第57話 まるで友達のように5

三人は何でもないようなことを話していたけれど私はさらに上の空になってしまう。

付き合ってるって、恋人同士って意味のあれだよね?

まさかお出かけに付き合うって話なわけないし。


本当は今すぐ問いただしたかったけど、さすがにタイミングがなかった。ユカさんもいるし。

仕方ないので黙ってこの場をやり過ごすことにした。




「映画面白かったんだけどさー。最後のほうで主人公が友達助けに行くシーンあったじゃん?あれだけよく分かんなかったなぁ。ドラマだと最後は主人公が裏切られて終わってなかったっけ?」


ユカさんは普通に映画の感想を話していた。

最初から薄々感じていたけどユカさんはこの四人で出かけている今の状況に特に何も思っていないのかもしれない。年上だからな明るい人だからなのか分からないけれど。



ちなみに今日見た映画はドラマの人気シリーズの続きで私も蛍ちゃんと一緒に見たことはあるからだいたいのストーリーは知っている。

さっき見たばかりの映画の内容を覚えていないだけで。


「主人公はお人好しなのよ。そういうところが主人公の良いところなんだわ」

リリアちゃんはそう言っていた。リリアちゃん、こういう映画好きなんだなって新しい発見だった。


「私はあのシーンいらなかったと思うけどな。今の仲間とうまくやってるんだから昔の友達なんか助けてあげる必要ないじゃん」

蛍ちゃんはそう言った。蛍ちゃんこのドラマ好きだったからか、けっこう真剣に感想を話してた。


あれ?なんか私が思ってたよりも二人って仲良くない?

そんなことを考えていたら急にユカさんが私に話を振った。

「飛鳥ちゃんはどうだった?」


「私ですか?私は……、と、とりあえず、面白かったかなぁって」


「たしかに! 細かいことは置いといても面白かったよね。アガるシーンも多かったし」



私の意見に同意してくれるユカさんに心の中で謝りながら

蛍ちゃんからのメッセージの意味を考えていた。


黙って話合わせてくれればいいからって言われても。

けっきょくよく分からないままだったけれど、

そんな私たちが付き合っててどうこう、みたいな話題にはならずにこのあとレッスンだからってお店を出て三人と別れた。



なんか普通にみんなで遊んでしまったなって。

ふわふわした足取りのまま帰りの電車に乗って、電車の中から蛍ちゃんにメッセージを送った。

『帰ってきたらいろいろ教えてね』


返事は数時間経ってから。言葉のない、キャラのスタンプが返ってきただけだった。



◇◇



そしてその日の夜。

私はリビングにいる蛍ちゃんに詰め寄った。


「だから、話の流れでそうなったんだって」


蛍ちゃんの言い分はそうだった。

付き合ってるっていうのはやっぱり恋人の意味だった。話の流れで義理の姉妹が付き合ってるってことになるわけないと思って私はさらに聞いた。


「いや、ぜんぜん分かんないよ……。どんな話したら私たちが付き合ってるってことになるの?」


「仲良いの?って聞かれたから。いいよって答えた」

「いやいやいや……」



「ねぇ、それよりドラマ見たい。今日映画見たからドラマももう一回見たくなった。飛鳥ちゃんも一緒に見よ」

私がしつこく聞いていると蛍ちゃんがそう言ってテレビの動画サイトの画面を開いた。

もうこの話はやめてオーラがものすごく出ていた。


「リリアには適当に訂正しとくからいいでしょ?」

って蛍ちゃんが強く言って話は終わりになった。


あんまり納得はしていなかったけど。

言い返すほどのことか考えたら違う気がしたから、私はおとなしく蛍ちゃんの隣に座ってテレビを見た。

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