ドラゴンをやっつけろ!
ドラゴンの襲来
「私が先に行って村の者たちに加わる、君たちは急いで安全な家に戻るんだ!」
村の惨状を見るや否や、ゲイツさんは手綱を叩いて馬を走らせる。
「僕たちも急ごう! はなちゃん、お願い!」
「パオン!」
僕もはなちゃんにお願いして、その足を速めさせた。
村に駆けつけると、二本足で頭に赤い結晶みたいなものがついたトカゲっぽいドラゴンたちが暴れまわってるのが目に飛び込む。
「パララッパララッ!!」
「あれがドラゴンなの!?」
「ゆー君。あれはドラコっていってね、ドラゴンの中でも小さくて下級なんだ。だけどこの数だとちょっと厳しいかも……!」
ドラコという名の小型ドラゴンの集団に、合流したゲイツさんをはじめとした村の人たちが武装してなんとか食い止めている。
ゲイツさんが先陣を切って、ドラコの集団を蹴散らしている。
ゲイツさんって強いんだな~!
だけど多勢に無勢で村の人たちが辛そうだった。
「私も戦うよ!」
そう告げるとセレナさんが背中に携えていた弓を構えて、はなちゃんの上から矢を放つ。
「パギャア!?」
頭を射抜かれたドラコの一匹が地面に崩れ落ちたところで、セレナさんもはなちゃんからひとっ飛びで村の人たちと合流した。
「みんな! 一緒に村を守ろう!」
「セレナの嬢ちゃんか!」
「彼女は弓の名手だ、頼りになる!」
セレナさんが加わって戦士たちの士気が上がったところで、僕とルナちゃんははなちゃんに乗ってひとまず安全な家に急ぐことにする。
「あと少しお願い、はなちゃん!」
「パオ!」
僕はルナちゃんのおうちまではなちゃんを急がせた。
だけど家が目前というところで、三匹のドラコが正面に立ちはだかる。
「コーッコーッ!」
「パララッ!!」
甲高い声をあげて威嚇するドラコたちにビビりそうになる僕だけど、懸命に自分を奮い立ててはなちゃんに命令した。
「はなちゃん、あいつらをやっつけられる!?」
「パオ!」
僕の申し出にはなちゃんは目配せで応えてくれる。
「それじゃあ行くよ!」
「パオーン!!」
僕の号令ではなちゃんが突進して、ドラコの一匹を鼻で思い切り突き飛ばした。
「パギャア!?」
吹っ飛ばされたドラコは地面を勢いよく転げた、けどそいつはすぐに立ち上がって他の二匹と共にはなちゃんに突撃してきた。
「コーッコーッ!」
「パララッ!」
ドラコの口で剥き出しになった鋭い歯、あれに噛まれたらはなちゃんも痛そう……!
「はなちゃん、あの歯に気をつけて!」
「パオ!」
僕の注意に応えるや否や、はなちゃんは先頭のドラコを長い鼻で絡めとり、奥の二匹を太い足で踏みつけた。
「ギャッ」
踏み潰されたドラコ二匹が短い断末魔をあげて動かなくなる。
「プオン!」
そしてはなちゃんは鼻で持ち上げていたドラコも地面に力一杯叩きつけ、丁寧に踏んでトドメを刺した。
「さすがですはなちゃん!」
「ブロロロロ……」
ルナちゃんは手を叩いて称賛してるけど、はなちゃんはドラコの血にまみれた足を気にしている。
「もしかして気持ち悪いの?」
「ブロロロロ……」
それを感じ取った僕ははっと気づいた。
ゾウの足は巨体を支える要、もし固いもので傷つけたら一大事だ。
「そうだよね、大事な足で得体の知れないものなんて踏みたくなかったよね。今度からは気を付けよう」
「プオ」
僕が背中をパンパン叩いて労ってあげると、はなちゃんは嬉しそうな声をあげる。
そしておうちの前にたどり着いたところで、はなちゃんをしゃがませた。
「ルナ! ユウキ君!」
帰ってくるなり家から飛び出してきたのは、ルナちゃんのお母さんであるユノさん。
それを見てルナちゃんも、しゃがんだはなちゃんから飛び降りてユノさんに飛びついた。
「お母さん!」
「良かった~、無事だったのね!」
「はい! お母さんこそ大丈夫だったですか?」
「ええ。村長さんがすぐに指示を出してくれたから助かったわ」
村の人たちも無事みたいで何より。
だけどはなちゃんは背後を気にしてるのか、すぐに立ち上がる。
「どうしたのはなちゃん?」
「ブロロロロ……!」
その時だった、突然地面がゴゴゴと揺れ始めたんだ。
「な、なんだ!?」
「怖いです~!」
これは何か嫌な予感がするよ。
直感的に危険を感じた僕は、振り向いてルナちゃんたちに指示した。
「ルナちゃん、ユノさん! すぐに家の中に入ってください! 何か来ます!!」
「へっ!?」
次の瞬間、地面を突き上げて大きな何かが姿を現した。
「な、何だあれは!?」
それはさっきまでのドラコとは違う、でっぷりと太った身体にガマガエルのようなふてぶてしい顔をした背丈四メートルくらいはある大きなドラゴンだった。
「グルルルル……、ウマソウナ小僧ト食ベ応エノアリソウナ獣ダ」
「え、しゃべったぁ!?」
そいつは片言だけど確かに人の言葉をしゃべっている。
「気をつけてください! しゃべる魔物は普通より強力なことがあります!」
大声で知らせてくれたルナちゃんの言葉に、僕は背筋がゾクリとする。
あいつも魔物なのか、それもルナちゃんの言う通りならかなり強いかもしれない。
「――オ? スゲエウマソウナ小娘マデイルジャネエカ」
「ひっ!?」
ジュルリとよだれをたらしながら向けられた巨漢ドラゴンの目に、ルナちゃんは腰を抜かしてしまう。
その言葉を聞いた僕の中で、何かがブツリと切れたような気がした。
「――今何て言った?」
「オ? ウマソウナ小娘ダッテ言ッタンダヨ」
「ふざけるな! そんなことはさせない!!」
自分でも不思議なくらい、僕は怒りに燃えている。
ルナちゃんが狙われてるとあって、僕は引き下がるわけにはいかなかった。
ルナちゃんは僕たちが守る!!
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