第25話 当選確率を上げる方法(2022/1/20改稿済)
学校に向かう途中、葵さんからIMが届いた。
【一橋 葵:おはよう桜田君。申し訳ないけど、しばらく真央を家まで送り届けてもらえないかしら】
【桜田 優太:別にいいですけど、何かありましたか?】
【一橋 葵:昨日、帰り道に変な男につきまとわれたらしいの。真央は走って逃げたらしいんだけど】
【桜田 優太:え? 真央は大丈夫なんですか?】
【一橋 葵:さっきまで怖がってたけど、今は落ち着いてるわ】
【桜田 優太:なら良かった。送る件は僕に任せてください】
放課後。
2年1組の前で真央を待っていると、槍川さんがやって来た。
「あら桜田君。真央を待ってるの?」
「うん」
僕が答えると、槍川さんは少し考えるようにして、
「あまり頻繁に来ない方がいいかも。1組の連中、あなたを良く思ってないわよ」
「そうだろうね」
さっきから、殺気立った男子達の視線を感じている。
「桜田君は、真央とは付き合ってないんでしょ?」
「うん」
「真央の気持ちも知ってるのに?」
「知ってるよ」
答える僕に、槍川さんは呆れたような表情で、
「なのにこうして迎えに来て、期待を持たせて、意外に桜田君は酷い男なのね」
「そうだね。真央が期待を持ってることは知ってる。でも友達なんだ」
「詭弁ね。本当は真央の気持ちが自分に向いてるのが気持ちいいんでしょう? 1組の男子どもに悔しがらせて楽しんでるんでしょ?」
そうなのかな。
そうなのかもしれない。
でも、
「大切な人なのは変わらないよ」
「じゃあ私の事も大切にしてよ」
「どういう意味?」
「今日、彼氏と別れてくる。それならいいわよね?」
何がいいの? ……と、聞くのは野暮な気がした。
「僕は、槍川さんを好きにはならないよ」
「そんなのわからないわよ」
「あのさ……」
「私。本気だから」
槍川さんの目は、僕の反論を許さなかった。
ー
翌日の朝。
「桜田。話があるんだ。ちょっといいか?」
朝礼の始まる10分前に、熱海君が2年3組の教室までやって来た。
ちょうど良かった。
そろそろ話さないといけないと思ってた。
槍川さんとの関係を。
「僕も話があったんだよ。熱海君」
「話? なんだよ」
「槍川さんのこと話したいことがあるんだ。放課後に、少し時間貰ってもいいかな?」
「おう。いいぞ」
「熱海君の用事は?」
「俺のは単純だよ。桜田。お前、真央姫とは付き合ってないんだよな?」
「うん」
「ここ数日、色々話してたらさ。すげえ話あうんだよ。ゲームとかも色々詳しいし」
「……うん」
「なあ桜田。お前、真央姫の送り迎えしてるよな? 代わってくれないか?」
「ちょ、ちょっとまってよ。槍川さんは? いいの?」
「なんか話あわねえし。話してても、あんまり楽しくないんだよな。やっぱり話すのって大事だな。桜田の言う通りだったよ」
え、待ってよ……。
本当に?
僕が呆然としていると、
「じゃ、送り迎えの件。考えておいてくれよ」
そう言って熱海君は去っていった。
ー
【桜田 優太:葵さん。真央を家まで送り届ける件なんですけど、同じ1組の熱海君がやりたいって言ってるんですが、駄目ですよね?】
【一橋 葵:真央が良いって言うなら良いわよ】
【桜田 優太:いいんですか……?】
【一橋 葵:あの子にも、そろそろ色んな経験を積ませた方が良いのかも知れない。桜田君を見て、そう思うようになってきたわ】
【桜田 優太:そうですか。わかりました】
葵さんとのやり取りを終了し、僕はスマホをポケットにしまった。
とりあえず真央に聞いてみよう。
でも、真央が僕の話を断る未来が想像できない。
僕が『熱海君が真央を送りたいそうなんだけどどうする?』そう聞いたら真央はきっとこう言うだろう。
『優太君がしたいようにして。ボクはそれに従うから』
僕は、どう答えるべきだろうか。
『全然大変じゃないよ。真央は僕が送る』
そうだな。こう言うべきだ。
この後、真央と話して結論が出た。
「うん。ボクも優太君に送ってもらいたいな」
真央が笑顔で答えた。
良かった。
僕はホッとして、胸をなでおろした。
なのに、翌日の放課後。
僕たちは四人で真央の家に向かって歩いていた。
「熱海君も、持ってるんだ。VSO2」
「おう。発売日に買ったぜ」
「面白いよね」
「ああ、ゲームとしても面白いが、単純にストーリーがいい」
僕の前には、真央と熱海君の2人が歩いている。
真央が言うには「優太君も大変だと思うから交代ではどうかな?」
なんで?
昨日は僕が良いって言ってたのに。
「嫉妬してるのかしら? 真央と熱海君に」
そして、なぜ槍川さんまでいるのだろうか。
「何で槍川さんがいるの?」
「八つ当たりするのやめてくれるかしら?」
「……槍川さんの家はこっちの方なの?」
槍川さんの言葉を無視してそう聞くと、
「正反対よ」
「じゃあどうして?」
「言ったでしょ? 私、本気だから」
「そう。彼氏とは別れたの?」
「別れようって言ったらこじれてる」
「そうなんだね。でも、わかるよ」
真理の時も、揉めたからな。
最後はメチャクチャになったけど。
「彼とちゃんと別れたら、きちんと桜田君に好きって言うわ」
「言っても無駄だよ。僕は槍川さんの気持ちには応えられない」
「私がビッチだから? それともドMの変態だから?」
「……関係ないと言えば嘘になるけど、僕には好きな人がいるんだ」
「誰?」
「僕を助けてくれた恩人で、僕はその人に恩を返したいって思ってる」
「それって好きって言えるの?」
「……」
「優太君!」
前を歩いていた真央が振り返った。
「どうしたの?」
「明日の動物園。熱海君も来たいって言ってるけどいいかな?」
「……」
「優太君?」
僕が言えば、真央は断るだろう。
僕が言えば、熱海君はこれなくなる。
友達を取るか、僕のエゴを通すのか。
前に彼氏面するなと言われたことがあるが、あの時とは立場が違う。
僕は、真央の彼氏じゃない。
「もちろんいいよ」
僕は答えた。
『佐藤大樹 #転まり』
『三橋 邦弘 #転まり』
『鈴谷 千尋 #転まり』
『三田村 麻耶 #転まり』
『名前書いてるやつらなんなの? #転まり』
『本名呟くと当選確率あがるってのデマだからやめた方がいいぞ #転まり』
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