ルナちゃん大接近!?
木こりさんのお手伝い
「迷惑をかけたな、これはせめてものお詫びじゃ」
そう言うや否や、フランちゃんが僕のほっぺたに唇をつけた。
「えっ……?」
「~~~~!?」
突然の口づけにポカーンとする僕と、口を押さえて言葉にならない声を発するルナちゃん。
「それでは我が友よ、また会おうぞ!」
気が済んだのかフランちゃんはそう言って颯爽と空へ飛んでいってしまった。
「行っちゃった……」
飛んでいった先を呆気に取られたように見通していると、セレナさんがこんなことを。
「でもまあ、あの竜血とやり合って生きて帰れるなんて、ある意味すごい幸運だよねゆー君もっ」
「え、そうかなあ? フランちゃんあんまり悪い子には見えなかったけど」
僕が友達になってとお願いしたときは心底嬉しそうだったし、フランちゃんも本当は普通の女の子なんじゃないかと思う。
そんなことを考えながらルナちゃんに顔を向けるけど、ちょっと様子がおかしい。
「ユウキくんってば、フランさんにちゅーされてデレデレしてた」
「ん、何か言ったルナちゃん?」
「な、なんでもありません! それより帰りましょう!」
「う、うん」
なぜかご機嫌斜めなルナちゃんに戸惑いながらも、僕たち三人ははなちゃんに乗って村に帰ることにした。
翌日になったんだけど、朝一番で顔を会わせたルナちゃんが口を利いてくれない。
今もおはようって挨拶したけど、プイッとそっぽを向かれてしまった。
もしかしてまだ昨日のこと気にしてるのかな……?
なんだか気まずいムードのまま食卓に向かうんだけど……。
「どうしたのユウキ君? 朝ごはん美味しくなかった?」
「あ、いえユノさん。今日も美味しいですよ」
「それならいいんだけど……」
黙々と食べてる僕に、ルナちゃんたちのお母さんであるユノさんは戸惑いぎみ。
確かに朝ごはんはいつも通り美味しい、だけどなぜか味気なく感じてしまう。
こんなこと今までにはないよ。
「……ごちそうさまでした」
「ちょっとルナ、まだ半分も食べてないじゃないのっ」
「いい、ルナはもうお腹いっぱいです」
ルナちゃんは素っ気なく言い残して自分の部屋に戻ってしまった。
「――まだ仲直りしてないの、ゆー君?」
「仲直り、ですか……」
耳打ちするセレナさんに、僕はまた気が重くなってしまう。
やっぱり昨日のことだよね……。あそこからルナちゃんがちょっぴり変になっちゃったんだ。
ルナちゃんの後を追おうとしたちょうどその時、誰かが扉を叩く。
「おーい、ちょっと頼みがあるんだが」
「何だ?」
怪訝な顔でルナちゃんたちのお父さんであるゲイツさんが玄関に向かう。
するとすぐに戻ってきて僕を呼びにきた。
「ユウキ君、どうやら客は君に用があるみたいだ」
「え、僕に?」
疑問を抱えたまま食事もそこそこに玄関へ向かうと、そこにはゲイツさんに負けないくらいガッチリとした体型をした男の人が立っている。
「はーい」
「君がユウキ君かね? 私はランバーだ、よろしく。話には聞いてるよ、君とあの大きくて鼻の長い動物に手伝ってほしいことがあるんだ」
「大きくて鼻の長い動物って、もしかしてはなちゃんのこと?」
僕の質問に、ランバーさんはうなづいて話を続けた。
「材木の伐採をしていたんだが、今日は人手が足りなくてね、君たちの力を借りたいんだよ。もちろん相応の報酬は出す、今から受けてくれるかい?」
「今から、ですか……」
部屋にこもってしまったルナちゃんが気にはなるけど、僕は目の前で力を必要としてくれるこの人を助けることに決める。
「分かりました。はなちゃんにも伝えておきます」
「助かるよ。それじゃあ準備ができたらここから西の山に来てくれ。それじゃあ先に行ってるよ」
そう残してランバーさんはこの場を離れていった。
食卓に戻って残りの食べ物をかきこんだところで、僕はユノさんたちに伝える。
「それじゃあ僕、これから手伝いに行ってきます。今日も朝ごはん美味しかったです」
「それなら良かったけど……。何かあったら相談してちょうだい?」
「無理はしないでよ?」
「分かりました。それじゃあ行ってきます」
ルナちゃんを除いたレイス一家に見送られて、僕はまずはなちゃんを迎えに行くことにした。
家から出ると、ちょうどよくはなちゃんが家の裏に来ている。
「おはようはなちゃん。もしかして今の話聞いてた?」
「パオ」
僕の問いかけにはなちゃんはこくりとうなづく。
ゾウってものすごい遠くの雨音も聞きとれるくらい耳がいいって、図鑑には書いてあったっけ。
そう考えるとゾウってやっぱりすごい。
「それなら話が早いよ。これからお仕事があるんだけど、はなちゃんも手伝ってくれるよね?」
「パオン!」
はなちゃんが元気よく鼻を上げたところで、僕はまずその背中に乗せてもらう。
「それじゃあ行こっか! 西の山だよ!」
「パオーン!」
それからはなちゃんに乗って僕は西にあるっていう山に向かうことにした。
少しの間はなちゃんの背中で揺られていると、僕たちはランバーさんが待つ西の山に到着する。
「ランバーさーん! ただいま来ました~!」
「おう、ユウキ君かい。来てくれてありがとう。早速だがあの丸太を村まで運ぶ手伝いをしてくれるかい?」
ランバーさんが指差した先では、若い男の人たちが力を合わせて丸太を移動させようとしているところだった。
だけどあんなに大きい丸太だから、十人がかりで一本を押すので精一杯みたいで。
「大変そうですね……」
「そうなんだよ。しかも今日に限って五人も欠員が出てしまった。全く、頭が痛いよ」
頭を抱えるランバーさんだけど、はなちゃんの力があればもしかしたら解決できるかもしれない。
「よーっし、はなちゃんよろしく……ってあれ?」
隣にいたはずのはなちゃんだけど、いつの間にか丸太から切り落として地面に散らばっている枝を夢中で頬張っている。
「ちょっとはなちゃん! これからお仕事だっていうのにダメだよー!!」
「ブロロロ……」
僕の注意で不満げにのどを鳴らすはなちゃん、するとランバーさんは快活に笑ってみせた。
「あはは、気にすることはないさ。はなちゃんと言ったか、枝くらい好きに食べるといい」
「プオ?」
「いいんですか?」
「そんな枝の切れっぱし、どうせあんまり使わないから気にすることはないよ。まあはなちゃんに対するお駄賃だと思ってくれ」
ランバーさんの心の広さに、僕はほっと胸をなでおろす。
「それじゃあ本題に入ろっか」
「分かりました。はなちゃん、お願いっ」
「パオっ」
僕の指示ではなちゃんが一声あげると、長い鼻で丸太を抱えて軽々と持ち上げた。
「「「おおーー!!」」」
力持ちなはなちゃんに、村の木こりさんたちが歓声をあげる。
「おお、力が強いとは聞いていたがこれほどのものだとは! これなら仕事も捗る!」
それからはなちゃんが移動させた丸太を蹴って山の斜面に転がし、下で流れる川に流す。
このスムーズさを木こりさんたちがとてもありがたがってくれた。
そうして僕たちはあっという間にいくつもの丸太を村まで運ぶことができたんだ。
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