太夫は羽化の時を待つ

作者 悠井すみれ

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★★★ Excellent!!!

 完結してからのほぼ一気読みでしたがこれほどまでの完成度の作品がネットで読めるとは! という驚き。このまま書籍になって書店に並んでいても遜色がないというクオリティです。時間を作って読んで良かったと思った一作。

 若干の注意点としては、綺麗な蝶であっても虫に対して不快感や恐怖を感じる人にはお薦めできない点。描写がとにかく素晴らしく映像が目に浮かぶ程のため、美しい蝶であっても集団で出てきますし、それがもたらすものが美しくも恐ろしい……という事もあり。

 それさえクリアするならば、現代ドラマや怪異ホラー好き、ミステリー好きを満足させる内容かと思います。
 最後まで読んで、さり気無く出て来たものが、当然のようにあった出来事が、全て伏線であったことを知り、二度目を読みたくなる後の引き方。
 童歌や遊郭、田舎の閉そく感と都会の対比、トランスジェンダーにまつわる要素。これだけ詰め込まれているにも関わらず、絡み合いつつも混乱なく最後まで物語を紡ぎ出す要素になっていて。人間ドラマも濃厚です。

 後半の解決に向かう中、自分の推理が正しいかの答合わせがしたくて読む手が止まらなくなりました。

★★★ Excellent!!!

とあるアパートの一室で発見された干からびた死体から、物語は始まります。
ジャンルはホラーですが、心霊系のドッキリよりは主人公の刑事さんと大学講師のタッグで進む推理系の印象が強いです。グロい描写も(たぶん)控えめなので、普段ホラーを読まない方でも楽しめるかと思います。刑事物にほんのちょっと、現実ではあり得ない怪異が絡んでいる感じ。でもちゃんとホラーも感じられます!
(でも蝶なので虫系はちょろっとあります)

それに加えてトランジェスターや遊郭に関する史学、わらべ歌から紐解くミステリ要素なんかも絡んできて、序盤からもう目が離せません。まさに一気読みしてしまうほどにのめり込みました。

本作のキーワードである「蝶」が飛ぶ様は美しく艶やかでいて、背筋が凍るほどに怖い。
ミイラ化した死体。主人公の前に現れる美しい蝶の群れ。太夫さんとは一体何なのか。
張り巡らされた伏線が繋がったラストには、はっと息を呑むほど驚くことでしょう。

特にエピローグ! 読了後はきっとみなさん、放心するはず……。
私は最後の最後で「あぁぁぁぁぁ……っ」と叫ばずにはいられませんでした。何が起きたのかは、ぜひあなたの目で確かめて下さい。

★★★ Excellent!!!

 実在の生物や史実をアレンジした土着伝承や風習を基盤とする、ミステリー色の強いホラーですので、心霊系や残酷描写が苦手な方でも比較的入り込みやすいと思います。
 読みやすくて分かり易い語り口と、人間ドラマが軸になったストーリーはWebで読んでも追いやすく、人を選ばす楽しめる作品です。(ただし虫が苦手な方と、生物が群れる様子に恐怖症を持つ方は、ご注意ください)

 主人公は、ちょっと昔気質だけれど生真面目で情の深い刑事・不破さんです。東京の片隅で発見された、異常な死体。死後急速にミイラ化したとしか思えないその状況に、堅物な不破さんは首を傾げつつも操作に乗り出すことになります。しかし時期を同じくして、彼は、美しい蝶を幻視するようになり――。
 多様化する現代の価値観と、昔ながら田舎ながらの閉鎖的な価値観、その違いに、時代を超えても変わらぬ情念が絡み合い、一筋縄ではいかない人間ドラマが形成されています。その揺れ動く心模様へ巧みに入り込む、絢爛豪華な怪異と。登場人物の大多数に好感を持てるだけに、起きてしまった悲劇は胸に刺さります。

 読後はもうなんとも言えない、同時にすんなり腑に落ちてしまう、絶妙な切なさ悲しみが残ります。
 引き込まれる幻想ホラーの物語、ぜひご一読ください。

★★★ Excellent!!!

 ベテラン刑事の不破は、ある日、干からびてミイラのようになってしまった死体に出会う。ほんの一週間前まで生きていたとは思えぬその死体の主はボーイズバーで働く、女性として生きて来たトランスジェンダーだった。不可解なその死は、彼の客である蝶好きの男性の証言によって、ますます混迷を極めていく——。

 地方の農村や吉原が抱えていた事情、そして現代の人々が悩む様々な問題など、幾つもの要素が絡まり合い、一つの真相へと繋がっていきます。

 男性と女性、その間を揺れ動く人々、垣間見える妖しい蝶の存在。やがて、その全容が明らかになった時、目の前に広がる恐ろしくも美しい光景は、あまりにもはっきりと脳裏に浮かんで思わずぞっと背筋が震えてしまうほどです。
 そして、登場した探偵役の教授と共に、事件は何とか希望の残る解決に向かうかと見えたのに……。

 ラストのエピローグまで本当に気の抜けない怪異混じりのミステリであり、最後は何ともやりきれない想いの残る、素晴らしいホラーでした。

 ぜひ、一気読みして、さらにもう一周していくつもの伏線を味わっていただきたい一作です。

★★★ Excellent!!!

都会の一角で干からびたミイラが見つかる。
極短時間で起こり得るはずのないミイラ化の謎を追う刑事が、恐ろしい怪異に巻き込まれていく。

謎が解き明かされるを知りたくて、読む手が止まらなくなります。
太夫の伝承、不気味な童歌、美しい蝶の乱舞、幻想的かつ恐ろしい怪異譚です。
あなたもどうぞ、極彩色の悪夢をご覧になって下さい。

★★★ Excellent!!!

普段、ホラーはあまり読みませんが、ミステリー要素の強い作品で、謎に引き込まれるように最新話まで読んでしまいました。

一週間前は生きていたはずの人間がミイラで見つかったという最初の話も読者を引き込むエピソードですが、他にもわらべ歌や蝶による怪異、太夫憑き。引き込まれる要素がたくさんあります。

刑事の不破さん自身も怪異に巻き込まれていき、とても気になる展開です。