第192話母の試験
「──それで、聞かせてもらうわよエルピス。先程の行動の意味を」
アルヘオ家別邸から少し離れて冒険者組合が秘密裏に管理している酒場の更に奥、治安の悪い高いであろうとも誰も邪魔をすることのできない空間で二人の、あるいは二匹が対峙していた。
かたやハーフの中でも物理では最強とされる半人半龍、もう片方は純粋にこの世界でも上位種とされる龍人。
身につけている武具や纏っているオーラ、それらを総合的に判断すれば意外な事に半人半龍の方に軍牌が上がりそうなそんな環境ではあるが、有無を言わせぬ龍人の表情にどうやら半人半龍もタジタジのようである。
「えっと……その……フィトゥス辺りを説明役として呼んではいけませんか?」
自分でも説明できるが第三者から説明させたほうが良く理解できるだろう、そう配慮してのエルピスの言葉はクリムによって無言のうちに拒否される。
母の考えを理解できない訳ではない、エルピスとしても先程の行動は不味かったと思っている。
10年以上直接会えなかった実の母親に対して、まるで他人のような素振りで接してしまったのだ、怒るのも無理はない。
「エルピス、真実を口にすることはそう怖い事ではないわ。隠し、欺き、取り繕おうとする事を恐れるべきよ」
そうして戸惑っている間にこんな事を言われて仕舞えば、エルピスに出来ることはやはり母の言う通りに説明するしかないのだろう。
「ええっと…その……遊び半分で違う人のフリをしてたら、思ったよりも信じちゃって引くに引けなくなったので、嘘を突き通そうと思って母さんを他人みたいに扱ってしまいました」
ぎゅっと両膝を握り締めながら、エルピスは半泣きになってそう口にする。
自分は二十歳にもなって何をしているのか。
妹に対してちょっかいをかけてしまうのは兄のさがではあるだろう、だがその限度を自分はいま理解できる年齢であるはずだ。
その事実を母親から、20にもなって、当然のように教えられるのが心に響く。
そんなエルピスを見て少しだけ心を痛めたのか、エルピスに見られないように顔を伏せて一瞬だけ辛そうな顔をした後にクリムは言葉を続ける。
「そうね。いまペディが説明しているところよ、幸いな事にエルピスがお兄ちゃんだと知って喜んでいるみたいだけれど」
「それは良かったです」
「──エルピス、私はまだ許したともなんとも口にしていないわよ?」
まだ許すとは言っていない、そう言われてエルピスは再び死神の鎌を首にかけられているような錯覚を覚える。
まだ謝罪の言葉が足りていなかったのか、それとも母が納得できるだけの材料を用意できていなかったのか──そう考えていたエルピスの目の前で母は両の手を大きく広げた。
一瞬何をやっているんだこの人はと思ってしまうようなそんな行動に対し目を白黒させたエルピスだが、クリムの表情を見れば何をして欲しいかは一目瞭然。
抱かれろ、である。
「ほら、早く来なさい」
「母さん、いえ母様。私も今は最高位冒険者であり大戦時特別戦闘管理官でありそして人類生存圏内にあるアルヘオ家を背負って立つ人間です、そのような──」
「エルピス」
「……ずるいよ母さん」
言い訳を並べるエルピスに対して胸ぐらを優しく引き寄せると、クリムは10年分の思いを込めて強く抱擁する。
10年前であれば車に轢かれたカエルのように潰れていたであろう母の力、だが今となってはそんな母の力が心地の良いものに変わっていた。
母に名前を呼ばれただけで力が抜けていく自分に不甲斐なさを感じつつ、こんなところを誰かに見られたら死ねるなと自嘲気味に笑う。
「嘘を貫き通す、その一点において私は貴方を評価するわ。それに貴方が名乗っていた名前、あれはもう一つの貴方の名前でしょう?
なら嘘もついていない、だけれど優しい貴方は私が傷ついたことを知って嘘だと思ってくれたのよね?」
「母さん、考えすぎだよ。俺は嘘つき、今回はしなくていい嘘をついて妹を困らせた、それだけだよ」
「貴方がそう思うなら反省なさい。そうすればそれで終わりよ」
異世界人だの転生者だので話がこじれてしまっているが、結局のところ今回悪いのはフィアに悪戯を仕掛けた全員だ。
抱きしめられたまましばらく母のされるがままに黙っていたエルピスだったが、ついに我慢の限界を迎えて声を出す。
「母さん、こんなんじゃマザコン扱いされるよ俺」
「マザコン…って何かしら?」
「天然は相変わらずだね。ざっくり言えばお母さんの事が好きな人のことだよ」
「あら! ならエルピスはマザコンね!」
「絶対それ外で言ったらダメだからね!?」
母からしてみればどれだけ経とうが子供は子供、自分のお腹を痛めて産んだ子供がどれだけ大きくなろうとも心配事は尽きぬのだ。
数分、もしかすれば十数分ほどエルピスを抱きしめていたクリムは満足したのかエルピスを手放すと、どこからか机を持ってきてエルピスとの間に置きながら大きな瓶を取り出す。
ビンに書かれている文字はエルピスが読めないところを見ると、まだ会ったことのない亜人種のものだろうか?
コルクを外して漏れ出た匂いをほんの少しだけ嗅ぎ分けてみれば、最近になってようやく慣れ始めたアルコールの匂いがする。
「さて、お母さんの仕事はここで終わり。本当はまだまぁ喋りたかったんだけどね、変われってうるさいから」
「もしかして──」
「──そう! 俺だッ!」
扉を破壊するような勢いで、いや扉を事実破壊してやってきたのは黒髪に似合わない髭を生やした人類の英雄。
どことなくエルピスの面影もあるその顔は、エルピスが先程までの光景を世界で一番見られたくない存在でもあった。
満面の笑みを浮かべて仁王立ちしたイロアスはズンズンと部屋の中へと入ってくると、先程までクリムが座っていた椅子に腰をかけて二つのグラスを机に置いた。
「母さんさっき夜に来るって──」
「──嘘だ。実は全力で気配隠して潜んでました」
……大真面目に何をやっているのだこの親は。
「なんでわざわざ酒とグラスを分けて持ち込んできてるのさ」
「細かい事を気にするなよエルピス、ぎゅってしてやろうか?」
「締め倒しちゃうけどいいのかな?」
「相変わらず俺には優しくないのな~」
「これでも父さんの事は尊敬しているよ。これ、海神から貰ったお酒。父さんに上げるよ」
「海神!? お前あんなのとよく仲良くなれたな。あのおっさん好き嫌い激しいからな、お前が気に入られてよかったよ」
久しぶりに会った父ではあるが、こうしてさらりと驚愕の事実を口にするあたりやはりその本質は変わっていないらしい。
少しだけ罰の悪そうな顔をして持ってきた酒を下げようとした父の手を制して、エルピスは父の持ってきた杯に酒を注ぐと一息で全て飲み干す。
喉が焼けるような感覚に次いでぽかぽかと体が温まりはじめ、少ししておそらく酔いと呼べる感覚が体の中を駆け巡っていく。
確かに海神に貰った酒はこの世界の中でも相当に上等なものなのだろう、だがエルピスは酒の良さもいまいちよくわかっていない身なので、父と母がエルピスのために用意してくれた酒の方が旨さもよくわかる。
「──ふぅ。旨いな、まさかお前とこうして酒が飲める日が来るとはな」
「俺も父さんとこうして酒が飲めるなんて思ってもみなかったよ。あ、母さんも残っていってよ。話したい事も多くあるし」
父と酒を飲む機会は残念ながら前世ではなかったものの、こうしてこの世界では父と酒を酌み交わすことが出来る。
望んでできる事ではない幸福に心の底から感謝しながら、エルピスは退出していこうとする母親を止める。
「私はまた後で良いわよ、親子水入らず…ね?」
「母さんも俺の親でしょ。それにこれは大事な事なんだ、転生者であったことを告白した時よりもさらにね」
酒が少し回ってきたのか──神人であるエルピスがこの量の酒に酔うなどありえないのだが──よく回る舌は言いづらいことも口にしてくれる。
転生者出会った事を両親に報告したのもはるか昔の話のようで、思い出した様にそう口にしたエルピスを見てクリムは微笑みを浮かべた。
「……分かったわ。そういう事なら悪いけどイロアス、同席するわよ?」
「もちろん。二人で酒なんてこれからいつでも飲める」
部屋の隅に置いてあった椅子を持ってきてイロアスの隣にクリムが座ると、かつての時と同じ席の並びになる。
「それじゃあ言うよ?」
どきもきと、鳴り止まない胸の鼓動がうるさい。
ここまできたら口にするしかないというのに、喉の奥が粘つくような感触は緊張からだろう。
「ああ、いつだって良いぞ」
「ゆっくりね、緊張するのは分かるからゆっくり」
「えっと、その…俺は……実は…」
微笑みを浮かべてなるべくエルピスが話しやすい様にしてくれる両親だが、時間が経てば経つほどに言葉はうまく出てこない。
これ以上時間を無駄にしてしまえば無かったことにしてしまうかも、そう考えたエルピスは奪い取る様にしてイロアスに渡した酒を手に取る。
「ああもう! 父さんそれ貸して!」
「ん? あ、ああ別に良いが」
「ああ! エルピスそんな飲み方したらダメよ、身体に悪いわ」
「分かってるけど今回だけは黙認して!」
酒樽程は無いにしろ、2リットルは優に超えるだけの量を一息で飲み干したエルピスは赤くなった顔のまま少しの間沈黙する。
酔いが回ってくるのを感じ取りながら、エルピスは下を向いたままぽつりと溢れる様に言葉を落とした。
「俺は神の称号を持っています」
エルピスが最も両親に対して引け目を感じていた隠し事、神である事を自白したエルピスはかたかたと全身を震わせながら少しずつ目線を上に向ける。
まるで親に叱られた子供の様に、怯えて顔を向けたエルピスの前では微妙な顔をした親の姿があった。
「な、なんだってー!」
「本当なのエルピス!?」
一瞬の真顔から、作った様な驚きの表情。
両親といた時間は確かにそれほど長くは無い、ずっと共にいるエラ達に比べれば表情だけで判別がつくかと言われると疑問が残る程度には。
だがさすがに血のつながっている息子として、違和感を感じざるおえない程の両親の対応に、エルピスは素直に言葉をかける。
「──ん? なんかわざとらしくない?」
「いやいや。な! クリム」
「ええそうよ。いたって普通よ」
よくよく観察してみれば母の額から小さく汗が、龍人は体温調節が苦手とは言え汗をかくほど暑く無い。
そしてエルピスは一番嫌なことに気がつく。
「これは…もしかして知ってたな? それで知ってて
「ち、違う。誤解だよエルピス! 知ってた事は隠してない、知ってないフリをしていただけだ」
「父さん、俺父さんと今度戦う時は権能を使わないでおこうと思っていたんだけれど、やめるよ。
父には全力で挑まないといけないもんね」
「やめろ、流石に死ぬ」
秘密だと思っていることが両親の前では全て秘密では無い、転生者であることも、あろうことか神であることも。
もしかしたらエルピスの
そう思ってしまうのも仕方のないことだろう。
「いつから気づいていたの?」
「いつからか、そうだな──エルピス、あれはお前が四歳の時だ」
父の話は十六年も前に遡る。
十六年前といえばちょうど父が遠征から帰ってきた時の事だ。
「俺は冒険者組合から出された例のごとく馬鹿げた難易度のクエストを終えて、家に向かって歩いていた」
冒険者組合から最高位冒険者へと出される依頼の難易度はもはや語るまでもないかもしれないが、その中でも英雄とされるイロアスが受ける依頼は格別のものである。
魔力も体力も尽き果て、転移魔法も使えずにゆっくりと街道を歩くイロアスの姿がエルピスの目にも浮かぶ様だ。
「山神──魔界と人界を隔てる山脈の神と久しぶりに会ってな。三日ほど酒を飲んでいたんだがその時に判明したんだ」
山脈といえばつい昨日までエルピス達がいた場所だ、もしかすればすれ違ってしまったかなどと思いつつ、エルピスはイロアスの話を聞き続ける。
「神の気配は色濃く残るらしい、お前の場合はその気配が特に濃いんだと。産まれた時からお前が神の称号を持っている事はどうやら神達にはバレていたようだが、俺の子供だからって見逃してくれてたらしい」
神の力を持っていた事で神にその存在がバレてしまっているのは、エルピスも転移者担当のロームやセラからのアドバイスで把握はできていた。
だが父と神が酒を飲み交わす中であることなど、エルピスが分かるはずもない。
父のおかげでどうやら無事に少年時代を過ごせていたらしいという事を知ったエルピスは、その父の交友関係の広さに驚く。
「父さんの権力凄くない!?」
「そうだろ〜父を敬え。可能ならアウローラちゃん達に俺らを紹介しろ」
「それはまた今度だけどさ」
嬉しそうに笑みを浮かべながら、さりげなく嫌な事を要求してくるあたりどうやら随分とまたアウローラ達との関係が気になっている様である。
だがいまはニルもレネスも向こうに置いてきたままなので、エルピスとしてはまだ紹介できる時期ではない。
そんなエルピスの雰囲気を察したのか、それ以上の追求はなく話は続いた。
「それで帰ってきてからはお前の力の監視とか、そこら辺の諸々はお前が知ってる通りだな。クリムは産まれた時からなんとなく気づいていたらしいが」
そう言って視線を送られたクリムはと言うと、苦い顔をしながらエルピスに語りかける。
「龍神の気配は特殊だもの、龍から生まれた私達龍人は言わば龍神のなりそこない。産まれた瞬間から私達とは違うし、半人半龍とも違うとは分かっていたわ」
「母さんにまでバレてたなんて…っ!」
父にバレているのはエルピスとしては百歩譲ってもまだ良い、アルヘオ家の裏方でありエルピスが関わるべきでない事をさらりとやってのける父の行動をエルピスが読めないのは仕方がない。
だがこう言ってしまってはなんであるが、普段からのほほんとして戦闘以外はからっきしな母に一枚上手をいかれていたことにエルピスは戦慄した。
「まぁでも詳しい称号の数までは知らない。話ぶりからして二つくらいはあるんだろ?」
「聞いて驚かないでよ? なんと六つ、龍神、魔神、邪神、鍛治神、盗神、そして妖精神の称号を持っているんだよ!」
どうだ! これなら驚くだろう!
机から乗り出しながらその思いを必死にぶつけるエルピスだったが、両親共々驚いた様子もない。
なんなら落ち着いているまであった。
「んー、なんか戦闘に偏ってるな」
「戦神と呼んでくれても良いんだよ?」
「神がころころ名前変えても良いのか? にしてもなるほどな……」
驚かないならせめて褒めてくれとばかりに調子に乗ったエルピスだったが、思っていた反応とはまた違った反応が返ってくる。
顎に手を添えいきなり真面目に考え始めるイロアスを前にして、エルピスはその行動の意味がわからず固まってしまう。
この流れからして何か悪い事なのでは──そう思ったエルピスは父に問いかける。
「えっと……なに?」
「いや、さすが俺の息子だなって。強い強いとは思ってたけど想定していたよりよっぽど強くて若干ビビってる」
蓋を開けてみればなんのことはない、相変わらずイロアスがエルピスの戦力について危ぶんでいただけであった。
だがいまのエルピスは確実に判別もついているし、暴走などしようはずもない。
そんなエルピスが力を持つことに何故苦手意識を感じているのか、そう思っていたエルピスの横で分かるわよとばかりに頷きながらも、クリムは言葉を続ける。
「気持ちは分かるけれど、あなたにしては随分と弱気ね?」
「クリムは技術面でどうこうできるだろうが、魔神の権能を持っているなら俺はどうにもならんだろうな」
「それで言ったら私は龍神相手よ? 勝算は私の方が低いわ」
そこまで両親の会話を聞いて、どうやらエルピスに負けるのが悔しいのだろうと言う結論に至った。
確かにイロアスの戦闘手段である魔法はエルピスに聞くはずもないし、クリムに至っては戦闘行動を起こすことすら不可能である。
なんとかして自分を倒そうと頭を捻らせる両親を前にして、エルピスは慌ててそれを止めにかかる。
「待ってよ、俺なんてまだ父さんにも母さんにも勝てないんだから気にしないでよ!」
エルピスにとって両親は目標であり憧れの対象、確かに勝てないと思われるほど強くなれたのは嬉しいことだが、それが実力によるものではなく世界のルールによるものであればエルピスは納得できない。
「お前ほんっっっとに俺らのこと大好きな。俺も大好きだぞ」
「私もよ〜」
「あははははっ──ってそう言う話じゃなくて!」
なぜ両親のことを好きかどうかと言う話になると言うのか。
……もちろん好きではあるが。
机を叩きながら抗議の言葉を口にしたエルピスに対して、イロアスは至って真面目な顔で言葉を返す。
「まぁマジな話負ける気はないが勝てる要素もないな。俺がいまから死ぬ気で頑張って魔神になっても魔法戦がなくなるだけだし」
「私は何しても攻撃が通らないから残念ね、私も目指していなかったらけれど龍神になってみましょうかしら」
まるで本気を出せば神になれるかの様な豪胆不遜な物言いに、さしものエルピスも驚きのあまり言葉が詰まる。
いままでの人生でエルピスの言動にはかなり自信過剰とも思える言葉が多くあっただろうが、だとすればしっかりとこの両親の血を引き継げていると言う証なのだろう。
「すごいこと言うね二人とも」
「親は子供の越えられない壁になるためなら自分の越えられない壁も越えられるんだよ」
親でないエルピスにはまだ分からない言葉だが、いつかはその言葉の意味もわかるのだろうか。
撫でられる手のひらの感覚を久々に感じながら、エルピスはふとそんな事を考えた。
そしてイロアスは思い至った様に話を変える。
「──まぁ楽しく喋っていたがそれは次の機会としてだ。悪いがエルピス、神の力について教えてくれたなら仕事もついでに手伝ってくれないか?」
「仕事?」
「ああ、国王直々の、正確に言うなら人類からの依頼だ」
人類からのとはまた規模の大きい。
いまさら人類を助けることに躊躇などないが、両親達の仕事を手伝うとなるとエルピスも相当に気合が入る。
「再び現れるであろう邪竜の討伐、俺が英雄になりクリムが龍の王女としてその名を馳せるようになった原因の討伐だ」
「邪龍……」
暗唱できるほどに各地で聞かされた両親の英雄譚、その元となった冒険に現れた冒険者組合史上最悪の敵とされている邪龍。
それが確かに龍であるのならば龍神であるエルピスの敵ではない、犠牲者を出さないと言う点からもエルピスに頼んだのは間違いではないだろう。
「まぁ復活もそろそろだからな、ちょうどよかった」
「倒せるの?」
「倒すんだよ。じゃないと死ぬ、沢山な」
魔界で被害が済めば御の字、かつては死の大陸すら築き上げたといわれる邪竜の復活は邪神復活を目論む者たちからしてみれば格好の的だろう。
エルピスとしても邪竜の復活も邪神の復活も、どちらにせよ両方対処しなければいけない問題だ。
それが両親から手伝ってと直接言われるのだからこれ以上嬉しいこともない。
「エルピスを戦場に行かせるのは嫌なんだけど……残念ながらあいつ相手に勝つのは私達じゃギリギリよ」
「まぁ詳しい話は夜だな。とりあえずいまからは俺達の知らないお前の冒険を聞かせてくれ」
いつになく自信のない両親の顔。
それはそれだけ話題に出ている邪龍が強いという証にはからならない。
一時の楽しい時間に身を置きながら、エルピスは心のどこかで少しだけ不安感を抱くのだった。
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