第53話 まるで友達のように1

文化祭のあと、家に帰ってから、リビングにいる蛍ちゃんに今日のできごとを説明した。


「──というわけで、今日学校でリリアちゃんに会ったんだよね! すごくない!?」


最初は「ええっ?」って言っていた蛍ちゃんだったけれど

私が思っていたほど、一緒になって驚いてはくれなかった。

どっちかっていうと途中からつまらなさそうに聞いているみたいだった。


「私も文化祭行けばよかったかなぁ……」

蛍ちゃんはそんなことを言っていた。


「うちのクラスたいしたことしてないよ。面白くないって」


「そうだけどさぁ……。っていうか飛鳥ちゃん!!」

「うん?」


「まだライブ来るわけ? いつまで? ずっと行くの?」

「えー……」


そうやって親しい人にハッキリ聞かれると少し居心地が悪い。

いつまでとか期限は特に決めていなかった。


「テレビにもたくさん可愛い子出てるじゃん。地下アイドルじゃなくてそっちじゃだめなの?」

「えー……。それと自分の推しメンとはまた別っていうか」



シューティングスターのライブ中はお互い他人ってことにしようね、なんて話を蛍ちゃんが家に来たばかりの頃にした気がする。

そうは言ってもやりづらいのはなんとなく理解できるけど。


今日みたいなことって頻繁にあるわけないし、リリアちゃんがアイドルじゃなくなったら本当にもう一生会えなくなるわけで。

そう考えるとライブも見れるうちはできるだけ見ておきたいかなとも思う。


「また受験でも近くなったら考えるよ」

私はそうやって話をうやむやにした。



◇◇



さっきの話の流れで言うのも違うような気がして、私はタイミングをうかがっていた。

そして、夕飯のあとテレビの前にいる蛍ちゃんにさりげなく言った。


「ねぇ蛍ちゃん」

「うん?」


「さっきの話なんだけどさぁー……」

「……え、なに?」


蛍ちゃんが怪訝な顔をするからあんまりさりげなくなかったかなと思いつつもそのまま続けた。

「リリアちゃんに、私たちが姉妹になったって言っておいてよ?」


「は!? なんで? うちの事情なんかリリアに関係ないじゃん?」


「まあ、そうなんだけどさぁ。一応言っておいたほうがいい気がしない? ほら、どっかから変なふうに伝わるよりよくない? それに、私、話の流れでポロッと言っちゃいそうだもん」



私はできるだけ重たい空気にならないように蛍ちゃんにお願いするつもりだった。



蛍ちゃんが嫌だっていうなら話さなくていいかなって数ヶ月そのままにしていたけれど、

ずっとそのままなのもさすがに気になっていた。


それに、今日の帰り際のリリアちゃんの様子がずっと引っかかっていた。

リリアちゃんのあんな顔、今まで見たことない気がして。

勘違いかもしれないけど、せっかく私のことを覚えて仲良くしてくれているんだから信頼関係みたいなものは大事にしたいなって思った。



けっきょく蛍ちゃんには悪いけど、なんとかお願いして今度のライブの日に話しておいてもらうことにした。


私がチェキ撮影の時に伝えてもいいんだけど、それなら蛍ちゃんが自分で話すって言ってくれた。

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