」
「……きれい」
普段は服に包まれている白い肩とか細い脚が湯浴み着を着ることで晒されていている。
いつも二つに結んでいる艶やかな金髪も今は頭の左右で団子みたいにまとめられているのも相まって、普段とのギャップというか予想もしなかったルナちゃんの色気で僕の胸は思わずドキドキと高鳴っていた。
「へ、ユウキくん今何て?」
「今のルナちゃん、色っぽくてすごくきれいだよ」
「……本当、ですか?」
僕の評価にルナちゃんが手で添えた頬をポッと赤く染める。
「――あ、ごめん。僕変なこと言っちゃったね、一緒に入ろっか」
「……はい」
手を差し出してルナちゃんの手を握ると、僕たちは温泉にまず脚を浸した。
「気持ちいいね」
「はい、まるで天国みたいです~」
それからゆっくり全身を浸すと、身体が心地のいい温もりに包まれるようで。
これがお外で入る温泉か~、少し冷たい外気とのギャップがまた気持ちいいな~。
隣に顔を向ければ、温泉の気持ちよさでとろけるルナちゃんの顔が。
こんなに可愛い女の子と一緒に気持ちよくなれるなんて、僕はなんて幸せなんだろう。
……イヤらしい意味なんてこれっぽっちもないよ?
「ユウキくん」
「ん、なあにルナちゃん?」
「ルナ、ここに来て本当によかったと思います。ユウキくんと一緒に雄大な荒野を見て、一緒にお外でお昼を食べて、そして温泉に入って。ルナは幸せです」
そう朗らかに笑うルナちゃんに、僕の心もポカポカと温まるようだった。
これで最近忙しかったのを穴埋めできたかなあ?
そんなことを思っていたら、肩にピトンと何かが触れる。
「ルナちゃん?」
「ルナ、ユウキくんと一緒だから今こんなに嬉しいんですよ?」
「……っ」
隣を見ると、ルナちゃんが華奢で白い肩をくっつけて僕に寄りかかっていた。
気のせいかルナちゃんの顔もほんのりとピンク色に染まっていて。
……なんでだろう、胸のドキドキがハンパないくらいに高鳴ってる!!
「――いい雰囲気のところ失礼するのじゃ!」
そんなドキドキムードに水を差すように、いつの間にかまた服を脱いだフランちゃんがドボン!と温泉に飛び込んだ。
「ひゃあっ!? いきなり何なんですかフランさん!」
「ワーッハッハッハ! ユウキといい雰囲気になろうなど、わらわの前では許さんのじゃ!」
高らかに笑ったかと思ったら、フランちゃんが僕に褐色の腕を絡めてくる。
「ほれ、わらわの身体の方が良かろう?」
「うっ」
フランちゃんの身体は思いの外暖かくて、ほんのりと膨らんだおっぱいも僕の右腕にぎゅっと押し当てられて……正直気持ちいい。
って、今僕の身体に当たってるのって布越しじゃない生おっぱい!?
「ちょっとフランちゃん! こういうのはまだ早いって!?」
「ひゃんっ」
絡む腕から離れようとすると、フランちゃんが思いもよらない嬌声をあげる。
「これお主っ、わらわにこんな声を出させるとは。責任は取ってもらおうかの?」
「それはフランちゃんがぎゅっとしてるからでしょ!?」
「もう、フランさんだけズルいです!!」
さらに何を思ったのか、ルナちゃんも僕の左腕に絡み付いてきた。
こうして密着すると分かるんだけど、ルナちゃんもほんのちょっとだけあるんだね。
って、そんなこと考えてどうするんだ僕はぁ!?
「ユウキくんはルナと一緒がいいんです! ね~?」
「何を言うておるか、ユウキはわらわの
「ちょっと、二人とも~!」
温泉で可愛い女の子二人に囲まれて、僕はもうどうすればいいかわかんないよ……!
「ブロロロロ……」
はなちゃんもなんか冷ややかな目で見てるしぃ!
「はあはあ、これは尊すぎるよ~」
なんか知らないけどここにはいないはずのセレナさんの声が幻聴として聞こえてくるんだけどっ。
ふとフランちゃんがしがみつく力を弱めて言い放った。
「隠れて覗くとは不埒な真似をするものじゃな。いるのは分かっておる、姿を現したらどうなのじゃ?」
「「ん?」」
何もないはずの虚空に声をかけたフランちゃんに僕とルナちゃんが頭にはてなマークを浮かべると、そこが不自然に揺らいで姿を現したのは。
「あはは、バレちゃったか~」
「お、お姉ちゃん!?」
そう、セレナさんだった。
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