本作の冒頭は主人公の現況を説明します。語り口が三人称でよかったです。一人称で語られたら、どれほど陰惨になったことか。
主人公の現況は、言わば、生ける屍。
そんな主人公が、生き返った祖母に出会います。彼女は、一回死んでいる死者のはずなのに、実に前向きで明るく、深い意味で「生きて」います。
生きているのに死んでいる男子が、死んでいるのに生きている女子に出会います。そして生じる人生の化学反応。
幸せになる、という言葉はおこがましいかもしれませんが、今を生きることの意味を感じられます。
加えて、綺麗事でなく肉感的なのも本作の美点です。スケベ心も生きているからこそ。