第43話 真相
私は卯月さんを連れて、梨花ちゃんの事務所に向かう。
なぜ刺されたはずの卯月さんを私が連れているのか。
カラクリはこうだ。
まず、金曜日には正式なマネージャーが決定する事が決まっていた。卯月さんだ。
卯月さんが梨花ちゃんを裏切る人間ならそれはそれでいい。
彼女を見張ればいいだけだから。
けど、そうじゃなかったら?
やり直す前の歴史では、梨花ちゃんはファンに襲われて傷心状態。
週刊誌では、それがマネージャーの仕業ではと憶測が書かれていた。
もしもファンに襲わせたのがマネージャーの仕業で、かつ自分を選ばせるための行動だったのなら『梨花ちゃんが普通の精神状態では選ばない方』が犯人ということになる。
もちろんこれは憶測の憶測だ。
そもそも二人から選ばなかった可能性だってある。
だから私がした事は、ただの保険でしかない。
犯人が毒島さんで、かつ、ファンに襲わせるような事をする人間だった場合、次に狙われるのは卯月さんだ。
卯月さんがいなくなれば、自動的に自分がマネージャーに選ばれるのだから。
ちなみに映画の仕事を始めてる今の梨花ちゃんを、マネージャになる予定の毒島さんが襲ったりする理由はない。
卯月さんにあらかじめ連絡先と、防刃ベストと赤い絵の具の入ったパックを入れて、紙袋を渡し、使い方を書いた紙を同封しておいた。
襲われた彼女は私に連絡してきてくれて、それで朝まで私の部屋に身を隠していた。
そして卯月さんを刺したと思った毒島さんは、朝一で梨花ちゃんに電話をかけてきた。
おそらく誰かが卯月さんを刺したとか話をしたんだと思う。
だから後は、どうして毒島さんが『卯月さんが刺された事をしっていたのか?』を問い詰めればいい。
「ほんっと最悪! 何で私がこんな目に合わないといけないのよ!」
助けに言った時、卯月さん赤い絵の具まみれで、怒り狂っていた。
「ふっざけんな。あのクソ野郎、絶対ふんづかまえてやる」
言葉遣いまで変わってた。
「卯月さん。大丈夫ですか?」
「あれ。お前誰だっけ? あ、そうだ。天満の友達の……こんばんはー。この前はこのベストありがとう。すごく助かったわ。赤い絵の具も」
「……もう遅いですよ」
色々と。
「あーあ。バレちゃった。会社の人間には天然おとぼけお姉さんで通ってたのに。何? 天満に言う気なの?」
「言いませんよ。ただ条件があります」
「条件? 何よ?」
「梨花ちゃんはああ見えて無理する子なので、力になってあげてくださいね」
「そんなの、言われなくてもわかってるわよ。でもああいう素直でかわいい子って、ちょっとだけイジメてやりたくなるのよね」
「卯月さん」
「冗談よ。一応あんた。命の恩人だし? 」
それあから毒島さんはお縄になって、当初の予定通り卯月さんがマネージャーになった。
ただ、最初の歴史で梨花ちゃんを追い込んだのが、卯月さんじゃない証拠はない。
これからも時々見張っていこうと思う。
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37話に「人物紹介&時系列まとめ」を追加いたしました。良ければご活用ください。
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